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何歳からプログラミングを学んでも遅くはない…仕事で「意外と使える場面」と「社会人ができる最初の一歩」

プレジデントオンライン / 2024年12月26日 16時15分

※写真はイメージです - 写真=iStock.com/mapo

今からプログラミングを学ぶのは手遅れなのか。麗澤大学工学部教授として統計学やデータ分析を学生に教えており、教科書『文系のためのデータリテラシー』の共著もある宗健さんは「プログラミングを使うことで効率化できるエクセルのデータ処理は意外と多い。しかも、学ぶためのハードルは低くなっている」という――。

■プログラミング=手順を考えること

「プログラミング」と聞けば、パソコンに向かって難しそうな英語のコマンドをひたすら打ち込んでいる、というのが普通の人のイメージだろう。

実際、銀行のオンラインシステムや大規模なウェブサイトを動かすためのプログラムを書く、という狭い意味でのプログラミングのイメージはその通りで、ある程度の期間、学習して訓練を積まなければそうした仕事をこなすことはできない。

ただし、「プログラミング」という意味を広く捉えれば、アルゴリズム=手順を考える、ということであり、例えば、冷蔵庫の中身を見て家族の夕食のメニューや段取りを考えることや、旅行の日程を考えることもプログラミングの一種だと言える。

実際、子ども向けのプログラミング教室でよく使われている「マイクラ=マインクラフト」を使ったプログラミングでは、英語のコードは一切書かずに、パソコンの画面上でScratch(スクラッチ)と呼ばれる、命令が書かれたブロックを組み合わせていくだけでプログラムを動かせるようになっている。

また、パソコンを使わないボードゲーム形式のプログラミング教材もあるようで、プログラミングとは、手順を考えることだ、ということがよくわかる。

■小中高でプログラミング教育が必修化

最近では、科学(Science)、技術(Technology)、工学(Engineering)、数学(Mathematics)の頭文字を取ったSTEM教育と呼ばれる教育方法がグローバル化したIT社会では必要だと言われるようになっている。

そのためSTEM教育の一環として、小学校では2020年度から、中学校では2021年度から、高校では2022年度からプログラミング教育が必修化されている。

ただ、小学校からパソコンでのプログラミングが必修化されたわけではなく、小学校では算数・社会・理科・音楽などの各科目内に組み込まれる形で行われ、広義のプログラミングがアルゴリズム=手順を考えることを意味するように、「論理的思考能力を身につけること」を目的としている。

そして、小学校の算数の授業では、前述のScratchを使った授業も行われているようだ。

中学校では、技術の授業に組み込まれていることが多いようで、フローチャートを使ったアルゴリズムを学んだりしているようだが、実際にパソコンでプログラムを書くことはあまりないようだ。そして、高校ではパソコンで、HTML、JavaScript、python等のプログラミング言語を使ってコードを書く授業が行われている。

2022年に必修化された高校の情報Iは、2025年度の共通テストに新たな科目として取り入れられた。どのような問題が出て、どの程度の得点率になるか注目されている。

■実はパソコンを仕事で使っている人は多くはない

小中学校でプログラミング教育が必修化されたといっても、世の中の多くの人にとっては、日常的な仕事でプログラミングの必要性を実感することは少ないだろう。

総務省の2023年の「通信利用動向調査」によれば、個人がパソコンでインターネットを利用している割合は全年齢で47.4%に過ぎない。

一方、2024年3月の内閣府の消費動向調査(総世帯:主要耐久消費財の普及・保有状況)によれば、パソコンの保有状況は全年齢総世帯で70%となっているから、家には親や配偶者が使っているパソコンがあるが、自分はそのパソコンは使わない、という人がかなり多いということになる。

家にあるパソコンを使わないということは、仕事でもパソコンを使っていないことも多いと思われ、当然、仕事としてのプログラミングができるはずがない。

現状は、仕事にプログラミングが必要かどうかとは関係がなく、そもそも仕事でパソコンを使っている人が多数派というわけではないのだ。

会議でパソコンを使用する人
写真=iStock.com/SARINYAPINNGAM
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/SARINYAPINNGAM

■Excelのデータ処理はある程度自動化できる

とはいえ、パソコンを仕事で使っている人が多数派ではないとしても、プログラミングが必要ない、という話ではもちろんない。

ただし、プログラミングを仕事で使うためには、三つの大きな問題がある。

一つ目は、どんな場面でプログラミングを使えばいいのか分からない、という問題で、二つ目は、どんなプログラミング言語・環境を使えばいいか、という問題、三つ目は、そのプログラミング言語をどう学び、環境をどう構築するか、という問題だ。

一つ目のプログラミングを使う場面だが、多くの企業や組織ではWindowsが標準のパソコンであり、データの集計や整理にはMicrosoftのExcelを使うことがほとんどだろう。

そして、Excelの手作業で行っているデータコピーや、データの整形、突合といった処理は多くの場合、比較的簡単にプログラミングである程度、自動化できる。

例えば、複数の営業所から毎日上がってくるExcelの営業日報から、数字を拾って全体の集計表を作成する、といった作業や、Excelにある何千人もの顧客リストのスペースで区切られた姓名を別々のセルにそれぞれ格納するといった作業、学校の先生が、小テストの点数表と生徒のリストを一つのExcelファイルにまとめるといった作業、といったものがプログラミングの対象になる。

こうしたExcelを使ったデータ処理は、意外と多い。

■ExcelのVBAなら今すぐ始められる

二つ目のプログラミング言語・環境は、普通の人はExcelのVBAを使うのが一番始めやすいだろう。

多くの人は気づいていないが、ExcelにはVBA(Visual Basic for Applications)というプログラミング言語が内蔵されている。

ただし、Microsoftの意図は分からないが、標準の設定ではプログラミング機能が使えないようになっている。

Excelのプログラミング機能を使えるようにするのは簡単で、Excelのメニューから【ファイル>オプション>リボンのユーザー設定】の順にクリックしていき、右側に表示される選択肢の中から「開発」という項目にチェックを入れれば開発タブが表示されるようになる。

次は、メニューから【開発>Visual Basic】の順にクリックしていくとVBA画面が開き、開かれたVBA画面のメニューの【挿入>標準モジュール】の順にクリックしていくと、プログラミングが開始できる。

Excel VBAのプログラムは、Excelファイルをマクロ有効ブックであるxlsm形式で保存すれば、Excelファイルの中の一部として扱われるので、特別な保存処理は必要ないから、比較的簡単に使える。

パソコンを使用する人たち
写真=iStock.com/metamorworks
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/metamorworks

■生成系AIを活用すれば簡単に実行できる

三つ目のプログラミング言語をどう学ぶかだが、ChatGPTをはじめとする生成系AIの進歩はすさまじく、適切な日本語で指示すればExcelのVBAプログラムをすぐ動く形で書いてくれる。

時間があれば、以下の手順を試してほしい。

①Excelを立ち上げ、空白のブックを開く。

②上記の手順でプログラミングできるように設定して、VBAの標準モジュールのプログラミング画面を開く。

③ExcelファイルのA1セル(一番左上のセル)に自分の姓名を半角スペースで区切って入力する(「宗 健」など。ただし全角スペースだと動作しないことがあるので注意)。

④ChatGPTやGeminiのような生成系AIを立ち上げ、「今開いているExcelファイルのA1セルの文字列に含まれる半角スペースの前の文字列をB1セルに、後の文字列をC1セルに書き込むVBAを書いて」と入力すれば、VBAのプログラムが出力される。

⑤出力されたプログラムをコピーしてVBAの標準モジュールの画面に貼り付け、【実行>Sub/ユーザーフォームの実行】から実行すると、姓名が分離される。

全ての場合で、VBAが動くとは限らないが、動いた人もいるはずだ。

生成系AIによって、プログラムのことを何も知らなくても、プログラミングが実行できるようになったが、この変化はものすごく大きな変化だ。

■ひとつプログラミング言語を身につければ応用が利く

日本人の平均年齢は80歳を超えていて、多くの人は50年くらい働き続けることになる。50年も働いていると、何十年も前に大学で学んだことは陳腐化してしまうことも多い。

プログラミングにもはやり廃りがあり、新しいプログラミング言語を覚えなければならないこともある。

そもそもコンピュータの発祥はアメリカなので、プログラミング言語のほとんどは英語がベースになっている。この時点で英語が母語ではない人は不利だが、英語とはいってもシンプルな単語と文法しかプログラミングでは使わないので、そんなに難しくはない。

そして、python、VBAやCといったプログラミング言語の基本構造は同じで、どのプログラミング言語でも、変数を使い、順次実行・条件分岐・繰り返し処理の3つを組み合わせているという基本的な枠組みは変わらない。いわば方言程度の違いしかないわけだ。

IT関連の技術は日進月歩だと言われているが、プログラミング関連に関しては、方言程度の違いしかないから、なにかひとつプログラミング言語を身につけていれば、やったことがないプログラミング言語や、新しく出てきたプログラミング等にもある程度対応できる。

■組織のメンバーの何人かで一斉に始めれば仕事の効率は上がる

それでも、プログラミングは最初のハードルが高いため使える人が少ないが、組織のメンバーの何人かが、一斉にExcel VBAのようなとっつきやすいものから始めて、仕事に少しずつプログラミングを使うようになれば、組織の仕事の効率も、プログラミングスキルも一気に高まっていく。

何歳であってもそうしてプログラミングを始めた人のうち何人かは、pythonなどのより高度なプログラミング技術に興味を持つようになり、学び始め、それが組織の地力を上げていく。

そうした草の根的な取り組みをどう始めるのかが、スキルが無ければ解雇できるジョブ型雇用ではなく、社員を育成していかなければならないメンバーシップ型雇用の日本企業の大きな課題だ。

しかし、今では、生成系AIに指示すればプログラムを書いてくれ、しかも1行ずつ解説してくれるからプログラムを学ぶハードルはかなり低くなっている。

YouTubeにも、大量のプログラミングに関する動画が無料で掲載されているから、学ぶための環境は整っている。

人生100年時代を生き抜くには、今必要なことを自ら学ぶ力があればなんの心配もいらない。

そして、自ら学ぶための環境は、おそらくこれからもどんどん良くなっていく。この素晴らしい環境を活かさない手はないだろう。

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宗 健(そう・たけし)
麗澤大学工学部教授
博士(社会工学・筑波大学)・ITストラテジスト。1965年北九州市生まれ。九州工業大学機械工学科卒業後、リクルート入社。通信事業のエンジニア・マネジャ、ISIZE住宅情報・FoRent.jp編集長等を経て、リクルートフォレントインシュアを設立し代表取締役社長に就任。リクルート住まい研究所長、大東建託賃貸未来研究所長・AI-DXラボ所長を経て、23年4月より麗澤大学教授、AI・ビジネス研究センター長。専門分野は都市計画・組織マネジメント・システム開発。

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(麗澤大学工学部教授 宗 健)

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