負けるとショックのあまり暴れ出す…"負けに耐えられない子"と遊ぶなら負けても楽しいあのゲーム
プレジデントオンライン / 2024年10月5日 17時15分
※本稿は、前田智行『「できる」が増えて「自立心」がどんどんアップ! 発達障害&グレーゾーンの子への接し方・育て方』(大和出版)の一部を再編集したものです。
■負けたショックで暴れてしまう子
特別支援が必要な子どもの中には、「負けることに耐えられず暴れてしまう」という子どもがいます。
本来は、「一緒に遊ぶプロセスを楽しむ」ことが目的なのに、「勝って良い気分になる」ということが目的となり、結果、負けたショックに耐えられないのです。
負けず嫌いな性格でも、それが人生でプラスに働けばいいのですが、対人関係や日常生活にまで影響が出るなら支援が必要です。
こんなとき、「にらめっこ」をして遊ぶのは支援として有効です。
にらめっこは、「笑ったら負け」というルールなので、「負け=嫌だ」と学習しているはずなのに、「負け=楽しい」という結果になります。
そのため、「負けても楽しい」と学習できますし、大人から「負けても楽しいね〜」とラベリングをすることで、誤学習を上書きすることが可能です。
■勝つことが楽しいわけではない
ゲームは勝ち負けで終わるものだけではない
発達障害の子の中には、負けることへのストレスに耐えられず、ゲームを放棄したり、怒りを爆発させたりしてしまう子もいます。
そんなときは、まずは、「協力型ゲーム」からスタートします。
たとえば、1人で遊べる「ソリティア」を2人で一緒にやっても良いですし、ボードゲームであれば『脱出! おばけ屋敷ゲーム』。
アナログカードゲームなら『ito』など、複数人で協力して、クリアを目標にするゲームであれば、勝ち負けにこだわらなくてすみます。
ここで大事なのは、「勝つことが楽しいのではなく、一緒に遊ぶことが楽しい」という事実に気づかせること。
そのために、まずは協力型ゲームで一緒にゴールを目指す経験を積んで、一緒に遊ぶ時間を楽しめる環境設定をしてみましょう。
■勝負をごまかす暇がない遊び
負けが苦手な子は、一緒に遊ぶ大切さに気づく経験が大事ですが、現実的には、幼いうちは、「負けても楽しい」と大人な思考までいくことは難しいものです。
そのため、「負けてもごまかさない」「負けは嫌だが、人に迷惑はかけない」というスキルを身につけるために、「ジャンケン」から始めてみることが大切です。
たとえば、時間のかかるボードゲームなどでは、負ける前に「なんか負けそう」と気づいてしまうので、脱走したり、ボードをひっくり返したりと、怒りを爆発させる余地が生まれます。
しかし、ジャンケンは、手を出した瞬間に勝敗が決定するので、勝負をなかったことにするようなごまかしはできません。
そこで、大人がジャンケンで負けても、「もう一回やろう」など、負けた後に切り替える姿を何度も見せると、子どもは徐々に、「適切な負け方」を覚えてくれるようになります。
■ちゃんと謝れば、トラブルの悪化を防げる
発達障害の子どもの中には、衝動性が高い子や、うっかり相手に失礼なことを言ってしまう子がいます。
このような子に、「衝動的に動いちゃダメ!」と教えることも大切ですが、脳の特性ですので、ゼロにすることは難しいものです。
そこで、「今のウソ!」「今、話盛っちゃった!」と、行動の後に謝ったり、訂正したりするフォロースキルを教えておくことも、トラブル予防には効果的です。
特に、フォローの仕方がわからないと、「謝らない/謝れない」という態度を取って、余計に相手と揉めてしまうことがあります。
本人に悪気がないのも事実ですので、すぐに謝ることで、その後のトラブルの悪化を防ぐことができます。
もちろん、謝ることで自己肯定感が低下する子どももいますので、「うっかりミスは誰にでもあるんだよ」と深刻になりすぎないよう伝えることも大切でしょう。
■書字と不安処理の関係
発達障害の子どもは、書字が苦手な子が多くいます。
文字が覚えられない、不器用で書けない、文章を思いつけない、など、高い確率で書字の困難が生まれます。
同時にいろいろな支援も開発されているのですが、書字の苦手さに大きく影響を受けるのが、不安の処理能力です。
何か不安があったとき、不安の原因や自分の考えたこと、感じたことを書き出していくことで、不安のもとになった現象を紙の上に視覚化していきます。
すると、現象を自分と切り離して、客観的に見ることができるので、
「怖かったけど、実はたいしたことなかったんだな」
「次はこうすればいいんだな」
というように気持ちを前向きにしていくことができます。
しかし、書き出すことなく、悩んでいる状態ですと、いつまでも自分を客観視できないため、脳内で不安やネガティブな感情が回り続けます。
そのため、書字の苦手さは、不安が解消されない大きな要因の1つであり、また、発達障害の子どもが、「負の体験の記憶が残りやすい」のは、「言語化が苦手だから」という理由もあると推測されます。
■自分の気持ちを言語化することの効果
そこで、本人に書字を練習させて、自分の気持ちを言語化できるようにする、という支援は重要です。
フリック入力やタイピングでも同様に有効ですし、本人が書けない場合は、周囲の人が文字起こしして、外部化していくのも効果的です。
ただ、タイピングですと、情報の視覚化が難しい内容もあるので、成長していくとともに、PowerPointなど、文字情報を図式化しやすいツールを使って対応することも効果的です。
このように不安や現状を言語化/視覚化することは、感情や思考を整理し、感情コントロールの力を適切に育てるためにも有効です。
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こども発達支援研究会 代表理事
放課後等デイサービス、児童発達支援事業所、小学校等にて500名以上の支援に関わる。ADHD、ASDの当事者。専門知識と当事者経験に基づく知見を発信すると同時に、現在は星槎大学大学院修士課程にて研究活動を行う。著書に『ユニバーサルデザインの学級づくり』(明治図書出版)『子どもの発達障害と感覚統合のコツがわかる本』(ソシム)、『「できる」が増えて「自立心」がどんどんアップ! 発達障害&グレーゾーンの子への接し方・育て方』(大和出版)などがある。
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(こども発達支援研究会 代表理事 前田 智行)
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