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関係者は「自民に対抗できる」と胸を張るが…「13年前の首相」に代表選出馬を頼む立憲民主党の絶望的な人材不足

プレジデントオンライン / 2024年8月26日 17時15分

立憲民主党 本部(東京都千代田区) - 写真=時事通信フォト

9月に行われる立憲民主党の代表選挙をめぐり、枝野幸男前代表が8月21日に立候補を正式に表明した。フリージャーナリストの宮原健太さんは「自民党総裁選では若手中堅が候補者を擁立して『刷新感』を打ち出しているのに対して、立憲代表選はベテラン勢が中心となり、若手中堅の動きは鈍くなっている」という――。

■自民と立憲民主の「対照的な動き」

9月に実施される自民党総裁選と立憲民主党代表選に向けて政界はどんどん慌ただしくなっている。

だが、両者を比べると、自民党総裁選では若手中堅が候補者を擁立するなど動きが活発であるのに対して、立憲代表選はベテラン勢の動向が中心となり、若手中堅の動きは鈍くなっている。

8月19日の自民と立憲の両党の「永田町の動き」は非常に対照的となった。

自民では当選4回の小林鷹之前経済安保大臣が総裁選への出馬を表明。

「私が派閥に関係なく、いまこの場にこうして立っている事実こそが、自民党が本気で変わろうとする象徴になる」と述べ、裏金問題で「政治とカネ」の舞台となった派閥からの支援は一切求めないとしたうえで、積極財政や先進国とグローバルサウスを橋渡しする外交、経済安全保障の強化や憲法改正による自衛隊明記などを訴えた。

対して立憲では、若手中堅グループである「直諫(ちょっかん)の会」を率いる重徳和彦衆院議員が野田佳彦元首相に対して立候補を要請。野田氏は「熟慮する」と述べるにとどめたが、ベテランが若手中堅の思いを受け止める形となった。

若手中堅グループから立候補を要請された野田佳彦元首相
若手中堅グループから立候補を要請された野田佳彦元首相(写真=Noukei314/CC-BY-SA-4.0/Wikimedia Commons)

若手中堅の中から候補者を擁立した自民と、若手中堅がベテランに思いを託した立憲。

なぜこのような違いが両者に生まれてしまったのか。

その原因は立憲代表選の「仕組み」そのものがある。

■代表戦に出馬するための「高いハードル」

立憲代表選は国会議員ならば誰でも出馬できるわけではない。

党の代表選規則には、候補者は「国会議員の20人以上25人以下の推薦状を添えて、代表選管に届け出ることを要する」と定められており、出馬するには国会議員の推薦人を20~25人集めなければならない。

同様の規定は自民党総裁選にもあり、総裁公選規程には「党所属国会議員20人により、総裁の候補者として推薦される者とする」と書かれている。

これらの仕組みは候補者の乱立を防ぐために決められているわけだが、この推薦人集めは出馬に意欲を示す議員にとって大きなハードルとなる。

20人の仲間を党所属の国会議員から集めるだけなら簡単だと思うかもしれないが、この推薦人は公表されるため、誰が誰を応援したかが一目瞭然となる。

さまざまな権力闘争が渦巻く政界では、過去に別の総裁候補の推薦人になっていたということで、党トップから人事面で冷遇されてしまうことも少なくない。

そのため、推薦人になるということは、その候補者と一心同体となり、負けた時のリスクを引き受けるということにもなるのだ。

■立憲の若手中堅も動いてはいるが…

その推薦人集めだが、自民よりも立憲のほうが「ハードルが高い」と言える。

なぜなら、自民の国会議員は衆参合わせて369人もいるのに対して、立憲はたったの136人しかいないからだ。

立憲関係者は「20~25人の推薦人を集めるという規則は、民主党、民進党の時代からそのまま引き継いだものだ。しかし、民主党勢力の分裂や日本維新の会の躍進などで党の規模が縮小しているいま、本当ならば推薦人の数も減らしたほうが良かったのだが、そのままの状態で代表選の時期になってしまった」と明かす。

しかも、今回は現職の泉健太代表に対して枝野幸男前代表が返り咲きを期して出馬するなど、勢力争いが激しくなっている状態だ。

その中で、立憲の若手中堅が推薦人を20人集めるのは、困難となってしまったのである。

立憲も若手中堅の動きがまったくなかったわけではない。

冒頭に登場した若手中堅グループ「直諫の会」は8月2日に記者会見をし、少子化対策や脱炭素などに取り組む企業を国として支援して成長産業とする「インパクト立国」なる国家ビジョンを発表。

会長である重徳氏は泉代表について「若さという強みを発揮できているかというと、物足りないところがある」という認識を示した一方、ビジョンと代表選の関係については「どのように扱うかは仲間と共に検討したい」と述べるにとどめ、会としてビジョンを掲げる候補者を擁立するか否かは明言しなかった。

■政局の中心にいる最重鎮・小沢一郎氏の思惑

そもそも直諫の会はメンバーが18人しかおらず、会だけで推薦人を確保することはできない。

また、自民の派閥とは違って、他のグループとの掛け持ちを容認しているため、中には「国のかたち研究会」(菅直人グループ)や「新政権研究会」(泉グループ)などに所属している議員もおり、18人全員が一致した行動をとれるわけでもない。

結局、直諫の会からの出馬の道筋が立たない中、最重鎮の小沢一郎氏や野田氏が第三の候補者擁立を模索する政局の中心となっていき、最終的には野田氏擁立の流れができていったわけである。

政局の中心にいる最重鎮・小沢一郎氏
政局の中心にいる最重鎮・小沢一郎氏(写真=kyouichi sato/CC-BY-3.0/Wikimedia Commons)

なお、野田氏擁立論が大きくなっていった背景には維新との連携に期待する動きがある。

立憲内でも保守的で知られる野田氏は、裏で馬場伸幸氏と会食をするなど維新との関係は良好で、8月23日には維新が開催した政治改革に関する特別勉強会にも招かれた。

小沢氏は共産党との選挙協力に積極的な立場をとるが、そのうえで野田氏の支援に動いているのは、選挙協力の関係を維新にまで広げようという思惑があるのだ。

もちろん、共産から維新まで幅広く野党共闘をするというのはあまり現実的ではないが、野田氏を代表とすることで維新との関係を改善し、次期衆院選に向けて少しでも各選挙区で自民と1対1の構図を作れるようにしていこうというわけだ。

■「石丸現象」の教訓をまったく活かせていない

ただ、そうした立憲の路線について論戦を交わす前に、代表選をめぐって泉代表のほかに前代表の枝野氏や元首相の野田氏の顔が並ぶというのは、あまりにも刷新感がなく、守旧的な印象を受けてしまう。

立憲関係者は「首相が退陣してさまざまな勢力が右往左往する自民に対して、立憲は重鎮による安定感を演出する」と語るが、多くの国民はそう肯定的には受け止めないだろう。

都知事選の結果について分析した拙稿「『石丸伸二氏のズラし戦略』にまんまと引っかかった…『蓮舫氏の惨敗』で露呈した立憲民主党の限界」でも記したが、裏金問題などをめぐる政治への不信感は、自民だけでなく、民主党政権からの流れを汲む立憲にも注がれている。

都知事選で躍進した石丸伸二氏
都知事選で躍進した石丸伸二氏(写真=Noukei314/CC-BY-SA-4.0/Wikimedia Commons)

それゆえに、都知事選では小池百合子氏と蓮舫氏という昔からいる政治家による「国政与野党の代理戦争」という、旧来型の構図に辟易とした有権者が新興勢力である石丸伸二氏に一気に流れ、石丸氏は2位になるまで躍進したのだ。

そのことを前提とすると、若手中堅が名乗りを上げる自民と、昔も代表を務めていたようなベテランが並ぶ立憲、どちらが魅力的に見えるかは明白だろう。

■最新の世論調査では、自民↑立憲↓

実際に日経新聞とテレビ東京が8月21、22日に実施した緊急世論調査では、自民の政党支持率が4ポイント増の36%となったのに対して、立憲は2ポイント減の8%となってしまった。

だが、すでに立憲代表選は告示が9月7日、投開票が同23日に迫っており、構図を今から大きく変えるのは困難となっている。

もちろん、次期総理となる自民党総裁に誰が選ばれるのか、立憲代表に誰が選ばれるのかはこれからの論戦次第であり、その結果によって与野党の印象は大きく変わっていくだろう。

ただ、それぞれのトップを選ぶ党内選挙の後は、政府与党が秋解散を仕掛けて衆院選になだれ込む可能性も高い。

思えば、2021年衆院選は菅義偉前首相が支持率を落とし、岸田文雄首相に交代した直後で立憲がまさかの議席減となってしまい、枝野氏が代表を辞めることとなった。

次の立憲代表は早期に行われるかもしれない解散総選挙に立ち向かうことができるのか。

それは、どれだけ自由闊達で勢いのある選挙戦を立憲代表選で演出することができるか、まさに候補者擁立が進む今から問われていると言える。

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宮原 健太(みやはら・けんた)
ジャーナリスト
1992年生まれ。2015年に東京大学を卒業し、毎日新聞社に入社。宮崎、福岡で事件記者をした後、政治部で官邸や国会、政党や省庁などを取材。自民党の安倍晋三首相や立憲民主党の枝野幸男代表の番記者などを務めた。2023年に独立してフリーで活動。YouTubeチャンネル「記者VTuberブンヤ新太」ではバーチャルYouTuberとしてニュースに関する配信もしている。取材過程に参加してもらうオンラインサロンのような新しい報道を実践している。

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(ジャーナリスト 宮原 健太)

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