3位はサッカー、2位はバドミントン、1位は…これをやれば長生きできる「寿命を9.7年延ばす」運動の種類【2024上半期BEST5】
プレジデントオンライン / 2024年9月2日 7時15分
※本稿は、山田陽介『科学がつきとめた 中年太りのすごい解消法』(エクスナレッジ)の一部を再編集したものです。
■エネルギー消費のコツは、体の重心を移動させること
本稿では運動のコツについてお話ししたいと思います。
意識的に行う運動はもちろん大事ですが、その前に、日常生活での活動量を増やすコツについてお話ししましょう。
私が体を動かすことがよいといったら、「びんぼうゆすりのような運動でも効果があるのか?」とたずねた人がいますが、座ったままの姿勢で体を動かしても、ほとんど消費エネルギー量は増えません。
現代人の家庭生活は、座ったままリモコンでいろんな作業ができてしまうので、座りっぱなしになりがちです。
しかし、消費エネルギー量を増やすなら、立ち上がって何か物を取りに行くようにしたほうがよいのです。
消費エネルギーを増やすには、体の重心を移動させることが重要です。もっとわかりやすくいえば、腰を使って上下や左右に動くことが消費エネルギー量を高めます。
上下の運動なら、座ったり立ったり、階段の上り下りをする動きです。左右であれば、まっすぐ歩くのではなく、右に曲がったり左に曲がったり、廊下を何度も往復したりするような動きをすると重心が動きます。
■会社員であればガーデニングを趣味に
階段の上り下りでは、とくに階段を上るときにエネルギー消費量が大きくなります。平地を歩くのに比べて、階段上りは約3倍ものエネルギーを消費します。また、息が上がって心肺機能も鍛えられます。
オフィスで階段が使える環境なら、エレベーターは使わず、上のフロアに行くときは階段を使うというのもよいでしょう。
家事であれば、洗濯ものを物干しに干したり、高い棚のものをつま先立ちで取るといった動作をすると上下に重心が動きます。
農業をやっている人は、仕事で相当なエネルギー消費をしていますが、会社員であればガーデニングを趣味にするのもよいと思います。
立った姿勢で植物に水をあげたり、しゃがみこんで植物の世話をするなど、体は上下や左右によく動きます。花を育てるのも楽しいと思いますが、野菜を育てる家庭菜園なら、採れた野菜が食べられるので一石二鳥ですね。
■週2回、最低30分を
日常の動作を増やして消費するエネルギーも、「チリも積もれば……」ではありませんが、1カ月、1年という単位で見ればけっこうなエネルギー量になってきます。
しかし、これだけではさすがに十分でありません。それに加えて、意識的な運動を行うことも習慣にしましょう。
その時間は、最低で30分。子どもとのキャッチボールとか、何かスポーツができるのが理想ですが、散歩やウォーキングでもかまいません。
大人が普通に歩くと、おおむね10分で1000歩ぐらいですから、3000歩で30分運動したことになります。
雨の日にまで散歩しなさいとはいいませんが、休み癖がつかないように、週2回以上はやるようにしましょう。本当は、雨の日はスクワットなどの筋トレを行うようにして、休みの日をできるだけつくらないようにしたほうがよいのです。
■個人参加型の運動より、球技の方が寿命は延びる?
1日30分の散歩程度の運動に加えて、私がすすめたいのは、週1回、何かスポーツをすることです。
コペンハーゲン調査という研究があります。デンマークのコペンハーゲン市内在住の成人(8477人)を25年にわたって追跡調査したもので、運動習慣がない人とある人の平均寿命の差を明らかにしたものです。
おもしろいのは、スポーツ種目別に、どのくらい寿命に差があるかまで示していることです。
結果は、1位からテニス(9.7年)、バドミントン(6.2年)、サッカー(4.7年)、サイクリング(3.7年)、水泳(3.4年)、ジョギング(3.2年)、健康美容体操(3.1年)、ヘルスクラブでの活動(1.5年)となっています。
スポーツ種目によって週あたりの運動時間の差はありましたが、運動実施時間の影響は少ないこともわかりました。
おもしろいのは、テニス、バドミントン、サッカーと、上位3つがいずれも球技であること。ジョギングやヘルスクラブでの活動は基本的に個人参加型の運動であるのに対し、球技は参加者どうしのコミュニケーションが生まれることに違いがあるのかもしれません。
ですから、ジョギングのように1人で孤独になって走るようなスポーツではなく、運動仲間がつくれるような運動がよいと思います。
■スポーツをやるなら仲間づくりがおすすめな理由
ジムの運動でも、あいさつできるような仲間がいれば、やり方のコツを教えてもらったり、お互いにはげましあったりするなど、コミュニケーションが生まれます。
これからスポーツを始めるなら、スクールに通うという方法もあります。テニススクールや水泳スクールなどに通えば、インストラクターから技術を教えてもらうだけでなく、参加している者どうしのコミュニケーションも増えるでしょう。
学生の頃やっていたスポーツがあるなら、スクールなどに通って再開させればよいと思います。スクールならレベルに合わせて指導してくれるので安心ですし、仲間もつくりやすくなります。
また高齢者にはゴルフの経験がある人が多いと思います。定年してからやらなくなっているなら、昔の仲間を誘ってゴルフを再開させるのもよいでしょう。孤立によるフレイルの予防にもなります。
コペンハーゲン調査の研究者たちも、こうしたコミュニケーションに注目しています。コミュニケーションをとることがストレスの解消になり、メンタルヘルスが向上することが、寿命の延伸にもつながっていると考察しています。
ですから、スポーツをやるなら、ぜひとも仲間をつくってもらいたいと思います。
■土日、年末年始にダラけないことがポイント
運動で忘れてはならないのは、週末、年末年始、GWや夏休みなどのホリデー・ウエイト・ゲインを減らすことです。
これらの休みを運動しないでいると、それが休み明けの体重増につながります。ですから、この期間こそ意識的に運動してほしいのです。
お勤めの人がスポーツスクールに通うなら、土日に行くようにすれば、土日の運動不足が改善できるでしょう。
そこまではまだまだ、という人も、土日も最低30分の運動は続けましょう。ウィークデーは休む日があっても、土日に休まないことがポイントです。
もちろん、土日に行楽地に出かけるなど、体を動かす機会があるのであれば、それが運動の代わりになります。
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国立研究開発法人医薬基盤・健康・栄養研究所運動ガイドライン研究室長
神戸大学大学院保健学研究科准教授。1980年、埼玉県生まれ。専門は身体活動科学・栄養代謝学・健康長寿学。2021年、2022年には『Science』誌、2023年には『Nature Metabolism』誌に共同責任著者の論文が掲載されるなど、エネルギー代謝に関する研究の第一人者。
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(国立研究開発法人医薬基盤・健康・栄養研究所運動ガイドライン研究室長 山田 陽介)
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