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「第二新卒」は転職業界が作り出した罠である…絶対に選んではいけない「地雷求人」に書いてある"ヤバい文言"

プレジデントオンライン / 2025年1月15日 8時15分

※写真はイメージです - 写真=iStock.com/koumaru

新卒で入社した会社が気に入らない場合、すぐに辞めてしまっていいのか。転職ライターの安斎響市さんは「新卒は3年間は辞めないほうがいい。『第二新卒』というワードは転職業界がマーケティングのために作り出した幻想に過ぎない」という――。

※本稿は、安斎響市『転職する勇気 「強み」がない人のための転職活動攻略マニュアル』(扶桑社)の一部を再編集したものです。

以下は、新卒4年目で転職を考える田中君(26)と、AIアドバイザー「転職デビル」の会話の一コマである。

■新卒入社から3年は辞めないほうがいい

「何か、他に質問はあるかい?」

「転職するなら、やっぱり早いほうがいいのかな? 僕はもう、今の仕事は嫌になっちゃって一刻も早く辞めたいんだけど、良い転職先が見つからないなら数年は粘ったほうがいいのかも……とも思って、悶々としているんだ」

「一般的に言えば、転職のタイミングは早すぎないほうがいいね」

「早すぎるって?」

「具体的に言うと、新卒入社から3年はなるべく辞めないほうがいい」

「なんで?」

「例えば、新卒入社1年目で辞めるとするでしょ。全然見つからないよ、次の仕事。実際に探してみれば分かるけど。どこに行っても“仕事が続かない人”認定されて、企業から完全に避けられる。田中君が気にしてる『強み』がない以前に、『弱み』がありすぎて絶望的なんだ」

「何となく、それくらいは僕でも分かるよ。強みとか何とか以前に、短期離職の経歴が大きな減点要素になっちゃうって話だよね」

■外部からは「会社がヤバいのかその人がヤバいのか」がわからない

「そうそう。その会社で何があったにせよ、入社1年目で仕事を辞める人は評価されづらいってこと。もちろん、世の中にはいろんな会社があるからさ、とんでもないブラック企業に入っちゃって辞めるしかないって人も現実的にいると思うよ。でもさ、その会社がどのくらいブラックかは外からは分からないからね。

企業の面接官からすると、その会社がヤバいのか、辞めた人がヤバいのかは判断がつかない。だから、とりあえずそういう人は雇わないほうが無難っていう結論になる。仕方がないよね」

「でも、いったいなんで3年なの? 『石の上にも三年』ってこと?」

「違う。私は転職デビル。悪魔だぞ? 『石の上にも三年』なんて、そんなくだらない老害みたいな話を信じてると思うかい? そうじゃなくて、もっと現実的な話さ」

■中途採用の応募条件はほとんどが「3年単位」

「現実的な話?」

「基本的に、中途採用の求人はすべて『業界経験年数3年以上』『類似職種の経験5年以上』みたいな応募条件がある。そして、そのほとんどは最低でも3年単位なんだ。『経験年数1年以上』って求人はあんまり見ない。さすがに、1年じゃ経験者とは呼べないしね」

「だから、3年ってこと?」

「ただね、この話には裏があって……」

「なんだよ、怖いな」

「新卒入社から3年間我慢すれば転職の道が拓けるのかというと、そんなこともないんだ」

「えー! さっきは、『新卒入社から3年経てばいい』って言ってなかった?」

「違うよ。田中君は適当だなぁ。『新卒入社から3年間は転職しないほうが良い』って言っただけ。別に、3年経ったら即OKってわけじゃないよ」

「どういうこと?」

「つまりさ、新卒入社から3年以内の転職っていうのは、短期離職のマイナスが大きすぎてまともに雇ってもらえないから不利だよねっていう『減点要素の話』なんだ。新卒4年目になったら、その減点が一応なくなるってだけで、別に加点されるわけじゃない」

■4年目以上でも実務経験年数が足りなければ無意味

「なるほど。減点なしでゼロになるだけで、別にプラスじゃないってこと?」

「そう、そんな感じ。もちろん、新卒4年目でも5年目でも減点する会社はあるよ。どの程度の減点をするかは、その会社次第。それに、さっきも言った通り、中途採用の募集条件は『○○経験年数3年以上』みたいな条件が付きものだから、それを満たさないなら4年目でも5年目でもあまり関係はない」

「新卒何年目っていう年次自体が意味を持つわけじゃないんだね」

「その通り。たまに、『頑張って4年目まで耐えよう』みたいなマインドの人がいるんだけど、完全に間違ってるね。別に、年度をまたげば何かが変わるわけじゃないんだ。要するに実務経験年数が企業の応募条件に合致していなければ、何年目だろうと評価は低いままだよ。仮に3年我慢しても、それだけだとあまり意味はない」

「じゃあ、会社に3年いたとしても、ジョブローテーションで毎年コロコロ仕事内容が変わっていたら、個々の職種経験年数は3年未満だからダメ?」

「そう。それじゃダメ」

「うーん……。僕は今、入社4年目だけど、1年目の途中までは新入社員研修と工場実習があって、今の営業の経験は3年未満だから、もうちょっと粘って頑張ったほうがいいってこと?」

「理想を言えば、そうなるね」

「はぁぁぁぁぁぁぁぁぁ。そうなのか……。僕はこれ以上、耐えられる気がしないよ」

■「第二新卒」は転職業界のマーケティング

「でもさ、第二新卒の採用枠も、よく見るよね? 20代の若いうちに、第二新卒カードを使ったほうがいいってこともない?」

「田中君、それ、ダマされてるよ」

「え? なんで⁉」

「第二新卒なんてのは、人材業界が作り出したマーケティングのマジックワードに過ぎないんだよ。例えるなら、バレンタインデーにチョコを贈る習慣が、チョコレート会社がでっち上げた販促キャンペーンなのと同じ」

「第二新卒が、バレンタインのチョコ?」

「とにかく何でもいいから『バレンタインデーには大切な人にチョコレートを贈らなければならない』って既成事実を作っちゃえばさ、毎年2月にチョコレート菓子が大量に売れるだろ? それと同じで、実体のない『第二新卒』なる概念を勝手に生み出してしまえば、『新卒の就活では失敗したけど、第二新卒でリベンジしよう』みたいな、アホな若者を引っかけることができるからね」

「なんだかひどい言い方だなぁ」

「本当のことだから仕方ないだろ。そもそもの話、新卒入社で応募できる企業と、第二新卒枠で応募できる企業は、量も質も全然違う。まるで新卒のチャンスがもう一度あるみたいな幻想を抱かせるのは、極めて悪質なビジネスのやり方だと思うな」

「転職デビル、悪魔なのにそういう感情があるんだね」

「当たり前だろ? 私は悪魔である以前に、人材系企業勤務なんだぞ?」

「勤務って……いや、まあそうかもしれないけど」

たまに、よく分からなくなる。いったい、僕は、誰と会話をしているのか。スマホ画面の中で喋り続けるこのAIアバターは、悪魔と言うよりは「クマのゆるキャラ」だ。

履歴書と初心者マーク
写真=iStock.com/years
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/years

■「ポテンシャル採用」「学歴不問」という言葉の意味

「とにかくさ、第二新卒カードなんて最初から存在しないんだよ。新卒入社のチャンスは一度きり。一度就職したら、もう使えないよ。それは、都合よく『第二新卒枠です』って言って若い人を集めたいだけ」

「ポテンシャル採用や、学歴経験不問っていって募集してる仕事も?」

「全部が全部ダメだとは言わないけど、高確率で地雷だね」

■「未経験者歓迎=経験者は辞めました」という意味

「地雷って、どういう意味?」

「言っただろ? 中途採用の募集は基本的に『関連する実務経験3年』などの条件があるって。ポテンシャル採用とか言うけどさ、実際、意味分かんねーじゃん。『ポテンシャル採用』って何だよ? 要するにそれ、経験者を募集しても誰も来てくれないだけなんだよね。給料が低かったり、ブラック過ぎてみんなすぐ辞めちゃったりして」

「えぇ……」

安斎響市『転職する勇気 「強み」がない人のための転職活動攻略マニュアル』(扶桑社)
安斎響市『転職する勇気 「強み」がない人のための転職活動攻略マニュアル』(扶桑社)

「『未経験者歓迎!』って要するに、『経験者はすでに全員辞めました』って意味だからね」

「怖……」

「そういうもんだと思っておいたほうがいいよ。ごく稀に良い職場もあるとは思うけど、ごく稀だね。例えば、100%経験者じゃなくても部分的に経験があればいい、という条件なら理解できる。『同一職種の経験者であれば、業界未経験でも歓迎』とかね。でも、丸っきり未経験で完全にスキルゼロの人をわざわざ歓迎するのは、さすがに何かウラがあると思っておくべきだよ」

僕は、ますます転職が怖くなってきていた。転職デビルは、妙にとぼけた顔をしているが、たしかに悪魔のような内容をズバズバと毒舌で言う、不思議なクマだった。

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安斎 響市(あんざい・きょういち)
転職ライター
1987年生まれ。日系大手メーカー海外営業部、外資系メーカーなどを経て、2020年より外資系大手IT企業のシニアマネージャー。「転職とキャリア」をテーマに、ブログ、Twitterなどで情報発信を続け、日経BP『日経トレンディ』、東洋経済新報社「東洋経済オンライン」、マネーフォワード「MONEY PLUS」など、多くのメディアで取り上げられている。著書に『私にも転職って、できますか?~はじめての転職活動のときに知りたかった本音の話~』(ソーテック社)、『転職の最終兵器 未来を変える転職のための21のヒント』(かんき出版)などがある。

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(転職ライター 安斎 響市)

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