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人にマウントして顰蹙買うバカを尻目に…人にマウントさせてあげて自分有利に導く"言葉の撒き餌"7つの実例

プレジデントオンライン / 2024年5月10日 18時45分

※写真はイメージです - 写真=iStock.com/V2images

■マウンティング欲求から人は決して逃れられない

相手に対して自分が優位であることを誇示する言動を「マウンティング」と言います。

もともとは動物学用語で、群内で優位なサルが劣位のサルの尻上に乗り制圧することで、序列を確認する行為を指しました。これが転じて今日では、人々が会話やSNSで自分がいかに優れた知識や教養を備えているか、金銭的あるいは精神的に満ち足りた生活を送っているかを誇示する行為を指す言葉として広く使われるようになりました。

用語としては新語に属するものの、行為そのものは、人間が集団で暮らし社会を形成した、いにしえの時代から続いています。縄文時代は仕留めた獲物の大きさ、平安時代は蹴鞠や歌詠みの上手さ、戦国時代は打ち取った敵兵の首の数でマウントの取り合いがあったでしょう。マウンティングは人間の本能に刻まれた、コンパルシブ・ビヘイビア(強迫的行動)なのです。

現代社会には、どのようなマウンティングがあるのでしょうか。まずは事例をご覧ください。

【事例①】「ようやくニューヨーク出張から帰ってこれたのですが、時差ボケで死にそう。来週の国際会議の資料作成が間に合わない」(時差ボケで苦しんでいることを自虐的に見せつつ、グローバルに活躍している自身の姿を強調する時差ボケマウント)
【事例②】「自民党の勉強会に呼ばれてお話しさせていただく機会があったのですが、皆さん気さくでいい方ばかりでしたよ」(自分が与党からお呼びがかかるような特別な立場にあることを示唆する自民党呼び出しマウント)

人間社会はサルとは異なり、力の強さや体格の大きさでマウントが取れるほど単純ではありません。資産、経歴、職業、消費、人脈、教養、趣味嗜好。人々はあらゆることで自分の満ち足り具合をアピールし、マウントを競い合っているのです。

SNSの普及はこの傾向に拍車をかけました。フォロワーを集め、不特定多数に向けて自分の優位を呟き、映え写真を見せては「いいね!」を集める。反応が大きいほど自己肯定感が高まり、欲求が満たされる――。

一方で、競争に精神を擦り減らし、見栄を張ることに虚しさを感じ、生きる気力さえ失ってしまう「マウンティング疲れ」も社会問題になっています。否定派は言います。

「他人との比較なんて不毛だ。みんな違ってみんないい。比べるなら過去の自分と現在の自分を比較して、日々の小さな成長を前向きに生きる糧にすればいい」

この手のアドバイスは一見建設的で、もっともらしく聞こえます。しかし、過去と現在を比較するなどという高度な芸当を成せる人がどれほど存在するでしょう。それで満足できるなら、私たちはとうの昔にこの欲求から解放されているはずです。

人が社会に生きている以上、マウンティングの欲求から逃れることはできません。私たちは自身の価値基準より他者との比較を優先してしまう、しょうもない生き物なのです。であるならば、否定せず受け入れようではありませんか。自分の欲求を正確に理解して、意識的にコントロールすることが必要です。

例えば、本能の赴くままに繰り出すマウンティングは、相手から「自慢」や「嫌味」と捉えられ、コミュニティから顰蹙を買ってしまう恐れがあります。称賛や羨望の眼差しを受けたいがためのアピールが、逆に自身の評価を落としめてしまうという逆効果を招くことになるのです。

しかし、真の富裕層やビジネスエリートは自身の能力や地位を自然な形で相手に示す、ステルスマウンティングのスキルを有しています。自然な会話の中に成果や知見を織り混ぜて、相手が気づかないうちにガッチリとマウントポジションを取っているのです。

例えばこんな感じです。

【事例③】「年収1億稼いでも半分は税金で召し上げられるわけで、国のためにボランティアで働かされているようなものですよ」(高額納税を嘆いて気の毒がらせつつ、自身の年収の高さをさりげなく見せつける)
【事例④】「奥さんに言われて気づきましたが、前職マッキンゼー退社からはや1年。超絶激務の大変な世界でしたが、最後は拍手で送り出していただきました。育てていただいた上司や同僚に感謝です」(世界屈指の名門企業の出身であることをアピールしつつ、愛妻家であることも匂わせている点も優れたポイント)

事例③のように、主節で自虐や感謝の弁を述べつつ、従属節にマウント要素を忍ばせるのがオーソドックスなテクニック。不用意に敵をつくらず、自分のマウンティング欲求を満たせます。このスキルは事例を多く学ぶことによって、身につけることができます。

■マウントさせてあげるトークで、議論はスムーズに進む

さらにビジネスシーンでは「マウントさせてあげる技術」を駆使することで相手を取り込み、味方を増やし、交渉事や職場内のポジショニングを有利に運ぶことができます。例えば会議では次のようなフレーズを用いることで、相手を立てつつ自分の意見を通すことができます。

【事例⑤】「今、○○さんの仰ったことが的を射ていて、私が言いたいことは言われてしまったのですが、一つだけ補足させていただくと」
【事例⑥】「△△のプロジェクトを大成功に導いた○○さんの前で、私がこんな提案をするのは“釈迦に説法”で大変恐縮なのですが」

これらのフレーズに続く自分の意見は、反論になっていても構いません。日本人はストレートに異論を突き付けられると人格まで否定されたかのように感じて完全防御の姿勢を取り、以降一切の意見を聞かなくなってしまう人が少なくありません。

しかし、事例⑤・⑥のような前置きをすることで相手は巧妙にマウントポジションに導かれ、優位に立ったことで油断します。その隙を狙って下から関節を取るように自説をねじ込むのです。

この技術はデフォルトのポジションが上位にある相手(年上、上司、発注元など)に対しては、比較的スムーズにできるでしょう。立場上優位にある者が立てられ、持ち上げられる構図は双方に違和感がないからです。下位のサルがボスの前に出て伏せの姿勢を取るが如く、マウントさせてあげるトークを多く振るほど、以降の議論はスムーズかつ建設的に進められるはずです。

さらにデフォルトのポジションが下位にある相手(年下、部下、下請け)に使えば、効果は倍増です。本来は自分がマウントを取らせなければならない相手が、逆にスルスルと下に潜り込んで持ち上げてきた。この意外性と浮揚感が相手の心に突き刺さり、痺れさせるのです。

いずれの相手に対しても、マウントさせてあげる技術は先手必勝です。心理学者デニス・リーガンらが数々の心理実験で明らかにしたように、人は相手から好意や親切を受けると「お返しをしなければ」と感じる心理(返報性の法則)が働くからです。

マウントさせてあげるトークは相手を導き、自分有利の状況に誘い込むための撒き餌です。あたり障りのない10で誉めそやし、自分が狙った渾身の1をのますのです。いかに人間心理を理解し、相手のメンツが立つよう適切に設計し、さりげなく屈託なく繰り出せるかが、ビジネスパーソンとしての腕の見せどころです。

■調和と信頼をもたらす現代の新しい「教養」

ただし、注意しなければならないのは、Z世代をはじめとしたSNSに精通した若手と対峙する場合です。

企業の役職クラスにあるおじさん世代なら、どこを押してあげれば喜んでもらえるかアタリ(仕事の知識やスキル、乗り越えてきた修羅場、人脈の豊富さ、乗っている車、ゴルフの腕前など)をつけやすいのですが、多様性の価値観の中で育った彼らはどこにツボがあるのかがわかりにくいのです。下手に探りを入れれば「プライベートに踏み込まれた」とセクハラ/パワハラで訴えられそうですし、やりすぎると警戒されてしまいます。

SNSではマウンティングアピールが盛んな一方、最近ではフォロワーがお目当ての有名人に「いいね!」やツイートしてもらうために、マウントさせてあげるスキルを競う推し活も活発です。SNSネイティブの彼らはマウンティングスキルに精通しており、自分にそれが向けられている気配を敏感に察知する能力が磨かれているのです。上司の立場を保ちつつ部下の警戒を静かに解いて懐に入り込み、それとは気づかれずにマウントさせてあげるには、一枚上を行く「ステルスマウントさせてあげる技術」が求められます。

【事例⑦】「おまえが有休で休んだせいで、昨日のプレゼンで俺はテンパって大恥かいたぞ。ったく、責任とれよ」(部下が有休を取ったのを責める体で、自分の右腕として不可欠な存在であることを伝えてマウントを取らせる)
【事例⑧】「昨日提出してもらったレポートを読んだよ。これなぁ、君のレベルだったらわけないんだろうが、普通の人には高度すぎて理解が追いつかないから。書き直して」(部下の知識レベルの高さを持ち上げつつ、書き直しを命じている)

【図表】ステルスマウンティングvsマウントさせてあげる技術

以上のように、マウンティングはいにしえより続く人間の深い欲求に基づいた心理行動である一方、そのメカニズムを理解して使いこなせば人心掌握の武器にもなりうるのです。「他人にマウントさせてあげることばかりに腐心していたら、自分の欲求が満たされず自律神経に異変をきたしてしまうのではないか」というご懸念には及びません。

マウントさせてあげる技術の神髄は、利他の心に通じます。経営の神様・稲盛和夫翁が「宇宙の法則」で説いたように、いつも相手にマウントさせて調和を図ろうとする人は誰からも信頼され、マウントフルネスな人生を送ることができるのです。

今こそマウンティングを新たな「教養」と捉え、マウンティングリテラシーを身につけるときです。人間はマウンティング欲求から逃れることはできませんが、不毛なマウンティング競争から自由になることはできます。本項読者の皆様が仕事や人間関係の悩みから解放され、幸福で満ち足りた人生を叶えていただくことを願ってやみません。

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マウンティングポリス マウンティング研究者
「人間のあらゆる行動はマウンティング欲求によって支配されている」「マウンティングを制する者は人生を制する」を信条に、世の中に存在するさまざまなマウンティング事例を収集・分析し、情報発信に取り組むマウンティング研究の分野における世界的第一人者。「だれもが自分らしくマウントを取ることができる豊かな社会」の実現に向けて、我が国のマウンティングリテラシーの向上に努めることを人生のミッションとして掲げている。

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勝木 健太(かつき・けんた)
経営コンサルタント
1986年生まれ。幼少期7年間をシンガポールで過ごす。京都大学工学部電気電子工学科を卒業後、新卒で三菱UFJ銀行に入行。4年間の勤務後、PwCコンサルティング、有限責任監査法人トーマツを経て、フリーランスの経営コンサルタントとして独立。約1年間にわたり、大手消費財メーカー向けの新規事業/デジタルマーケティング関連のプロジェクトに参画した後、大手企業のデジタル変革に向けた事業戦略の策定・実行支援に取り組むべく、And Technologiesを創業。執筆協力として、『未来市場 2019-2028』(日経BP社)、『ブロックチェーン・レボリューション』(ダイヤモンド社)などがある。人生100年時代のキャリア形成を考えるメディア「FIND CAREERS」を運営。Twitterアカウントはこちら。

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(マウンティング研究者 マウンティングポリス、経営コンサルタント 勝木 健太 構成=渡辺一朗)

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