「午後10時から午前2時の間」ではない…最新の研究が証明した「本当の睡眠のゴールデンタイム」
プレジデントオンライン / 2024年11月25日 17時15分
※本稿は、ヒラノマリ『人生を変える睡眠術』(大和出版)の一部を再編集したものです。
■普段4時間半しか眠れない人にアドバイスしたこと
ある運輸会社の社長の方で、「普段4時間半しか眠れない」という方の睡眠コンサルをしたことがあります。「眠っても途中で目が覚める」、また「ずっと仕事のことを考えて寝つけない」などの悩みがあり、講演で出張の機会が多いことも、ぐっすり眠れない要因になっていました。
こうした場合、いきなり7時間睡眠までもっていくのは難しいです。
そこで、「せめて5時間半か6時間は眠れるようになること」を目指して、アドバイスさせていただきました。
そして1カ月後。この方は、5時間半~6時間近くまで睡眠時間を伸ばせるようになったのです。
一番効果的だったのは、入浴時間に気をつけたことと、朝日を浴びるようにしたことでした。
■睡眠不足が続くと、若い人でも部分白髪が出る
人間の体内時計は、朝に日光を浴びることで調節されます。
くもりや雨の日でも、日光の光は届いているため、天気が悪くても屋外に出ることが大切です。
でも、運輸業は朝が早く、冬場だと日が昇らないうちから仕事をすることもあるため、この方は眠りと覚醒の切り替えがうまくいっていなかったのです。
そこで、寝る数時間前の入浴と、毎日日課にしていた散歩の時間を変更したら、よく眠れるようになったと喜んでいらっしゃいました。
それまでは目の下のクマを人に指摘されることも多かったようですが、1カ月頑張ったら、仕事の場でも「最近クマが薄くなったね」「顔色がよくなった」「元気そうになった」と言われることが増えたそうで、「本当にコンサルを受けてよかった。すごく嬉しかった。感動した」とおっしゃっていました。
疲れた顔は、やはり仕事相手に対してもマイナスな印象を与えてしまうので、ご本人もそれを気にしていたのです。
睡眠の良し悪しが外見に影響する例は、ほかにもたくさんあります。
先日、美容師さんから聞いた話では、睡眠不足が続くと、若い人でも部分白髪が出たりするとのこと。
また、睡眠不足だと肌のターンオーバーも乱れるので、肌荒れや吹き出物の原因にもなります。肌の調子が悪いと自分でも気になりますし、人に与える印象も変わってくるので、気をつけたいものです。
■見た目が変わると人生が変わる
実は私も昔はすごく肌荒れするタイプで、睡眠に気をつけるようになる前は、ほぼいつもニキビができていました。
友人にもそういうイメージを持たれていたのですが、ここ数年は「肌がきれいになったね」と言われるようになり、睡眠の肌への影響を実感しています。
そして、しっかり眠るようになってからは、何より太りにくくなったと感じています。
一方、睡眠不足が続くと、食欲を抑制するホルモンの分泌が悪くなって、食欲が増したり、代謝にも影響が出てくることがあります。
ボディビルの大会に出ている友人たちは、「どれだけ食事に気を遣っていても、睡眠の状態が悪いと体脂肪が落ちない」「睡眠時間が短いというだけで体重が増えてしまう」と言っています。彼らも、特に大会前は睡眠に気をつけているそうです。
このように睡眠は、全体の印象、お肌、体型など、いたるところに影響しています。
少しずつでも睡眠時間を伸ばすだけで、人生にもプラスの効果があらわれます。
好感度の高い見た目のためには髪型、メイク、ファッションなどももちろん大切ですが、内側からの改善策として、睡眠にもぜひ目を向けてほしいと思います。
■「眠りの時差ボケ」に注意する
「何時に寝て何時に起きるのがベストなのですか?」
よく、こんな質問を受けます。
結論から言うと、就寝時間と起床時間は、その人の仕事や生活パターンによって違うので、あまり厳密に「何時から何時」と考えなくてかまいません。
残業で遅くなったりして、就寝時間に多少ばらつきが出るのも許容範囲です。
ただ、起床時間を固定することは大切です。
これは守ってください。
というのも、起床時間がバラバラだと体内時計が狂い、体が時差ボケしてしまうからです。
やっかいなことに、一度時差ボケすると、元の体内時計に戻すのに数日かかってしまいます。
あなたのまわりにこんな人はいませんか?
「月曜日はエンジンがかからず、水曜日あたりからやっと調子が出る」
「午前中は使いものにならない」
そのような方は、日本にいながら時差ボケになっている傾向があります。
当然、仕事にも影響が出てくるでしょう。
パフォーマンスの低下を防ぐためにも、できるだけ起床時間は朝7時なら7時と決めて、動かさないようにしてください。
■大事なのは、眠りはじめの90分
従来、睡眠のゴールデンタイムは午後10時から午前2時の間と言われてきました。
しかし、今の研究では、成長ホルモンが最も分泌されやすい時間帯は「眠りはじめて最初の90分」で、その時間に一晩に分泌される成長ホルモンの7~8割が分泌されると言われています。
もちろん、成長ホルモンの分泌は体内時計の影響も受けているので、昼間よりも夜にちゃんと眠るほうが望ましいのは確かです。
ですから、なるべく夜と言われる時間帯に眠っていただきたいのですが、「必ず夜10時に寝ないといけない」ということはありません。
現代人は忙しいし、帰宅時間が10時頃かそれ以降になる、という人もいますよね。
というわけで、何よりも重要なのは「眠りに入って最初の90分を充実させること」なので、それを念頭において対策を立てましょう。
入眠がスムーズだと、その後の睡眠もだいたいスムーズなのですが、寝つきが悪いと、起きるまでの睡眠も不安定になりやすいのです。
■「レム睡眠」「ノンレム睡眠」のバランスを考える
睡眠には「レム睡眠」と「ノンレム睡眠」があると聞いたことがある方もいるかもしれませんね。
簡単に説明すると、記憶の整理や定着をおこなう役割をもつのがレム睡眠、脳や体を休める役割をもつのがノンレム睡眠です。
そして、眠りはじめの90分で成長ホルモンを活発に分泌させるのも、ノンレム睡眠の役割です。
レム睡眠は、ノンレム睡眠に比べて軽視されがちなのですが、実は、レム睡眠に入っている間は唯一ストレスホルモンが脳内に存在しない時間帯で、「メンタルヘルスの時間帯」と言われています。
つまり、レム睡眠は、私たちの精神を健康に保つために重要な役割を果たしているのです。
このように、睡眠の段階にはそれぞれ大事な役割があり、私たちは、その両方を充実させることで最大のパフォーマンスを発揮できると考えられます。
■睡眠はタワマンの土台部分
厚労省が言うように、食事、睡眠、運動は健康を守るうえでの3本柱です。
運動なら「ジムに行く」、食事なら「グルテンフリーにする」など、いろいろ気をつけている人も多いと思います。
でも、この3つの中で脳機能に直接かかわっているのは睡眠です。食事やトレーニングでは補えない、睡眠にしかない体への役割がたくさんあります。
忙しいとき、食事はパソコン作業をしながらでもできますが、睡眠は「ながら」ではできません。結局、睡眠を削ることを選んでしまう方が多いのですが、本当は一番削ってはいけない部分です。
健康というものをタワーマンションにたとえるなら、次のように「睡眠という土台の上に、食事や運動が積み重なっている」と考えてください。
土台がしっかりしていないマンションは欠陥住宅ですし、液状化してしまった土地の上に家は建ちません。
■睡眠は人生の土台
そして睡眠は、あなたの人生そのものの土台でもあります。
睡眠に問題のある状態をそのままにしていると、どんなにいい努力を重ねても、結局は水の泡になってしまうからです。
たとえば、昇進のために睡眠を犠牲にして資格試験や仕事を頑張っても、体や心を壊してしまったら、なんにもなりません。
まずは正しい睡眠で土台の部分をしっかり築いていくために、この本を活用していただけることを願っています。
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スリープトレーナー、睡眠健康指導士
自身も不眠症を経験したことから睡眠学に興味を持ち、大学卒業後は大塚家具に入社。一般のお客様からホテル、保養所、大使館などのベッドや寝室全体のコンサルティングを経験する。現在は日本で唯一のアスリート専門の睡眠のパーソナルトレーナー『スリープトレーナー』としてメジャーリーガーの藤浪晋太郎投手、プロ野球選手、Jリーガー、オリンピック選手などに試合時に合わせた睡眠アドバイスから寝具・パジャマ選びまで行っている。
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(スリープトレーナー、睡眠健康指導士 ヒラノマリ)
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