「週5日労働がふつう」は大間違いである…仕事でへとへとになってしまう人に決定的に欠けている視点
プレジデントオンライン / 2024年5月5日 15時15分
※本稿は、藤野智哉『「そのままの自分」を生きてみる 精神科医が教える心がラクになるコツ』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)の一部を再編集したものです。
■世の中の「べき」「しなきゃ」は真に受けない
世の中には「こうすべき」がいっぱいあります。
「職場では、協調性をもってやるべき」
「休まず仕事をちゃんとがんばるべき」
「子どもには怒らないで笑顔でいるべき」
どれも一見、本当っぽく見えますが、本当に「すべき」ことでしょうか。
人によっては、なくても困らないものだったり、「そんなことできない」と難しい、無理なものだったりするものです。
つまり、誰にとっても「すべき」ことではないのです。
いい人や真面目な人、がんばりやさんの人ほど、「べき」「しなきゃ」を大事にしている部分があるなって思います。
それはそれで悪いことではないですし、仕事や生活が回る部分もあるので大切なことだとも思いますが、そのせいで自分がしんどくなったり、自分のやりたいことが全然できなくなっているなら……もしかしたら、少し「べき」「しなきゃ」をやめてみてもいいのかもしれません。
「普通の人」「ちゃんとした人」なんていう実在しない生き物を目指すからしんどくなるんじゃないかなぁなんて思います。
■「自分の気持ち」に目を向けてみる
人はそれぞれ違います。好みもやりたいことも違います。
得意なことや苦手なことも違うし、一人ひとり、体力やキャパだって異なります。
それをみんな「べき」「しなきゃ」でまとめるほうがおかしくないでしょうか。
でも、社会にふわっと存在する、こうした「べき」「しなきゃ」を真に受けてしまうと、「自分が本当にしたいこと」「自分が幸せだと感じること」が見えなくなってしまうんですね。
だから、「べき」「しなきゃ」にまぎれて見えなくなってしまっている「自分の気持ち」に目を向けてみることが大切だったりします。
「自分の気持ち」って見えていますか?
「職場で協調性を大事にすべきなのはわかるけど、全部の人に合わせるのは正直難しいし、無理して合わせたくない」
「仕事や家事でイライラするより、子どもと楽しく過ごしたい」
「スキルアップして成長するより、まったり仕事していたい」
なんていう「自分の素直な気持ち」です。
それが見えづらくなっているなら、「べき」「しなきゃ」を一度、手放してみるのもいいかもしれません。
「べき」「しなきゃ」を手放したときに、ふっと「私はこうしたい」が見えてきたりします。
■「手を抜けるところはないか」という視点をもつ
「あれしなきゃ、これもしとかないと、って段取りばかりがそこそこうまくなって、結局、自分も家族も大切にできてない気がする」なんて悩みを聞いたことがあります。
真面目で、がんばりやさんってこういう人が多い気がします。
もちろんがんばってうまくいくのなら、それはそれでいいことです。
でも、がんばりすぎてしまって、自分がへとへとになってしまったり、心がすりきれてしまったり、「もうダメだ」みたいになっているとしたら――。
「手を抜く」のもありだと思います。
上手に手を抜くポイントは自分のキャパがオーバーする前に「手を抜けるところはないか」という視点をもつことです。
たとえば、仕事をたくさん抱えているときに、上司から急ぎの仕事をふられたとします。
「手を抜けるところはないかな」という視点がないと、
「今やっている仕事も終わってない! →上司の仕事も断れない! →仕事つらい →もう会社やめよう」
なんて思いつめてしまうかもしれません。
一方、「手を抜けるところはないかな」という視点があると、
「今やっている仕事も終わっていない! →上司の仕事も断れない →」
の段階で、「あ、そろそろつらくなるな。キャパオーバーの一歩手前かな。手を抜く場所を考えたほうがいいな」と思えたりするのです。
その結果、次のような解決策が頭に浮かんだりするんですよ。
「上司の急ぎの仕事は半分だけ引き受けられないか聞いてみよう」
無理していっぱいいっぱいになって、「もうダメだ」となってしまうより、全然いいと思いませんか?
■キャパや体力、できることを知っておく
そのためにも、普段から「自分はどのくらいの時間でどういう仕事ができるのか」、「どのくらい働いたら休憩が必要なのか」などキャパや体力、できることを知っておくといいでしょう。
人それぞれ、キャパも体力も能力も違います。
大切にしてることも違います。
だから、「自分のキャパを知っておくこと」「キャパがいっぱいになってきたら、手を抜く場所を探すこと」が大切なんですよ。
「『週に5日働けるのが普通』なんて誰が決めたの?」なんて思いませんか。
ちなみに、僕は、「7日間を『5日労働』『2日休み』に最初に分けた人が悪い。百歩譲って4対3だろ、割り算苦手か」なんて「常識」にツッコミを入れながら生活していたりします。
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精神科医
産業医。公認心理師。1991年愛知県生まれ。秋田大学医学部卒業。幼少期に罹患した川崎病が原因で、心臓に冠動脈瘤という障害が残り、現在も治療を続ける。学生時代から激しい運動を制限されるなどの葛藤と闘うなかで、医者の道を志す。精神鑑定などの司法精神医学分野にも興味を持ち、現在は精神神経科勤務のかたわら、医療刑務所の医師としても勤務。障害とともに生きることで学んできた考え方と、精神科医としての知見を発信しており、X(旧ツイッター)フォロワー9万人。「世界一受けたい授業」や「ノンストップサミットコーナー」などメディアへの出演も多数。著書に3.5万部突破の『「誰かのため」に生きすぎない』(ディスカヴァー)『自分を幸せにする「いい加減」の処方せん』(ワニブックス)、『精神科医が教える 生きるのがラクになる脱力レッスン』(三笠書房)などがある。
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(精神科医 藤野 智哉)
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