「バッテリー修理8800円~」のはずが請求額は10万円超…弱みに付け込む「悪徳ロードサービス」の卑劣な手口
プレジデントオンライン / 2024年8月13日 10時15分
■被害者170人以上の悪徳レッカー業者に有罪判決
近年、ロードサービスで高額請求された被害者が急増している。国民生活センターのまとめによると「インターネットで依頼したロードサービス」に関する同センターへの相談件数は2020年度までは年間100件以下だったのが21年度は2倍以上の231件、22年度は773件に爆増。2023年度はさらに増えて860件にまで増えている。
もちろん、これは相談件数なので実際のボッタくり被害はこの何倍にもなるだろう。
このような中、今年7月9日に静岡地裁は道路運送法違反や詐欺などの罪に問われていた「H&Yインテグレーション株式会社」(静岡県藤枝市)代表の男性に被告に対し懲役2年、執行猶予4年と罰金100万円を言い渡した。
同社の被害者は170人以上。売上はわずか1年半で4500万円。1人当たりの平均は約26万円というからいかに荒稼ぎしていたかがわかる。
■「帰らない」と言われ、高額を支払うはめに
この業者の具体的な高額請求の被害を紹介する。
事例2:バッテリーが上がって不動となったためネットで検索して同社に修理を依頼。サイトにはバッテリー修理の料金が「8800円から」と書かれていたが業者が現場に到着して提示された見積額は10万円以上。高額なので断ろうとしたが「お金を払わなければ帰らない」と業者に言われ仕方なく支払うことに。なお、バッテリー修理は行われなかった。
いずれも請求額を「高い」と考えて業者に掛け合ってはいたが、結局は業者の強い態度に負けてしまった。
損保や共済の無料ロードサービスやJAFを使っていればほぼ無料となる内容であり、こんな被害に遭うことはない。どのようなプロセスを経て、高額な費用を請求されて支払ってしまうのか?
■「緊急対応費」「祝日対応費」を追加請求
悪徳業者は、突然のトラブルで冷静な判断ができない人の弱みに付け込んで、とんでもない高額な費用を請求してくる。具体的には以下のような経緯となる。
①バッテリー上がりやパンクなどのトラブルで車が不動に
②ネットですぐ来てくれそうなロードサービス業者を検索
※契約している任意保険に含まれているロードサービスの存在を知らない、思い出せない、また乗っているのは父親の車で自分は保険に入ってないから使えないといった勘違いも多い(損保は車に掛かるものなので運転者が誰でも使える)。また、自身がJAF会員であることも忘れるほどパニックになる人もいる。
③リスティング広告の上位に出てきた「基本料金2980円」「最短10分で現場到着!」「キャンセル料無料!」「国家資格を持つ整備士が作業します」など、ほとんどがウソの言葉にあおられ悪徳業者とわからず電話してしまう。
④ロードサービス業者現場到着。ここから高額請求に至るまでにはいくつかのパターンがある。
・見積もりでかなり高額な作業費用を提示されたのでキャンセルを申し出ると、高額なキャンセル料を要求
・あいまいな費用説明で作業開始し、終わってから説明になかった「緊急対応費」「祝日対応費」「レッカー出動費」「追加作業員」など通常ありえない費用を請求する。
・実際に作業をしなくても見積もりや相談の費用として5~10万円を請求する。
・作業を断っても「請求額通り払わないと帰らない」など脅迫めいたことを強い口調で言われる。
■バッテリー上がりの正規料金は2~3万円
では、ロードサービスの適正料金は大体どれくらいが相場なのだろうか。JAFの「非会員」料金を相場として考えてよいだろう。
昼間か夜間か、一般道路か高速道路かでも料金が異なってくる。例えばバッテリー上がりの場合、昼間+一般道なら2万1700円だが、夜間だと2万5630円となる。また、故障車両の牽引は2万7700円(昼間&一般道)となるが、これに+牽引1kmにつき830円が必要となる。
会員なら無料となるこれらのトラブルの目安はおよそ2~3万円前後であり、悪徳業者はその5~10倍の料金を請求していることになる。
■若者や女性ドライバーが狙われやすい
このようなボッタくり被害に遭うのはどのような人たちなのか。前述の国民生活センターへの相談事例をまとめると、運転経験が浅かったり、車トラブルの知識に乏しかったりする20代の若者や女性ドライバーに被害者が多いことがわかっている。
・平均年齢は約 36 歳だが年代別では 20 歳代が最も多く、全体の約 36%を占める
・職業は給与生活者が全体の約 74%を占め、次いで学生が約 9%
・契約金額の平均は約 8 万 8000 円。価格帯別にみると「5万円未満」(約 38%)、「10 万円未満」(約 36%)、「50 万円未満」(約 25%)、「50 万円以上」(約1%)
悪徳業者に騙されないためにはどうすればいいか。
まず思い出すべきは、契約している自動車保険(任意保険)や自動車共済に無料で付帯されるロードサービスである。対人・対物のみの契約でもOK。損保各社に24時間対応のロードサービス専用デスクがあるので、そこに連絡することから始まる。なお、ロードサービスを使っても等級ダウンはなく、翌年からの保険料が上がることもない。
保険契約者以外でももちろん利用できる。任意保険(共済含む)の加入率は全国平均で約9割と非常に高く、自家用車のほとんどが加入している状況だ。バッテリー上がりやパンク、キー閉じ込みなどのトラブルに対して何十万円も支払う必要はなく、無料で対応してもらえることを今一度知っておいてほしい。
■損害保険のロードサービスは至れり尽くせり
しかし、トラブルに遭った車が家族所有の車だったり、友人の車だったりすると、とっさにどこの保険会社に連絡すればよいかわからない場合もあるだろう。そんな時は遠慮なく車のオーナーに保険会社を聞くべきだ。
また、遠隔地でトラブルに遭遇し、車を現地の整備工場に入庫した場合、飛行機や新幹線、レンタカーなどの利用代金や空港や駅までのタクシー代などの「帰宅費用」も無償となる。
その日に帰れない場合の宿泊費用やキャンセル費用なども人数分補償される。修理が終わった車を積載車に載せて、家まで届けてくれる費用も無料。自分で引き取りに行く場合も1人分の飛行機代や新幹線代などの交通費が出る。
ガス欠で不動となってしまった場合、はガソリン代10Lまで無料で届けてくれるのはもちろん、保険会社によってはガソリン代も無料で届けてくれるところもある。(JAFはガソリン代実費)
至れり尽くせりで驚くが、損保のロードサービス利用で重要なことがある。それは、レッカー車の手配など、最初にロードサービスを依頼するところから損保に頼むことが絶対となることだ。損保に連絡する前に自分でレッカー業者を呼んだ場合は諸々の無料サービスが有料となる場合も多いので要注意。また帰宅費用や宿泊費用などについても保険会社と事前にしっかり相談して決めることもお忘れなく。
※保険会社や契約内容によって無料となるロードサービスの範囲が異なる場合があります。
■JAF会員なら原因不明の不調の相談も無料
一方、JAFはどうだろうか? 損保の無料ロードサービスが普及しても、JAFの会員は毎年増え続けており2024年6月末現在の会員数は2050万人以上に上る。
JAF会員(年会費4000円)であれば、バッテリー上がりやキーの閉じ込み、脱輪の引き上げなど30分程度の作業なら無料だ。非会員でも利用可能で、もちろん不当な高額請求をされることは絶対にないし技術レベルも高い。作業する前には必ず費用の概算などを伝えてくれるので安心して依頼できる。
損保ではごく一部しか対応していない自然災害にも強い。ゲリラ豪雨や台風で水没した車や雪道でスタックした場合も対応する。なんとなく調子が悪い、異音や異臭がして気になるといった場合も、会員ならば相談や作業(30分以内)も無料だ。
■ネットで「信頼できる業者」を探す方法
またJAFは「人に掛かる」、損保は「車に掛かる」といわれる通り、JAF会員さえその場にいれば、会社の車や知人の車、レンタカー、バイク、原付、電動キックボードまで「ナンバーのついている乗り物」がロードサービスの対象となる。なお、かつては非会員でも現場で入会すればその場でJAF会員として利用できたが、現在はその制度は廃止されている。
損保やJAF以外のロードサービス業者を探す場合、100%絶対に安心できるのが「テュフ・ラインラントジャパン」(TRJ)による「テュフ認証」を受けている業者だ。テュフとはドイツに本社をおき150年以上の歴史がある国際的な認証機関でTRJはその日本法人である。7月1日現在、全国約100のロードサービス業者が認証を受けている。
参照:ロードサービス認証取得事業者リスト
Googleマップなどの口コミを参考にするのもアリだ。すべてが正確な情報であるとは限らないが、具体性のあるレビューはある程度参考になる。★1と★5が多いところはサクラレビューの可能性があるので慎重に。
最後に。現場で事前の説明なしに高額請求されたり、「払わないと帰らない」などと言われたりした場合は、その場で警察に電話することをお勧めする。既に支払ってしまった場合は一刻も早く国民生活センターや各地の消費生活センターへ相談を。クーリングオフが適用されて戻ってきたケースも少なくない。
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自動車生活ジャーナリスト
山口県下関市生まれ。大学時代は神奈川トヨタのディーラーで納車引き取りのバイトに明け暮れ、卒業後は日刊自動車新聞社に入社。95年よりフリー。2000年に自らの妊娠をきっかけに「妊婦のシートベルト着用を推進する会」を立ち上げ、この活動がきっかけで2008年11月「交通の方法に関する教則」(国家公安委員会告示)においてシートベルト教則が改訂された。育児雑誌や自動車メディア、TVのニュース番組などでチャイルドシートに関わる正しい情報を発信し続けている。「クルマで悲しい目にあった人の声を伝えたい」という思いから、盗難・詐欺・横領・交通事故など物騒なテーマの執筆が近年は急増中。現在の愛車は27万km走行、1998年登録のアルファ・ロメオ916スパイダー。
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(自動車生活ジャーナリスト 加藤 久美子)
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