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糖質が一番多いのは栗きんとんでも黒豆でもない…糖尿病専門医が「正月に食べ過ぎないで」という2つの食品

プレジデントオンライン / 2025年1月1日 7時15分

※写真はイメージです - 写真=iStock.com/Promo_Link

近頃は購入して食べることも多い「おせち料理」。味付けが濃いイメージがあるが、健康への影響はどうなのか。糖尿病専門の内科医として患者に食事指導をしている矢野宏行さんは「栗きんとんなど、糖質の高い食材に砂糖を使った料理が多く、食べる量には注意。しかし、正月にはおせちよりもリスクの高い日本人の大好物がある」という――。

■年明けのクリニックでは血糖値の上がった患者が増える

糖尿病専門医にとって、お正月休みは1年で最も注意すべき時期。私のクリニックの患者さんたちにも、年末近くになると「おせち料理などの食べ過ぎに注意してください」とアドバスしています。患者さんの方から「おせちを食べてもいいですか?」と相談されることもありますね。

それでも、年明けの1月から2月上旬には、通常より血糖値が上がってしまう患者さんが、かなりの割合で増えます。年末年始の無茶がデータに出てくるのがその時期で、血糖の平均値であるHbA1cは、糖分の高いものを摂取しつづける生活になり、少しタイムラグがあってから上がってくるのです。

近年、中高年だけではなく、20代や30代でも糖尿病になってしまう人も増えています。糖尿病の人にはもちろん、その予備軍、健康な人まで、お正月の食事には注意してほしいですね。

■おせち料理の糖質は高いが、食べるのがNGなわけではない

おせちはもともと保存食ですから、砂糖や塩をふんだんに使って腐らないように工夫されています。ゆえに、どうしても糖分と塩分が高い。例えば、栗きんとんは、もともと栗という糖質の高い素材に砂糖を混ぜているわけですから、大さじ1杯あたりの糖分は20グラムほどと、かなり高め。黒豆の甘煮も同じように糖質が高い。また、糖尿病の患者さんには、そういった甘い料理が好きな人が多いのです。

ただ、私は既に糖尿病になってしまった人に対しても、「これを食べてはいけない」という厳しい食事制限はしません。普段の食事にしても、おせちにしても、いずれかのメニューを「まったく食べない」というのは無理な話ですよね。かえって「食べたい」という飢餓感を高めることにもなりかねません。だから、どの料理の糖質が高いかという知識を得た上で、食べる量を調節してもらえればと思います。

たしかに、おせち料理の栗きんとんや黒豆は糖質が高めですが、それをどんぶり1杯食べるわけではないでしょう。お重や皿に盛り合わせた分だけ少し、というのなら問題はないと思います。目安としては、1食につき大さじ1杯ぐらいまででしょうか。

■甘くない「おもち」でも、糖質は栗きんとん並みに高い

それよりも注意してほしいのは、一見、甘くはない主食類。特に、お正月のメインとなりがちな「おもち」の食べ過ぎは避けてください。

もちの原材料は、もち米です。これは白米より糖質が多い。切り餅1個で炭水化物が約25グラムありますが、お正月は一回の食事で2個、3個と食べる場合も多いでしょう。さらに「砂糖しょうゆもち」などにすれば、糖分も塩分もアップします。

『あすけん』PCサイトのカロリー計算サンプル
『あすけん』PCサイトのカロリー計算サンプル

お雑煮に小さめのおもちが入っているぐらいなら、そんなに気にすることはありませんが、私のクリニックでは「おもちは1日1個か2個ぐらいにとどめて」とアドバイスしています。

網の上で焼かれる餅
写真=iStock.com/Athena345T
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/Athena345T

同様に、お正月は「ちらし寿司」を食べることも多いですが、これも酢飯ですから、白米に砂糖を混ぜてある。酢飯100グラム(茶碗1杯ほど)に炭水化物は38グラム含まれています。

私のクリニックの患者さん、約30人を対象にして炭水化物の摂取量と血糖値の関連性を調べたデータでは、「1食当たり糖質40グラム程度であれば、目立った高血糖は起こらない」ことが分かりました。

おせちなどのおかずにも、1食当たり平均10~20グラム前後の糖質が含まれています。したがって、特に糖尿病の人は、主食の糖質量は1食当たり20グラム前後を目安に抑えるように心がけてください。おもち1個が適量というのが、わかっていただけると思います。

【図表1】主なおせち料理の栄養成分表(一部)
AI食事管理アプリ『あすけん』の管理栄養士監修のもと編集部作成

■「おせちとおもちは元日だけ」「食べる順番を工夫」は有効

このように、おせち料理はもちろん、主食も糖分が高めになりがちなので、おもちや寿司をメインにするのはなるべく短い期間にしておいたほうがいいですね、元日にお正月気分を味わったら、2日目、3日目からは通常の食事に戻すというのも、リスク回避のためにはいいと思います。

食べる順番でも、ひと工夫できます。私は「カーボラスト」といって、食事のときは、サラダや肉・魚などのタンパク質から食べ始め、最後にご飯などの炭水化物を食べるということを勧めています。そうすることで、同じ食事内容でも、血糖値の上昇を抑えられ、食べているうちに自然と満腹感を得られるので、無理なく炭水化物を食べる量を減らせます。

■「祝い酒」はできればハイボールか焼酎で

朝昼夜の食事以外でも気をつけたほうがいいものが、いくつかあります。まずは、アルコール。お正月は家族や仲間と乾杯したいものでしょう。それも少量なら許容範囲ですが、ビールや日本酒などを大量に飲むのは避けてください。

ただでさえ、糖質の高いおせち料理をつまみながら糖質の高いお酒を飲む。そして、いい気持ちになってごろ寝してしまう。これはもうフルコースというか、血糖値を上げるためにゲームで言うコンボ(連続技)を決めているようなものです。

ビールよりはウィスキーで作ったハイボール、日本酒よりは焼酎という糖質が低めのお酒にするのも、ひとつの手です。ワインなら赤より白の方がベター。

新年を祝って乾杯をする家族
写真=iStock.com/visualspace
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/visualspace

■「おせち料理×ビール×ごろ寝」のフルコースはリスクを高める

しかし、問題は、お酒を飲むと、その後はついついその場で横になってしまう、ソファなどでうたた寝して動かない……となりがちなこと。お正月に限らず、食後は30分以内に運動をすると、血糖値の上昇を抑えられます。おせちやおもちを食べたら、その後は初詣に行って神社の中を歩く、近所に散歩に出掛けるなど、意識的に体を動かして下さい。

外に出掛けるのがおっくうなら、家の中で簡単な運動をするのもいいと思います。私のYouTubeチャンネルでも紹介していますが、15分ぐらいの体操で十分。エアプルダウン、スロースクワット、大股歩きのウォーキング、踏み台昇降などがおすすめです。

■「こたつでミカン」が昔とちがって危険になってきたワケ

もうひとつ、注意すべき食べ物は、ミカンです。昔からお正月はこたつに入って、テレビを見ながらミカンを食べる……というイメージがありますが、昭和の頃、おじいちゃんおばあちゃんの家の庭に植えられていたミカンの木の実と、現在、スーパーなどで販売されているミカンは別物。最近の果物は甘くないと売れないので、糖分が高くなるように品種改良され、栽培されているそうです。

こたつの上に置かれたミカン
写真=iStock.com/c11yg
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/c11yg

ミカン1個で糖質は約10グラムもあるので、「生の果物ならヘルシーだろう」と思って次々に食べないこと。果物に入っている「果糖」こそ、内臓脂肪の原因になりやすい物質で、そこから脂肪肝になると、それが原因で血糖値も上がってしまいます。ミカンなら1日2個ぐらいが適量だと思います。

また、ミカンだけでなく、果物全般、果物のジュース、ドライフルーツなどにも気をつけてください。

こうやってアドバイスしていくと、「お正月に食べるものがないじゃないか」と思われるかもしれません。繰り返しになりますが、どの食品も食べてはいけないわけではなく、摂る量の問題。そして、もし適量を超えて食べすぎてしまったら、食後に運動をすればいい。そんなふうに考えて、あまりがんじがらめにならず、楽しいお正月を迎えてください。

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矢野 宏行(やの・ひろゆき)
糖尿病専門医
やのメディカルクリニック勝どき院長。医学博士。1981年生まれ。2006年に日本医科大学卒業後、同大学附属病院に勤務。その後、国立国際医療研究センター研究所の糖尿病研究センターで糖尿病について研究をする。2023年、やのメディカルクリニック勝どきを開院。「Dr.ゆきなり」としてYouTubeでも情報発信をしている。著書に『ミスター血糖値が教える 7日間でひとりでに血糖値が下がるすごい方法』(アスコム)、『自分でできる! 薬に頼らない糖尿病の大正解』(ライフサイエンス出版)がある。

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(糖尿病専門医 矢野 宏行)

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