仕事ができる人は「受信トレイがゼロ」になっている…「グーグルの中の人」が教えるGmailの賢い使い方
プレジデントオンライン / 2024年12月16日 8時15分
■便利ツールのはずが、最大のストレス要因に
私がクライアントと最初に仕事をするとき、ほとんどの場合、メールの使い方から始める。メールの扱い方は、個人によって大きく異なるからだ。仕事への不安の出発点になりえるし、ときには最大の苦痛ポイントにもなる。
多くの人にとって朝、最初に目にし、寝るまえに最後に目にする(隣で寝ているパートナーも含めて!)のはメールだ。メールはときに「これにちゃんと返信したかな?」と夜中になっても人を悩ませる。受信トレイに入っているものは頭のなかにも残っている。
私たちの多くは、便利な非同期のコミュニケーション手段としてメールを使い始めたが、いまでは、最もどっぷり嵌まり、最も時間を費やし、最もストレスを感じるものになってしまった。自分のToDoリストに他者から何かを追加される手段になってしまった。
リモートワーク環境にシフトするにつれ、メールの件数は膨れ上がっている。ソフトウェア会社〈ハブスポット〉のデータによると、パンデミックによってリモートワークへの移行が始まって以来、メールの量は44%増加したそうだ。
■1時間に11回もメールチェックしている
電子メールは使い勝手に優れ、現代社会に不可欠なコミュニケーション手段だ。もし私がパワー・アワーで作業に没頭していて、相手が別のタイムゾーンで眠っている場合でも、プロジェクトについてメールをやり取りしておけば効果的に作業を進められる。
プロジェクトに新たな要員を加える必要が生じた場合や、作業内容を共有する必要がある場合にもメールは記録として残っている。ドキュメントを複数人で同時編集したり、インスタントチャットを利用したりできる場面もあるが、それでもメールは通常のワークフローにおいて重要かつ必須の存在だ。
研究によると、仕事中の人は1時間に約11回、メールを確認している。その多くは、実際には何も行動につながらず、ただチェックしているだけ!
私たちはときに、未読のメールをランダムに開けたり、メールに付随する業務を半分だけ片づけて残りを放置したり、受信トレイをリフレッシュして新しいメッセージが届いていないか探したり、返信を途中まで書いてやめたりなど、終わりの見えない作業をだらだら続けることがある。そうではなく、メールを効果的に処理するコツを会得しよう。
■グーグル社員「夜よく眠れるようになった」
私は、メールとのかかわり方を変えるための3ステップのプロセスを開発した。このメール研修は数万人のグーグラーが受講しており、グーグルのなかでつねに高い評価を得ている。
受講者からは「すごい、受信トレイにかかわる時間が30%減りました!」「これまでよりずっと気分よくメールを扱えるようになった」「メールの管理が完全にできていると感じます」といった内容のメッセージが頻繁に届く。
「研修を受けたあと、ぼくの反応が従来よりずっと速く、仕事をうまく処理していると、チームから認められた」「自分のメールを把握でき、何も見逃しがないとわかるようになったので、夜よく眠れるようになりました」という声もあった。
■無駄なメールの多さを誇っても仕方ない
これから紹介する3つのステップを順番どおりに実行することで、受信トレイをきれいに整理できる。ステップ1だけをおこなったとしても、はっきりとちがいを感じられるはずだ。ステップ2に進めば、さらによくなる。ステップ3を完了すれば、もう何もこわいものはない。メールを完全にコントロールしていると実感するようになる(いい気持ちですよ)!
1.見る必要のないものは削除する
受信メール数をまるで勲章のように自慢する人を何度も見かけた。「未読が890通も溜まった」とか「受信トレイに数千通ある!」など。このような場合、多くの同僚が返事のないことにイライラしているか、本当は必要のないメールが受信トレイに大量に届いているかのどちらかを意味する。
たいていは後者だ。受信トレイに入っているのに開かないメールは、クローゼットにしまったまま着ない服のようなものだ。サイズが合わないとか流行遅れになったとかで着なくなったシャツが890枚あっても自慢にはならない。
むしろ、着ない服があるせいで、着る服を選ぶのが余計に面倒になる。けっしてハンガーから外さない服でも、そこにあれば視線が引っ張れてしまう。着ない服がないほうが、着る服を選ぶのに使うエネルギーポイントがずっと少なくて済む。
メールでも同様に、受信トレイにあるメッセージはすべて、たとえ読まなくてもあなたのエネルギーポイントを何かしら消費する。受信トレイに入ってしまうと、太字のフォントが脳に働きかけ、開くか開かないかに関係なく、なんらかの対応が必要だと勘違いさせてしまうのだ。
■読まないメルマガだけ抽出する方法
ステップ1のゴールは、必要のないメールをできるだけ多く受信トレイから排除することだ。メールソフトのフィルタや仕分けルール機能を使い、それらが受信トレイに届かないようにする。
多くの人にとって、未読メールの大半はうっかり登録してしまったニュースレターやアラートだ。そういったメールを一気に捕捉したければ、「配信停止」や「ブラウザで表示する」などのキーワードで検索するといい。こうしたキーワードの入ったメールは通常、あなた個人に直接送られてきたものではなく、メーリングリストで一斉に送信されたものだ。
今後、受信トレイに入らないようにするには、キーワードの入ったメールが受信トレイに届かないようにする仕分けルールやフィルタを作成するか、検索して見つけたメールの指示に従って配信停止の手続きを完了する。
タイマーを30分にセットして、できるだけ多くのメールを削除するゲームだと思って取り組んでみよう。本来見る必要のないメールを見つけ出し、今後同じことが起こらないようにする方法――フィルタの作成、送信者の遮断、メーリングリストの解除、スパムとしてマーク、など――を探る。
不要なものを排除するのは、もう着ない服を処分するのと似ている。必要なものだけが表示されるように整理したあとは、受信トレイの確認から喜びと爽快感を味わえるだろう。
■「重要メール」は他のメールと区別する
2.本当に必要なメールを目立たせる
もし、会社のCEOから直接あなたにメールが届いたのなら、そのメールは、CEOが全社に一斉配信したメールとは体裁が異なっていなければならない。教授からあなただけに届くメールは、ゼミ生全員に送ったメールとは見た目がちがうべきだ。子どもの学校の校長からのメールも、毎週の学校便りとは区別できるようにしておこう。
会議も出張も多い人は、メールの大部分をまずスマートフォンで受信することになるが、この受信トレイはパソコンの画面で見るよりも小さく、詳細情報も少ないため、すぐに開くべきメールと後回しにできるもののちがいがわかるようにする必要がある。
メールを開くまえでも、その内容について「未来の自分」に多くを伝えられ、受信トレイを上から下までスキャンしてどれが重要かを見きわめなくていいようにするのだ。
■「明るい色+太字」に設定し、一目で把握
「VIP」「緊急通知」のようなラベルやフラグを設け、フィルタや仕分けルールを使って自動的に振り分けよう。Gmailであれば、「フィルタを作成」から、ルールに基づいてラベルを追加する使い方が考えられる。
たとえば、マネジャーから直接送られてきたメールにはそれとわかるラベルをつけ、最大の営業顧客(@以下が同じメールアドレス)からのメールには明るい色で太字のラベルをつける(受信トレイに直接届くようにしつつ、他のメールとは異なる色にする)など。また、メールソフトに自動でフラグを立てさせ、優先順位づけを実行させよう。
そうしておけば、メールを開くまえに、受信トレイに入っているものの全体像を一目で把握することができる。このような仕分けルールをいくつか設定することで、「未来の自分」が重要なメールを見落とすことなく、件名を読まないうちにある程度の優先順位を知る手がかりとなる。
■受信トレイの中身がめちゃくちゃな人が多い
3.洗濯物を仕分けるようにメールを仕分ける
ここで、メールを洗濯物に例えてみよう。実は多くの人が、ストレスを溜めまくる最悪の方法で扱ってしまっている。
・濡れた服をまた乾燥機に入れる(未読に戻す)ため、乾燥機はけっして空にならない(受信トレイはゼロにならない)。
・洗濯物の詰まった乾燥機を1日中、何度も覗いては、片づいていない大きな山があることに気づかされる(1日に15回以上、メールをチェックするのに整理しない)。
・夜中に目が覚め、あのピンクのシャツはどこ、とパニックになる(重要なメールに返信したか、受信トレイのなかの重要なメールを見落としていないかと夜中にパニックになる)。
この洗濯という比喩は、メール管理について何を教えてくれるのか?
読んだメールでさらに対応が必要なものと、未読の新着メールを同じ場所に置かない。これを混ぜるのは、あとは畳むだけの乾いたズボンを、濡れた靴下と一緒に乾燥機に入れておくようなものだ。何がしたいのかわからない。
■「複数の受信トレイ」をお勧めしない理由
複数の乾燥機をもつことも混乱の元だ。なかには、社内メール用の受信トレイ、社外メール用の受信トレイ、その他のメール用の受信トレイを分けるのを好む人もいる。だが、生産性向上に関する実証済みの原則として、チェックする場所が増えるほどプロセスは煩雑になる。
もし家の外に9つの郵便受け――請求書用、広告用、個人宛てのメッセージカード、その他6つのカテゴリ用――があったら? 毎日、それぞれの郵便受けを見るなんて、どれほど面倒なことだろう。ひとつの郵便受けを毎日空にして、なかにあったものを家のなかで仕分けるほうがずっと楽だ。だから私は、受信メールの種別ごとに受信トレイを複数もつことはお勧めしない。
Gmailでは、「洗濯カゴ」としてラベルを作成し、あたかも複数の受信トレイがあるかのようにラベルを同時に表示し、「乾燥機」(メインの受信トレイ)と並べて見ることができる。他のメールソフトでもだいたいフォルダー作成機能がついている。
■メールを4つのラベルに仕分けする
次に示す作成すべき4つのR――基本的な洗濯カゴ/ラベル――は、メールに対してとることのできるアクションに基づいている。
1.要返信(Respond)
自分から回答する必要があり、そのために時間と労力を要する。
例:重要なプロジェクトの進捗状況を尋ねる上席者からのメール
2.読むだけ(Read)
読みたい内容だが、返信は不要。
例:業界ニュースレター、参考情報、事例研究など
3.あとで確認(Revisit)
特定のタイミングまたは誰かの返信を待っているため、いますぐには対応できないもの。しばらく待機するか、フォローアップの必要があるが、自分のToDoリストには入れない。
例:機器使用の承認が先方都合で下りず待機
4.リラックス!(Relax)
これで完了! メールに適切な処理をし終えた状態だ。アクション項目が完了し、アーカイブに保存(あとで検索できる)、なんらかの参照フォルダーに移動、または削除がなされている。
例:チームメンバーからのプロジェクトの完了報告
■「メール整理」をスケジュールに組み込む
ここで示すシステムに切り替えるには、一度だけ初期設定をする必要がある。まず、受信トレイにある処理が必要で未対応のメールをすべて「要返信」「読むだけ」「あとで確認」のどれかのフォルダー/ラベルに振り分ける。
その後、残りのメールは一気にアーカイブするか削除する。これらのアクションが必要でないメールは、受信トレイに残しておかない。
毎日決まった時間(私は朝がいいと思う)に、受信トレイのメールを整理し、新着のメールをこれら4つのアクションに振り分ける。Gmailの場合には、後続のメールに自動的に移動する「自動表示」機能やキーボードショートカットを活用してすばやく処理できる。
この時間はメールを仕分けるための時間と考え、もし返信するなら、3分以内に終わるメールだけに返信する。この仕分け作業にかかる時間は、あらかじめ1日のスケジュールに組み込んでおこう。
■「受信トレイゼロ」を維持することが重要
受信トレイの中身を「洗濯カゴ」に空けるアクションを私は「受信トレイゼロ」(乾燥機が空の状態)と呼んでいる。すべてのメールが取り出され、仕分けされた状態だ。これで、それぞれのメールに対して何をすべきかが明確になり、「未来の自分」をサポートすることができる。
メールを開いたのに再び未読に戻してしまったら、あとでそのメールを再び開いて扱いを判断しなければならないため、「未来の自分」を苛立たせることになる。エネルギーポイントの無駄遣いでもある。「ええと、このメールは開いたっけ?」「返信したかな?」「何をすべきだったっけ?」と迷ってしまい、結局同じメールを何度も開く羽目になる。
「受信トレイゼロ」を達成したら、1日のなかで時間を確保し、「洗濯カゴ」を個別に処理する。このとき、各カゴの中身に対して何をすべきかだけを考える。たとえば、「要返信」カゴにあるメールだけに集中し、ほかのことはすべて無視し、返信のみをおこなう。メールを読むためにスケジュールした時間では、読むべきメールだけに集中する。
受信トレイには、最後に仕分けした時点以降に届いた新着メールだけが入っているはずだ。1日に2〜4回ほど追加で仕分けし、「受信トレイゼロ」の状態の維持を心がける。
メールにせよ洗濯物にせよ、「カゴ」に分けることで一括処理の恩恵が得られる。同じ種類の処理をまとめれば、作業の流れができて効率が高まり、使うエネルギーポイントも少なくて済む。シャツを5枚連続で畳むと、慣れてきてどんどん手際がよくなる。
メールについても同じで、返信するなら返信する、読むなら読む、の作業を5通連続でおこなうほうが、1日のバラバラの時間帯にぽつぽつと1通ずつ処理するよりも、集中力が高まり、効率もアップする。
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時間とエネルギーのマネジメント方法を上級管理職にコーチングしている。5万人を超える社員が読む、生産性に関するニュースレターを毎週発行。13年にわたって社に籍を置き、営業、プロダクト・オペレーション、イベント・プランニングに携わったのち現職に。ノースカロライナ大学チャペルヒル校で経営管理学を専攻し理学士号を取得。夫と3人の子どもとともにノースカロライナ州シャーロットに住む。著書に『Google流 生産性がみるみる上がる 「働く時間」の使い方』(ハーパーコリンズ・ジャパン)がある。
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(グーグル社エグゼクティブ・プロダクティビティ・アドバイザー ローラ・メイ・マーティン)
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