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あのブランド温泉地がまさかの消滅危機…20〜30代女性が半減「消滅リスクの街」に必ず起こる"前兆現象"

プレジデントオンライン / 2024年5月10日 10時15分

※写真はイメージです - 写真=iStock.com/shirosuna-m

■全国の自治体の約4割が消滅危機…必ず起こる前兆現象とは

全国の自治体のおよそ4割が消滅――。民間の有識者でつくる「人口戦略会議」は4月、こんな衝撃的な報告書を発表した。そうした「消滅自治体」に、必ず点在するのが寺や神社などの伝統宗教施設である。寺社は地域が消滅する前に無住化する。そのため、地方消滅の前兆現象として捉えることができる。筆者が2015年に「寺院消滅」を指摘したが、現在はどうなっているのか。

人口戦略会議の調査では2050年には20〜30代の若年女性が半減する自治体が744にも及び、その後も人口減少に歯止めがかからなければ将来的に「消滅」する可能性があるという。

実は10年前にも同様の調査が実施されていた。日本創成会議(座長・増田寛也元総務相)が2014年に実施したものだ。この時には「消滅可能性都市」896市区町村(全国の自治体の49.8%が消滅)のリストが発表され、社会に衝撃を与えた。10年ぶりとなる今回の調査では、やや改善がみられたものの、依然として人口減少にあえぐ地方都市の実情を示している。

特に東北地方が厳しい。東北に215ある自治体のうち、77%にあたる165が「消滅可能性自治体」に認定された。そして、東北に限らず、特に「構造的に深刻な自治体」としては、群馬県・草津町や千葉県・銚子町、神奈川県・箱根町、静岡県・熱海市など23の自治体が挙げられている。

消滅可能性都市には、決まって寺院や神社が存在する。多くの寺社は17世紀初頭以前(江戸時代初期)に開かれたものであり、その後もずっと地域社会に残り続けている。寺院は、檀家と先祖代々の墓所を抱えているので、簡単に寺を閉じたり、都市部に移転したりすることはできない。したがって、人口減少などの社会環境の変化を定点観測する際の、格好のバロメータといえる。

2014年の日本創成会議の調査後、國學院大学神道文化学部教授(当時)の石井研士氏は「都市が消滅するのに、寺や神社だけが生き残ることはあり得ない」と指摘し、「消滅可能性都市」に宗教法人がどれだけ含まれるかを試算した。すると、全17万6670法人のうち約35.6%にあたる6万2971法人が「消滅可能性」にあることが分かった。

この段階での、伝統仏教教団の2040年における「消滅割合」は次の通りであった。高野山真言宗45.5%、曹洞宗42.1%、天台宗35.8%、臨済宗妙心寺派34.7%、日蓮宗34.3%、浄土真宗本願寺派32%、真宗大谷派28.5%、浄土宗25.2%、黄檗宗22.6%――。

特に、東北に多くの寺院を抱える曹洞宗や、北陸に勢力をもつ浄土真宗系宗派、さらには山岳仏教である高野山真言宗などが、消滅割合が大きかった。ちなみに神社本庁所属の神社では、41%の消滅割合となっている。

■2040年にはわが国の寺院は現在の3分の1が“消滅”する

筆者はこのデータをもとに、独自の分析と実地調査を加え、2015年に『寺院消滅 失われる「地方」と「宗教」』(日経BP)を発表した。本書では2040年には、わが国の寺院は現在の3分の1程度が「消滅(不活動宗教法人)」、あるいは「消滅同然の状態(無住寺院)」になってしまうと指摘し、大きな反響を得た。

現在、全国には仏教寺院がおよそ7万7000ある。既に「消滅した寺院」は1万7000か寺程度あると考えられ、うち宗教活動を停止した「不活動寺院」は、2000カ寺以上(神社を含めれば3500施設ほど)に上るとみられる。

過疎地にある寺院は、別の寺の住職が兼務しながら、かろうじて存続させている状況の寺も多い。不活動寺院(法人管理者がおらず、不動産が放置された危険な状態)や、無住寺院(名義上の管理者はいるものの住職が常駐していない寺、いわゆる空き寺)の増加は、近年はじわじわと都市部にも及んできている。

寺院消滅は複雑な要素が絡みあい、一概に原因を特定することはできない。たとえば、以下のような背景が考えられる。

①歴史的に住職不在の状況が続いていたが、いよいよ廃寺寸前になっているケース
②人口減少、少子化、高齢化、核家族化といった、近年の社会構造の変化の影響を受けて檀家が急激に減少し、寺院消滅に向かいつつあるケース
③「30年に1度」といわれる伽藍の修繕のための資金が集まらないケース
④東日本大震災や能登半島地震などの大規模災害で倒壊し、再建できないケース
⑤主に都市部の寺院で、大規模納骨堂を建設するなどの過度な投資をしたにもかかわらず、販売不振に陥り、経営破綻してしまうケース
⑥住職が勝手に宗教法人格をブローカーに売ってしまうケース
⑦寺院の後継者が現れないケース

――などである。

能登半島地震で倒壊した寺院
撮影=鵜飼秀徳
能登半島地震で倒壊した寺院 - 撮影=鵜飼秀徳

寺院存続の問題は、どの仏教教団も切実な問題として捉えてはいる。しかし、その実態把握調査は、一部の大規模な教団のみに留まる。実際に、教団を挙げて過疎化対策、後継対策などに乗り出し、効果を挙げているところは皆無だ。このままでは、時間の経過とともに、右肩上がりで寺院が消滅していくことになる。

■空き寺、空き神社の増加で地域コミュニティーの機能が喪失

筆者が「寺院消滅」を予測してから、かれこれ9年が経過する。「地方消滅」の調査のように、少しでも改善が見られるのだろうか。実は、寺院消滅は、前回の予測以上に消滅が進んでいると考えられる。

鵜飼秀徳『寺院消滅』(日経BP)
鵜飼秀徳『寺院消滅』(日経BP)

例えば日本最大の宗派、曹洞宗は約1万4600カ寺を抱えるが、既に全体の約25%にあたる約3600カ寺が空き寺になっていると思われる。筆者の所属宗派である浄土宗は全国に約7000カ寺を抱えるものの、全体の21%程度(約1470カ寺)が空き寺である。

空き寺の数は今後、ますます増えていくことは必至だ。そう言える根拠のひとつに、仏教教団が実施する後継者調査がある。国内で2番目の規模、約1万500カ寺を擁する浄土真宗本願寺派は2021年の宗勢調査で「後継者が決まっている」と回答した割合が44%にとどまっている。浄土宗で後継者がいる割合は52%、日蓮宗では55%である。その他の宗派も同水準であると考えてよいだろう。

つまり、このまま後継者が見つからなければ、その寺は無住になることを意味する。すでに「空き寺予備軍」がひしめいている状態なのだ。

後継者不在の状況を、寺院消滅の将来予測に当てはめてみる。すると、2040年には全体の35%にあたる2万7000カ寺が無住(正住寺院が約5万カ寺)に、現在の住職の代替りが完了する2060(令和42)年ごろには、無住寺院が全体の45%にあたる約3万5000カ寺(正住寺院が約4万2000カ寺)まで増えてしまうと予測できる。

空き寺(や、空き神社)の増加は、祭りや葬送といった地域コミュニティーを結びつけてきた機能の喪失につながる。ますます、人口の流出が加速する悪循環に入ってしまう。地方創生には寺院の再生が不可欠だと筆者は考える。がしかし、その具体的な方法論は、見いだせずにいるのが正直なところだ。

崩壊した空き寺(山陰地方)
撮影=鵜飼秀徳
崩壊した空き寺(山陰地方) - 撮影=鵜飼秀徳

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鵜飼 秀徳(うかい・ひでのり)
浄土宗僧侶/ジャーナリスト
1974年生まれ。成城大学卒業。新聞記者、経済誌記者などを経て独立。「現代社会と宗教」をテーマに取材、発信を続ける。著書に『寺院消滅』(日経BP)、『仏教抹殺』(文春新書)近著に『仏教の大東亜戦争』(文春新書)、『お寺の日本地図 名刹古刹でめぐる47都道府県』(文春新書)。浄土宗正覚寺住職、大正大学招聘教授、佛教大学・東京農業大学非常勤講師、(一社)良いお寺研究会代表理事、(公財)全日本仏教会広報委員など。

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(浄土宗僧侶/ジャーナリスト 鵜飼 秀徳)

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