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頭のいい子が育つ家庭の共通点…東大生が断言する「夏休みボケが抜けない子を"優等生"に変える方法」

プレジデントオンライン / 2024年9月2日 10時15分

※写真はイメージです - 写真=iStock.com/Hakase_

夏休みボケで勉強しないわが子に、親はどう接したらいいのか。東大生ライターの布施川天馬さんは「やる気に頼らなくていいように、勉強のルールや成績目標を設定したほうがいい。それで結果が出ているのであれば、たとえ家では遊びほうけていても干渉すべきではない」という――。

■受験勉強は「スケジュール管理能力」を問うゲーム

「子どもが勉強しない」と悩む親御さんは多いのではないでしょうか。特に、夏休み明け直後は「休みボケ」で勉強に手が付かない生徒、学生が増え、手を焼くご両親の声をよく聞きます。

私自身、中高生の時には勉強が大嫌いで、毎日1秒たりとも勉強しませんでした。その結果、高校3年生になってから、大いに後悔することになりました。

受験勉強とは、「入試本番」という期日までに、合格に必要な知識や考え方をインストールできるか否かを問うゲーム。「地頭の良さ」ではなく、「納期を守れるか」が問われ、スケジュール管理能力が必要です。地頭は、後述する「スケジュール遂行能力」の優秀さを指すにすぎません。

スケジュール管理能力は2つあります。ひとつは、「計画設定」。期日までに終わらせるべき仕事を洗い出し、適切な中間目標を設定しつつ、一日ごとにやるべきタスクまで分解する能力をいいます。そして、もう一つは「計画遂行」。定められたタスクを期日までにキッチリやり切る能力のことです。

■「勉強しなさい」に意味はない

親御さん視点では、多くの子どもが未熟に見えるでしょう。とはいえ、代わりにスケジュールを立てたり、リマインドしたりすることはよくないと私は考えます。試行錯誤の中で2つの計画力を身に付けるせっかくの成長機会を奪いかねないからです。

「勉強しなさい」という追い込みに意味がないのは有名な話です。理想論を語るようですが、やはり子ども自身に勉強の必要性を感じてもらって、自ら動いてもらえるよう誘導できるとよいでしょう。それも、「○○大学に合格したい」のような、内発的なモチベーションに支えられていることが理想です。

自らの心的、感情的な意欲に動機づけられている状態を「内発的動機付け」と言います。これに対して、金銭やプレゼントなど、外部からの報酬によって動機づけられている状態を「外発的動機付け」といいます。勉強や仕事、トレーニングなどは、最終的には「内発的動機付け」に基づくとよいといわれます。

外発的動機付けは即効性があるものの、慣れると報酬が当たり前になり、報酬なしに努力ができなくなってしまうからです。そこで今回は、子どもの内発的動機付けを促す親からのアプローチについてお伝えします。

■都合のいい「やる気スイッチ」などない

以前、ある学習塾のCMで「やる気スイッチ」という演出がありました。身体のどこかに「やる気スイッチ」が隠されており、ONにした途端、子どもが叫びながら走り出す――。

やる気スイッチ
写真=iStock.com/Planet Flem
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/Planet Flem

この演出を見ると、あたかも「子どもたちが勉強に着手しないのは、やる気がないから」で、スイッチをONにすれば、自主的に勉強しだすように見えます。

私の考えを結論から述べると、「やる気スイッチ」なんて都合のいいものは存在しません。それどころか、「やる気」がわく瞬間は、偶発的に訪れることを除けばほぼ存在せず、「やる気がわく」ことを期待している限りは、一生着手できない可能性が高いです。

ですが、そうすると、いま私が記事を書いていることに矛盾が生じます。私は今「早くこの記事の続きを書きたい」と考えながら手を動かしており、まるでやる気に満ち溢れているように見えるでしょう。そして、確かに私は今それに支配されながらキーボードをたたいている。どこかでやる気が放出された瞬間があるはずです。

では、どのようにすればやる気は溢れてくるのか。私の考えでは、やる気は実際に着手した瞬間から放出されます。「やる気が出たからやる」のではなく、「やり始めたからやる気がわく」のです。

■親ができることは「やり始め」の環境づくり

私は、キーボードをたたき始める前まで、数千にも及ぶ文字列を生成しようとは全く考えていませんでしたが、着手してからは書くべき内容がとめどなく溢れて止まらなくなっています。既に、「この仕事が終わったら、次はこの記事を書こう」と別の予定まで考え始めるほどやる気が溢れています。ですが、仮にいま30分の休憩をとったなら、またやる気はゼロの状態に戻ってしまうでしょう。

静止摩擦力と動摩擦力の関係をご存じでしょうか。静止した物体を動かす際に働く摩擦力と、動き続ける物体を動かす際に働く摩擦力では、同じ物体を動かすとしても、前者のほうが後者より大きくなります。「仕事をやり始める瞬間」が、一番負担がかかるのです。そして、一度始めれば、思っている以上に容易に継続が可能なのです。

だからこそ、子どもたちのやる気を引き出すためには、「やり始め」のハードルを越えさせることが重要といえます。スタートの号砲をどのように用意するかこそ、親にできる最大限の努力となります。

■ハードルの高すぎない「ルール」を作る

親にできるアプローチ① ルールを作る

スタートのためには、「やる気」に頼らないことが一番です。具体的には、ルールを設定して、機械的にそれを守り続けるようにするといいでしょう。例えば、「朝起きたらスマホを見る前に単語帳を開く」や「予定がない日は朝の10時までに制服を着て最寄り駅に行く(自転車に乗る)」とルールを決め、守るようにする。もちろん、このルールは親子で話し合って決めてください。

ミソは「○時間勉強する」などハードルを上げすぎないこと。確かに、「朝起きたら2時間机に向かう」とルールを決めれば、短期的には勉強に集中するようになるでしょう。しかし、それは個人の感情を無視したやり方。勉強は、短期的に頑張っても意味がありません。継続のためには、「単語帳を開く(無理して覚えなくてもいい)」とか「制服を着て外出する(具合が悪かったら帰ってきてもいい)」のように、ある程度緩さを残しておくといいでしょう。

また、同じように、「夕焼けチャイムが鳴ったら机に向かう」など、勉強する時間や場所をルールで区切るのもいいでしょう。例えば、筆者の場合は「学校では勉強だけ。代わりに、家では遊びだけ」と決めていました。そのため、受験期でも帰宅後の数時間は、ゲームをしたりマンガを読んだり、YouTubeを観たりして過ごしていました。

親にもそのように伝えていたので、家では遊びほうける私に対して、なにも文句は言いませんでした。見えるところで勉強していないと不安になる気持ちはわかりますが、「結果を出している限り放任だとありがたい」が、子ども側の意見です。

このように「ルールを守っているならば、親も干渉しない」ことが大前提です。ルールが守られている間は、何をやっても自由としなければ、信頼関係が崩れてしまい、子どもは親の言うことを聞かなくなるでしょう。

■「もっと上を目指せるんじゃないの」は禁句

親にできるアプローチ② 共通の目標を作る

前述のアプローチと合わせて「共通の目標を作る」ことがをお勧めします。この際「テストでいい点を取る」のように、抽象的な表現を使用しないことが望ましいです。「定期テストで10位以内に入る」「全科目平均80点以上獲得する」のように、客観的に見て公平に到達度が測れる目標にしましょう。

勉強とは、目標を達成するための手段です。目標未設定のまま行う勉強は、趣味の運動やゲーム、テレビ鑑賞などとなんら本質が変わりません。勉強したことがない人ほど「勉強すればするだけいい」と考えがちですが、それは大きな間違いです。

私が中高生の時は、親と「特待生待遇を毎年取り続ける」ことを目標として設定していました。私の母校では、通知表の評定平均が一定以上だと、特待を1年ずつ更新することができたのです。「維持さえできれば、あとは何をしていてもよい」と言われたので、毎日部活漬けの毎日を送っていました。1秒もペンを握らない日々が続きましたが、維持はできていたので、親は何も言いませんでした。

仮にここで、「学習時間ゼロで特待生になれる実力があるなら、もっと上を目指せるだろう」と勉強を強制されていたら、私は東大進学どころか大学受験すらしなかったでしょう。一度結んだ契約を後から一方的に反故にしてくるような信用のならない相手とは、二度と取引したくないと考えるのは当然です。

■「○○になりたくない」という負のモチベーションを意識させる

親にできるアプローチ③ 動機を作る

動機には2種類あると私は考えています。ひとつは、「○○大学に合格したい」のような、正の方向に働くモチベ―ション。「○○したい」「○○になりたい」は、努力を促す力として非常に強い力をもちます。確かに、私が東京大学で出会った学生にも「東大の○○先生の研究室で勉強したい」「官僚になって日本を変えたい」と語ってくれた人たちはたくさんいました。

ですが、それ以上に多かったのが、もう一つの動機である「負のモチベーション」です。これは、「○○になりたくない」のような、負の方向から逃げるために用いられる動機を指します。

例えば、私の場合は、「東大に合格すれば通ってもいい。もしも落ちたら、浪人するお金はないから、そのまま就職」と親から宣告を受けていました。私はお金で苦労しながら思春期を過ごしたので、金銭に対する執着が人一倍強く、高卒よりも大卒のほうが生涯賃金は優れることを知っていました。そのため、「大卒になれる未来もあるのに、高卒就職してお金で損をしたくない」と強く考えながら受験に挑みました。

つまり私は、「東京大学に行ってこんな勉強をしたい」と未来に希望を抱いたのではなく、「東京大学に行けなければ高卒就職」という未来から逃げるために、東大を受験したわけです。これが、負の感情から逃げるときに発生するモチベーションです。

■「負の状況」から逃げるために東大に入った人は多い

実は、東京大学に通う学生にも、このような人はいます。今回、この記事を執筆するにあたって東大生20人程度に「勉強のモチベーションを回復させる方法は?」とアンケートを取りました。そこで3分の1以上の学生から、「成績が下がるとまずいので、そのために勉強せざるを得なかった」と回答があったのです。今回答えてくれた学生の中には、成績の上下によって親や学校から半ば虐待のように追い詰められた経験をもつ子もおり、まさに「負の状況」から逃げるために動機づけしていたといえるでしょう。

■「勉強している親」を見せる

親にできるアプローチ④ 勉強しやすい環境を作る

最後におすすめできるのが「子どもが勉強しやすい環境を作る」ことです。勉強しやすい環境とは、「静かな部屋」や「快適な室温」を指しているのではありません。

リビングで勉強する子供
写真=iStock.com/b-bee
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/b-bee

今回東大生らに話を聞いたところ、「親が一緒に勉強してくれたことがうれしかった」とする意見が多くありました。例えば、九州から東大に進学したある男子学生は、「本格的に勉強を始めようと早起きして学校に向かうようにしたら、親も自分に合わせて、あまり用もないのに一緒に早起きだけしてくれた」と語ってくれました。彼曰く、その経験によって、「自分は一人ではないし、親は自分を応援してくれている」と強く感じることができて、勉強のモチベーションアップにつながったそうです。

また、東北から東大に進学したある女の子は、「いつもリビングで親が勉強していたので、自分も勉強しないといけないと思わされていた」と語ってくれました。親が勉強している姿を見せることが、どんな言葉よりも強い「勉強しなさい」の合図になるのかもしれません。

■「やる気の有無」に依存するのは悪手

まとめ

「やる気」を引き出すためには、まず「やる」ことが第一です。そのためには、「勉強を開始するシチュエーション」をルール付けして、開始のハードルをやる気の有無にかかわらず超えられるようにするといいでしょう。また、子どもと話し合って勉強の目標を設定すれば、子どももどれくらい勉強すればいいかが明確化されるので、取り組みやすくなるかもしれません。

内発的動機付けとしては、「○○になりたい」ではなく、「○○になりたくない」負の動機を見つけ出すといいでしょう。勉強しないとどうなるか、一度真剣に話し合ってみてはいかがでしょうか。

ただ、どんなテクニックよりも、やはり親が勉強している様子を見せることが一番の薬となるのかもしれません。「勉強しなさい」と命令するのではなく、「自分は勉強しているけど、君は?」と問いかける余裕が必要になるのではないでしょうか。

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布施川 天馬(ふせがわ・てんま)
現役東大生ライター
世帯年収300万円台の家庭に生まれ、金銭的余裕がない中で東京大学文科三類に合格した経験を書いた『東大式節約勉強法 世帯年収300万円台で東大に合格できた理由』の著者。他にも『人生を切りひらく 最高の自宅勉強法』(主婦と生活社)、『東大大全』(幻冬舎)、『東大×マンガ』(内外出版社)、『東大式時間術』(扶桑社)などがある。

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(現役東大生ライター 布施川 天馬)

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