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「いびき」がひどい人は抱き枕に変えてほしい…睡眠専門医が勧める「ぐっすり眠れる寝相」の最終結論

プレジデントオンライン / 2024年9月4日 17時15分

※写真はイメージです - 写真=iStock.com/Kayoko Hayashi

ぐっすり眠るためにはどうすればいいのか。『1万人を治療した睡眠の名医が教える 誰でも簡単にぐっすり眠れるようになる方法』(アスコム)を書いた睡眠専門医の白濱龍太郎さんは「いびきが睡眠不足の原因になっているケースがある。いびきを改善するために、抱き枕に変え、横向きの姿勢で寝るようにしてほしい」という――。

■日本人の睡眠時間はどんどん削られている

みなさんは、毎晩「ぐっすり」眠れていますか?

必要な睡眠時間はいちおう保てていると感じている人も、「ぐっすり」かと聞かれると、答えに詰まってしまうのではないでしょうか。

じつは、日本人の睡眠時間は世界で最下位といわれています。

【図表1】世界33カ国の平均睡眠時間ランキング
出所=『朝までぐっすり眠れる 深睡眠スープ』

ただでさえ真面目で勤勉な国民性といわれているところに、スマホやタブレットから洪水のように流れてくる情報を受け止めることで、日本人の睡眠時間はどんどん削られています。

ただし、睡眠においては「時間」も大切ですが、何よりその「質」がカギとなります。

人は眠っている間、「レム睡眠」と「ノンレム睡眠」という2種類の状態を繰り返していますが、ノンレム睡眠のなかでも「深睡眠(しんすいみん)」と呼ばれる状態をしっかりとれていることが、「ぐっすり眠る」ことにつながります。

とはいえ、「今日はぐっすり眠るぞ」と気合いを入れたところで、深睡眠がとれるかどうかはコントロールできません。それどころか、「ぐっすり眠らなければ」と思いすぎてしまうと、脳が覚醒して眠りが浅くなってしまう可能性もあります。

では、どうすれば毎日「ぐっすり眠る」ことができるようになるのでしょうか。ここでは、深睡眠に効果的な体の使い方をご紹介します。

■寝る前の「ぐっすりストレッチ」で深睡眠へ誘う

まず、「眠りやすい状態」を自分で作ることができる、2つの「ぐっすりストレッチ」をご紹介しましょう。

・布団に入る直前の腕回しストレッチ・1分
①腕を曲げて肘を上げ、後ろへ大きくゆっくり回します。
(このとき、肩甲骨を寄せるつもりで回すのがポイントです。)
②肘が体の前にきたら、手を組んで腕を前へ伸ばします。
③伸ばした腕を頭の上へ持ってきて、伸びをするように上へ伸ばします。
④もう一度、曲げた腕を後ろに回します。
①~④を1分間かけて5、6回繰り返しましょう。
【図表2】布団に入る直前の腕回しストレッチ
出所=『朝までぐっすり眠れる 深睡眠スープ』

このストレッチは、布団に入る直前に行ってください。肩甲骨や腕には、熱を作り出す褐色(かっしょく)脂肪細胞が集まっています。これをストレッチで刺激することによって、深部体温が上がりやすくなるのです。さらに、肩周りの緊張がほぐれることで、リラックス効果も得られます。

部屋のベッドに一人で座り、夜に窓から覗く女性の背面図
写真=iStock.com/recep-bg
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/recep-bg
・布団のなかで足首の曲げ伸ばしストレッチ・1分
①鼻からゆっくりと息を吸いながら、足首を手前に起こします。
②口からゆっくりと息を吐きながら、足首を元の位置へ戻します。
①~②を1分間かけて繰り返します。
【図表3】布団のなかで足首の曲げ伸ばしストレッチ
出所=『朝までぐっすり眠れる 深睡眠スープ』

こちらは布団に入り、寝る寸前に行います。足首のストレッチを行うと血行が促され、ひとつめのストレッチで上げた深部体温を効率よく下げることができます。

■「いびき=熟睡」ではない

布団のなかで寝る寸前に行えば、スムーズに寝つけるようになるでしょう。もし足首に痛みを感じる場合は、鼻呼吸だけを行うようにしてください。

よい睡眠には深部体温と自律神経が関わっています。

これらのストレッチをすることで、深部体温が下がり、自律神経が副交感神経優位になることで、寝つきがよくなり、睡眠の質も上がります。

これらのストレッチのポイントは、激しい運動ではないという点です。

日中の運動は夜の熟睡に効果的ですが、寝る直前に筋トレのような激しい運動をすると、交感神経が優位になって逆に眠りにくくなってしまいます。寝る前には、このくらいの穏やかなストレッチのほうがリラックスしやすく、睡眠に効果的なのです。

また、毎日繰り返して行い、習慣化することで入眠効果はさらにアップします。続けるうちに「このストレッチをしたあとには眠る」と脳が学習するので、条件反射的に眠れるようになっていきますので、ぜひ習慣化してみてください。

よい睡眠をとるためには、いびきの改善も必要です。大いびきをかいていると熟睡しているように見えますが、じつはそうではありません。

いびきとは、睡眠中に気道がふさがって空気が通りにくくなっているために音が出ている現象をいいます。つまり、呼吸がしにくい状態なので、よく眠れず日中ボーッとする原因にもなりやすいのです。

■抱き枕をつかって横向きの姿勢で寝る

大きないびきをかいたかと思うとしばらく止まり、またいびきをかき始めるのは、睡眠中に呼吸が止まる「睡眠時無呼吸症候群」の症状です。

呼吸が止まるたびに体が低酸素状態になるので、臓器や血管はそれをカバーしようと急激に働きを強めます。すると、血圧の急上昇や動脈硬化が起こり、結果的に心筋梗塞や脳梗塞を招く恐れもあるので注意が必要です。

いびきをかく原因は、「肥満によって首周りに脂肪がついている」「扁桃腺が腫れやすい」「生まれつきあごの骨が小さい」などさまざまですが、いびきでお悩みの人は、とりあえず寝る姿勢を横向きに変えてみましょう。

仰向けで寝ると、舌が喉の奥へ沈んで気道が狭くなる「舌根沈下(ぜっこんちんか)」が起こってしまいがちですが、横向きで寝ればこれを防げます。横向きの姿勢をキープするには、抱き枕を使うとよいでしょう。

いびきのお悩みがない場合は、「仰向けの大の字」で寝るのがおすすめです。

悪い寝相に見えるかもしれませんが、ほてった体をクールダウンし、深部体温を効率的に下げるには、この体勢がもっとも効果的。手足を広げると体を圧迫しないので、血流がさまたげられず、熱を放散しやすくなります。

さらに血流を促すためには、足元にクッションや畳んだタオルなどを置いて、心臓より高くしてもよいでしょう。血液が心臓に戻りやすくなり、血流が滞りがちな中高年~シニア世代にはとくに効果的です。

■寝不足が原因で引き起こされるこわい病気

いびきや体のほてりを解消せずに放っておくと、体は慢性的な睡眠不足状態に陥ります。

睡眠は心身のコンディション維持に欠かせないものなので、睡眠不足が病気の引き金となってしまうことも多くあります。

睡眠不足で引き起こされる重大な病気には、次のようなものが挙げられます。

・がん
私たち人間は、生命を維持するために細胞分裂を繰り返しています。その細胞分裂の途中で「遺伝子のコピーミス」が起こったときに生まれるのが、がん細胞です。健康な人の体内でも毎日生まれていますが、そのたびに免疫細胞が働き、がん細胞を破壊してくれています。
がんを防ぐには免疫機能が正常に働いている必要があるのですが、深睡眠が足りないと免疫機能が低下するため、がん細胞の増殖を許してしまうことになります。

・糖尿病
シカゴ大学が行った実験によると、健康な若者の睡眠時間を4時間に制限したところ、わずか1週間で糖尿病の初期のような高血糖状態になってしまったといいます。
これは、血糖値を一定に保つ「インスリン」の働きが、睡眠不足によって急激に低下したためです。睡眠不足の状態が長く続けば、糖尿病を引き起こすリスクもそれだけ高まるといえます。

・うつ病
うつと不眠は、表裏一体の関係です。うつ病患者の大半は不眠を訴えており、不眠傾向の人はうつ病になるリスクが40倍に上がるといわれます。
また、国立精神・神経医療研究センターでは、4時間半睡眠が5日続けば、脳はうつ病や統合失調症に似た状態になってしまうとも発表されています。

・認知症
認知症の原因疾患としてもっとも多いのは、アルツハイマー型認知症(アルツハイマー病)です。「アミロイドβ」というタンパク質が脳にたまることで引き起こされる病気ですが、アミロイドβには、眠っている間に減り、起きている間に増えるという特徴があります。
つまり、睡眠不足が長く続くと、それだけアルツハイマー病になるリスクが高まるということです。

■「寝ないと太る」は真実

睡眠不足が深刻な病気をもたらすことは先ほどお伝えしたとおりですが、なんと肥満にも影響しているということは、意外に知られていないのではないでしょうか。

なぜ睡眠時間が減ると太るのかというと、ホルモンの分泌が乱れるためです。

人間の食欲や代謝には、食欲抑制ホルモンの「レプチン」と、食欲増進ホルモンの「グレリン」が関わっています。

レプチンは、脳の視床下部にある満腹中枢に働きかけて食欲を抑え、エネルギー消費を促すもの。グレリンは、脳の視床下部にある食欲中枢に働きかけて食欲を増進させ、血糖値を上げる司令を出すものです。

この2つのホルモンのうち、どちらが優位になるかを決めているのが、睡眠時間です。

具体的には、6時間より減るとレプチンの分泌が減り、逆にグレリンの分泌が増えるとされます。つまり、寝ないと食欲に歯止めがききにくくなってしまうのです。

白濱龍太郎『朝までぐっすり眠れる 深睡眠スープ』(アスコム)
白濱龍太郎『朝までぐっすり眠れる 深睡眠スープ』(アスコム)

「そういえば寝不足の翌日、なぜか食欲が増したり、甘いものやスナック菓子が食べたくなったりする」ということはないでしょうか?

コロンビア大学の調査によると、平均睡眠時間7時間の人の場合、睡眠時間が6時間に減ると約2割、5時間に減ると5割、4時間以下ではなんと約7割も肥満確率がアップするという結果が出ています。

逆に、ぐっすり眠れていればホルモンバランスが整いますし、加えて基礎代謝量もアップします。なぜなら、ぐっすり眠っている深睡眠の状態では、脂肪燃焼作用がある成長ホルモンがさかんに分泌されるためです。

毎日ぐっすり眠るだけで太りにくい状態になれるなら、ダイエットに活用しない手はありませんね。

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白濱 龍太郎(しらはま・りゅうたろう)
睡眠専門医
筑波大学卒業、東京医科歯科大学大学院統合呼吸器学修了(医学博士)。公立総合病院睡眠センター長を経て、「RESM新横浜 睡眠・呼吸メディカルケアクリニック」を設立。これまで約2万人の睡眠の悩みと向き合ってきた。さらに、マイクロソフトやPHILIPSなど世界的企業での講演、日本オリンピック協会(JOC)強化スタッフなど、ビジネスやスポーツ界からの信頼も厚い。慶応義塾大学特任准教授、ハーバード大学公衆衛生大学院客員研究員などを兼歴任。「世界一受けたい授業」(日本テレビ)、「モーニングショー」(テレビ朝日)などメディア出演多数。著書に『ぐっすり眠る習慣』、『朝までぐっすり眠れる深睡眠スープ』(ともにアスコム)など。

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(睡眠専門医 白濱 龍太郎)

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