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学習塾、習い事に通わせるよりも効果的…「頭のいい子」が育つ家庭に共通する"幼児期のある習慣"

プレジデントオンライン / 2024年8月31日 8時15分

※写真はイメージです - 写真=iStock.com/champpixs

「頭のいい子」に育てるにはどうすればいいのか。小児科医の成田奈緒子さんは「子供の学習力を伸ばすには家庭での学習が最適だ。子どもに習い事をさせる場合は、親も一緒に参加して楽しめるものがいい」という――。(第3回)

※本稿は、成田奈緒子『子どもの隠れた力を引き出す最高の受験戦略 中学受験から医学部まで突破した科学的な脳育法』(朝日新書)の一部を再編集したものです。

■過度な習い事は子どもの成長を妨げる

少子化や共働き家庭の増加により、子ども一人当たりの教育費は増加傾向にあります。

ひとりっ子ともなれば、そこに向けられる情熱は「絶対に失敗できない」という強迫観念と表裏一体になり、お金や時間が惜しみなく注がれます。わが子により良い教育を受けさせようと、幼少期から週5日、毎日違う習い事に通わせる親も珍しくありません。中には1日2件の習い事をはしごするなど、忙しい毎日を送っている子どももいます。

しかし、子どもの脳の発達を考えるのであれば、家庭生活そのものが脳を最も刺激し、子どもの得意なことを伸ばすのに最適な場所だと言えます。幼少期から発達する「からだの脳」に加え、小学生以降は「おりこうさんの脳」が本格的に、そして「こころの脳」も育ち始めます。

家庭では、毎日のルーティンの中で、同じメンバー間で決まった言動が繰り返し行われますが、これが子どもの「おりこうさんの脳」や「こころの脳」を育てる重要な刺激となります。親の言葉や表情、物事の捉え方や子どもとの接し方などが、学習塾や習い事よりもずっと大きい部分で子どもの脳育てに影響を与えるのです。

■「学力」だけではなく「学習力」も身につけるべき

私は勉強とは本来、楽しいものだと思っています。教科書に書かれた知識を丸暗記するのではなく、自分で論理や思考をめぐらせながら、興味がわいたことを一つずつ学んでいく過程に喜びを感じます。自分の中に一つひとつの点として置かれていた知識が、ある時つながり、線となって広がった瞬間の世界がひらける感動は、何物にも代えがたいものです。

ですから、個人的には試験対策に見られるような詰め込み式の学習は好きではありませんが、だからといって脳科学的に意味がないわけではありません。脳のシナプスをつくるためには、繰り返しの刺激が重要ですから、知識を記憶するという点では効果があります。

しかし、それで勉強の喜びに触れることができるのか、子どもが自ら学ぼうとする意欲を育てることができるのかは甚だ疑問です。詰め込み式の学習では、「学力」は身につきます。学力は、「おりこうさんの脳」を活性化させ、新たな知識や情報を得ることで育っていきます。

例えば、漢字ドリルを使って一生懸命、漢字を書いて覚えれば「おりこうさんの脳」が働き、知識は身につきます。しかし、たくさんの漢字や四字熟語を覚えても、それを自身の文章の中に織り込むことができなければ、論理や思考は育ちません。その人ならではの論理や思考は独創性と呼ばれ、「こころの脳」の働きによって育まれます。

鉛筆で漢字を練習する子供
写真=iStock.com/Hakase_
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/Hakase_

人は独創性を発揮できた時に喜びを感じ、「もっと勉強して新しい知識を身につけたい」と自然に思えるようになります。この脳の働きを、私は「学力」と区別して「学習力」と呼んでいます。

■学習力を伸ばすには家庭での学習が最適

残念ながら今の教育制度は、子どもの「学力」を伸ばしてもらうことはできても、「学習力」を育ててもらうことはあまり期待できません。そこで必要なのが、家庭での学習です。生活こそが子どもの「学習力」を伸ばす場だと考えます。

では、学校で習った「学力」を「学習力」に昇華させるには、どのような方法があるでしょうか。例えば、学校で習った漢字を何回もノートに書き写す代わりに、一つの漢字をピックアップし、その字にまつわる世界を広げていきます。では問題です。あなたは「本」という漢字で、どれだけ世界を広げられるでしょうか?

次のような質問を、子どもに投げかけてみるのも一つの方法です。

「本という漢字は、木という漢字と似ているね。なんでだろう?」
「木の葉っぱみたいにページがいっぱいあるから? 昔の人は木に文字を書いていたのかな?」
「なるほど、面白い視点だね。少なくとも石には文字を書いていたという証拠が残っているよ。ロゼッタ・ストーンといって、大英博物館に展示されているよ」
「へえ、本物を見てみたいな。その博物館はどこにあるの?」
「イギリスのロンドンという街にあるよ。一緒に地図で調べてみようか」

■「親が一緒に楽しめるもの」を基準にするといい

他にも「“本”がつく言葉を思いつくだけ挙げてみよう」「“1本”“2本”と数えるものには何がある?」など、いくらでも考えられます。親も引き出しを増やす必要がありますが、親が通り一遍の学習や正解にとらわれるのをやめれば、子どもの世界はどんどん広がっていきます。

学習塾や習い事を全面的に否定するつもりはありません。週にいくつか、本人が楽しむことができ、無理のないスケジュールで取り組む分には問題ないと思っています。私自身、娘を学習塾や予備校に通わせていたことはありますし、幼少期にはピアノも習わせていました。

ピアノを習う子供
写真=iStock.com/Nattakorn Maneerat
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/Nattakorn Maneerat

習い事については、数ある選択肢の中から取捨選択するのが難しいと感じる方も多いでしょう。特に子どもが幼いうちは、まだ趣味趣向がはっきりとしないため、何にでも興味をもっては、すぐに飽きてしまいます。時間とお金に余裕のある家庭であれば、片っ端からやらせてみても良いかもしれませんが、そうでない場合は「親が一緒に楽しめるもの」を基準に選ぶことをお勧めします。

実際、私が娘にピアノを習わせたのも、一番の動機は私が一緒に楽しみたいからでした。幼少期は一緒に親子ピアノ教室に通い、小学校に入学してからも、発表会では私とジブリの曲を連弾するなど、相変わらず親子で楽しんでいました。

■親の姿を見ることで自然とやる気が出てくる

このように、子どもの意思がまだはっきりとしない幼少期は、習い事に限らず、親が主体となって楽しめるものに子どもを巻き込むのがお勧めです。私の場合はピアノでしたが、英語が好きな親御さんであれば子どもと英会話教室に通うのもいいでしょうし、水泳が好きなら親子でスイミングスクールに通うのもいいと思います。

その際、子どもだけ通わせるのではなく、必ず親子で楽しむことが前提です。スイミングスクールでよくあるのが、子どもが泳ぐ姿を、親が観覧席からガラス越しにただじっと見つめているという光景です。しかし、特に子どもが幼いうちは、一緒に習い事に取り組む中で、親自身が率先して楽しむ姿勢を見せることが大事です。親が楽しむ姿から、子どもは「自分ももっと上手くなりたい」「一緒に楽しみたい」と自然といい影響を受けます。

あるお父さんは釣りが趣味で、息子さんが幼少期の頃から休みのたびに一緒に海に出かけていました。息子さんは釣りを通して、魚をはじめとする海の生物全般に興味をもつようになりました。大学では水産学部に進学し、下宿先には13個もの水槽を置いて、ありとあらゆる海の生き物を飼育しています。幼少期にお父さんと釣りを楽しんだ経験が、彼の進路に大きな影響を及ぼしたことは明らかです。

■親が熱中しすぎるのはNG

気をつけなければならないのは、親が熱中しすぎないことです。

特に子育て科学アクシスに相談に来られる親子で多いのが、地域のサッカーチームや野球チームなどでお父さんがコーチをしている場合です。わが子の指導に熱が入るあまり、自分の子どもに人一倍厳しく接し、チームメイトの前で「おまえのせいでチームが負けた」などと叱責してしまう人もいます。たとえ期待の裏返しであっても、全員の前でいつも自分ばかり叱られていたら、子どもの心は折れてしまいます。

その結果、自己肯定感が著しく低下し、何をするにも「どうせ自分はダメだ」と無気力になってしまったお子さんをたくさん見てきました。ですから、趣味にしろ習い事にしろ、親自身が肩の力を抜いて楽しむことを意識しましょう。その上で、親子で楽しい時間を共有できるものをぜひ見つけてください。

「子どもが、自分から『やりたい』と始めた習い事を、飽きたからといってすぐに辞めさせてもいいですか?」

これは、親御さんからのよくある相談の一つです。子どもが習い事に行きたがらない、練習をサボってばかりいる、という状態になったなら、スパッと辞めさせることが肝心です。親御さんの中には、「自分から好きで始めたんだから、責任をもってちゃんと続けなさい」とできるだけ継続させようとする人もいます。ですが、本人にやる気がないものを強制的に続けさせても、あまり意味がありません。

そうなる前に、本当にやらせるべきかどうか、習い事を始める段階でよく吟味することが大切です。幼い子どもは好奇心旺盛ですから、大抵のことに興味をもち、すぐに「やりたい」と言い出します。しかし、それを鵜呑みにしてはいけません。

■過度な期待を背負わせるより、子どもと一緒に遊ぶべき

まずは体験教室などで子どもの様子をしっかりと観察し、「この子に向いてそうだな」「本当に楽しんでいるな」と思えるものであれば、やらせてみてもいいと思います。その場合も、幼児なら夜8時まで、小学生なら夜9時までには就寝できるスケジュールを組みましょう。

成田奈緒子『子どもの隠れた力を引き出す最高の受験戦略 中学受験から医学部まで突破した科学的な脳育法』(朝日新書)
成田奈緒子『子どもの隠れた力を引き出す最高の受験戦略 中学受験から医学部まで突破した科学的な脳育法』(朝日新書)

ただし、時間は有限ですから、習い事をやればやるほど、子どもが家庭で過ごす時間は短くなります。それを差し引いてでも「習い事で学ぶことの方が、この子の人生に役立つ」と思えるのであれば通わせてもいいと思いますが、そうした習い事は実はそんなに多くないと実感しています。ましてや親御さんが、「もうちょっと頑張らせれば、いつか習い事にかけたお金が何倍にもなって返ってくるのではないか」と賭け事のように思っているのであれば、絶対に辞めさせるべきです。

ほとんどの場合、子どもは親の期待通りには育ちませんし、親のエゴにより過度な期待を子どもに背負わせるべきではありません。それよりも親子で一緒に出かけたり、遊んだりする中でさまざまな体験をさせる方が、子どもにとってずっと充実した時間になるはずです。

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成田 奈緒子(なりた・なおこ)
文教大学教育学部教授、子育て支援事業「子育て科学アクシス」代表
小児科医・医学博士・公認心理士。1987年神戸大学卒業後、米国ワシントン大学医学部や筑波大学基礎医学系で分子生物学・発生学・解剖学・脳科学の研究を行う。臨床医、研究者としての活動も続けながら、医療、心理、教育、福祉を融合した新しい子育て理論を展開している。著書に『「発達障害」と間違われる子どもたち』(青春出版社)、『高学歴親という病』(講談社)、『山中教授、同級生の小児脳科学者と子育てを語る』(共著、講談社)、『子どもの脳を発達させるペアレンティング・トレーニング』(共著、合同出版)、『子どもの隠れた力を引き出す最高の受験戦略 中学受験から医学部まで突破した科学的な脳育法』(朝日新書)など多数。

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(文教大学教育学部教授、子育て支援事業「子育て科学アクシス」代表 成田 奈緒子)

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