1. トップ
  2. 新着ニュース
  3. ライフ
  4. ライフ総合

「疲れてるから土日は家でゆっくり」は逆効果…外資系企業の産業医は知っている"忙しくても元気な人"の休み方

プレジデントオンライン / 2024年9月1日 8時15分

※写真はイメージです - 写真=iStock.com/ookawaphoto

忙しくても元気な人はどんな週末を過ごしているのか。大手外資系企業を中心に年間1000件以上の相談を行っている産業医の武神健之さんは「休息を意識しすぎて週末の2日間とも予定を入れなかった結果、メンタル不調になる人をたくさん見てきた。平日は忙しくても、週末に数時間でも遊びに行ったり人と会ったりできている人は、翌週からまた元気に働けることが多い」という――。

■働きやすい職場に転職したのにメンタル不調に

こんにちは。産業医の武神です。私は10年以上の産業医面談経験で1万人以上の働く人たちと面談をしてきました。その経験から気づいたことは、人は週末の過ごし方を少し変えただけで、メンタル不調になる場合も、元気になる場合もあるいうことです。

今日は、週末の過ごし方でメンタルヘルスのあり方が変わった人たちについてお話したいと思います。

A君は私のクライエントの会社に転職してきた20代後半の静かな男性でした。半年ほど経って調子が良くないと自ら産業医面談にきた時には、睡眠障害、朝に強い憂鬱感、食欲低下、若干のセルフネグレクト傾向を認め、医療受診を勧め休職となりました。

当初私は、A君の不調の原因は、新しい職場への適応疲れかと思いました。しかし、聞いてみると、新しい職場は働きやすく、また、ストレスに感じるような人もいないとのことでした。プライベートでは数年間彼女がいないのは変わらず、ご家族関係においても特に心当たりになるようなストレス原因はありませんでした。人事がA君の上司に話を聞いても、部署全体としてさほど残業はなく、皆淡々と仕事を行う部署なのでストレス度もさほど高くないはずとのことです。仕事ぶりも特に目立って云々というものはなく、A君の不調を知り、上司も驚いていたとのことでした。

■原因は「引きこもり的な週末」だった

休職して1~2カ月間経ってもあまり元気になることがないA君でしたが、8月になり実家に戻ると、秋には別人のような元気な顔になり復職面談に来たのが印象的でした。

A君が教えてくれたところでは、前職は同年代の同僚が多く、週末になれば誰かの家でお鍋やバーベキュー、麻雀などをしてワイワイ過ごすことが常だったが、転職後、今の部署には同年代がおらず、上司や同僚たちは皆家庭がある人ばかりで、飲み会や週末の“集い”がなかった。毎週末どこにも行かず家で過ごしている間に、週末は規則正しい生活をしなくなり、次第に気分が落ちたままになってしまっていた。休職後もそれは変わらなかったが、実家に戻り高校の同級生たちと遊んでいると次第に規則正しい睡眠が取れるようになり、元気になってきた。日常生活の中に楽しみがなくなってしまったことと睡眠リズムが崩れていたことが、自分の不調の原因と分析しているとのことでした。

自分から人を誘って何かをする性格ではないと自己分析するA君は、復職後は引きこもり的な週末を過ごさぬよう、社内の趣味サークル2つに加入し、週末にもイベントを入れる仕組みを作りました。そして、現在元気に働いています。

■日曜日の昼間から仕事を考えて憂鬱に

クライエントBさんは、30代の真面目な女性でした。この方も産業医面談に初めて来た時にはすでに深刻な症状がいくつもあり、休職を勧める状態でした。

聞いてみると、職場に苦手な人はおらず、仕事は好きで頑張ってきた。今までは土曜日は休息日としてマッサージやネイルサロン、美容院とのんびり自宅周辺で過ごし、日曜日は遠出したり運動したりとアクティブに過ごしていた。

半年ほど前から仕事が忙しくなり、残業が増えて平日の帰宅時間が遅くなったため、3カ月前から日曜日の遊びをやめ、週末を2日間とも休息して翌週に備えるように過ごすようにしてきた。しかし、だんだん日曜日の夜から翌週の仕事のことを考え、気分が塞ぐようになってきた自分に気がついた。日曜日夜の憂鬱はお昼頃から感じるようになっていった。休息を取っているのにおかしいと思ったが、どうしようもなく、どんどん調子が悪くなってしまったとのことでした。

私の経験上、どんなに平日忙しく働いていても、週末に数時間でも遊びに行ったり人と会ったりできている人は、それが気分転換となり、気持ち新たに翌週からまた元気に働くことができることが多いです。

一方、週末の2日間とも休息することを意識しすぎて何も予定を入れないと、身体は休まったとしても気分転換は難しく、金曜日と同じ気持ちで翌週を迎えることになります。この生活が2~3カ月続いてメンタルヘルス不調になる人をたくさん見てきました。

疲れてソファで寝ている女性
写真=iStock.com/tdub303
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/tdub303

■仕事にストレスを感じていなくてもオフの時間は必要

仕事や職場をストレスと感じるかどうかは、人それぞれだと思います。

ストレスと感じる人には、週末に積極的にオフの時間、気分転換が必要なのは、誰でもご理解いただけると思います。しかし、仕事や職場にストレスを感じていない人にとっても、オフの時間は必要です。仕事はプライベートな時間と比べれば、多少の緊張がある時間です。緊張したとき、自律神経は交感神経が亢進し、筋肉は緊張、身体は多少なりともこわばります。この緊張を上手に和らげてあげないと、私たちの身体は疲労が溜まり電池切れとなり、蓄積した疲労も相まって精神的にも活発でいられなくなってしまいます。そのような状態では、仕事や職場にストレスを感じていなくても、月曜日を新たにやる気に満ちて迎えられるはずはありません。

A君は、前職時代にはあった週末の友人や同僚たちとの社外での関わり合いが、緊張を和らげ疲労から回復する時間になっていたのでしょう。そのことに気がつき、また、自分の性格をよく理解し、会社の趣味サークルに加入したことは、さすがと思います。今後は、元気にやっていけるものと思います。

■日曜日の“遊び”を制限したのが仇となった

Bさんは、仕事に備えるため、良かれと思って日曜日の“遊び”を自主的に制限し、疲労の回復に努める週末にしたことが、仇となってしまったと感じます。身体の疲労はこれで解決しても、週末の遊びがなくなったため、金曜日の気分を月曜日に引きずるようになり、仕事という緊張感から解放される時間がなくなってしまったことが、不調の原因と思われました。

月曜日からの仕事を考え、日曜日の夜に憂鬱な気持ちになってしまうのは、日曜日の日中に遊んでいた頃はなかったようですから、やはり週末の過ごし方として、休息だけに専念することが逆効果だったのかと推測します。復職する際には、元々の週末のスタイルに戻ってくれるか、新たな週末の過ごし方を見つけてほしいと思います。

では、週末ごとに日頃の緊張感を解いてくれるような予定がないと、人は元気に働き続けられないのでしょうか。そうとは限りません。週末は子供の習い事がいくつもあり、その送迎で終わってしまう、趣味や遠出の時間なんてない、と言いながらも元気に働き続けている社員も私はたくさん知っています。

ピアノを弾く子供
写真=iStock.com/ozgurcankaya
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/ozgurcankaya

■「人と交わること」「よく眠ること」が不可欠

以前、健診結果の相談で産業医面談にきたCさんは、平日は遅くまで働き、週末は2人の子供の習い事の送迎に追われる日常を送っていました。どうやって仕事を忘れる時間を作っているのかと聞いてみると、送迎の合間に本を読んだり、他の保護者たちと話をするのは楽しく、その間は仕事のことは全く思いださないと教えてくれました。また、習い事も必ずしも毎週あるわけではないので、そんな時は家族で遊びにいくため、この生活の中でも気分転換ができていないとは感じないとおっしゃっていました。

日曜日の夜は翌週を思い憂鬱になることはないの? と聞いてみると、そうならないように、日曜日の夕食は家族全員で楽しく食べ、少しお酒も飲むのでぐっすり眠れる。こうやって月曜日を考えることがないように過ごしていると教えてくれました。

近年の研究では、気の合う人と共に過ごすことや安定した睡眠・覚醒サイクルを維持することで、人の気分が改善することが実証されています。つまり、気分の改善と不安軽減には、人と交わることとよく眠ることが不可欠なのです。

■予定があると「ある程度規則正しい生活」ができる

意識的か無意識かは関係なく、週末に気分転換となる予定を入れている人たちは、週末の間もある程度の規則正しい生活、安定した睡眠・覚醒サイクルを維持できることも多いと思います。その結果、予定していた気分転換の効果だけでなく、安定した睡眠覚醒サイクルの効果も加わって気分の改善につながり、翌週も元気に過ごせているのだと思われます。

平日がどんなにタフで忙しかったとしても、週末に自由に過ごせる時間が少ないとしても、自分に与えられた週末の時間の中で、上手に気分転換となる時間を過ごせている人は、元気に働き続けられることも、そう考えると自然に思えます。

産業医の実感としては、必ずしも毎週末、何か予定を入れて楽しまなければいけないとは思いません。しかし、全く何も予定のない週末を2~3カ月間過ごしていると、メンタルヘルスに影響が出てきてしまうように感じます。ぜひ2週間に1回くらいは楽しい週末を過ごしていただけると安心に感じます。

夏休みも終わりました。

秋は連休が多くなります。ぜひ、連休の予定を立てて、仕事をするようにお願いします。

----------

武神 健之(たけがみ・けんじ)
医師
医学博士、日本医師会認定産業医。一般社団法人日本ストレスチェック協会代表理事。ドイツ銀行グループ、バンク・オブ・アメリカ、BNPパリバ、ムーディーズ、ソシエテジェネラル、フォルクスワーゲングループ、BMWグループ、エリクソンジャパン、テンプル大学日本校、アドビージャパン、テスラ、S&Pといった大手外資系企業を中心に、年間1000件以上の健康相談やストレス・メンタルヘルス相談を実施。働く人の「こころとからだ」の健康管理を手伝う。2014年6月には、一般社団法人日本ストレスチェック協会を設立し、「不安とストレスに上手に対処するための技術」、「落ち込まないための手法」などを説いている。著書に、『職場のストレスが消える コミュニケーションの教科書』や『不安やストレスに悩まされない人が身につけている7つの習慣』『外資系エリート1万人をみてきた産業医が教える メンタルが強い人の習慣』などがある。公式サイト

----------

(医師 武神 健之)

この記事に関連するニュース

トピックスRSS

ランキング

記事ミッション中・・・

10秒滞在

記事にリアクションする

記事ミッション中・・・

10秒滞在

記事にリアクションする

デイリー: 参加する
ウィークリー: 参加する
マンスリー: 参加する
10秒滞在

記事にリアクションする

次の記事を探す

エラーが発生しました

ページを再読み込みして
ください