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だから東大を卒業してもバカな医者ばかり…精神科医・和田秀樹「本当に賢い人が共通してやっていること」

プレジデントオンライン / 2025年1月24日 15時15分

※写真はイメージです - 写真=iStock.com/witsarut sakorn

本当に頭のいい人の特徴は何か。精神科医の和田秀樹さんは「私の知り合いには、東大を卒業した賢くない医者がたくさんいる。医者であれ、弁護士であれ、その肩書を手に入れた時点では賢くて優秀だったかもしれないが、今でも優秀であるとは限らない。本当の意味で賢い人には共通点がある」という――。

※本稿は、和田秀樹『仕事も対人関係も落ち着けば、うまくいく』(クロスメディア・パブリッシング)の一部を再編集したものです。

■数学なんて、考えたって、どうせわからない

「捨てる神あれば、拾う神あり」と考える

自分が正しいと思って行動したことでも、人の受け取り方は千差万別です。

きちんと評価してくれることもあれば、予想もしなかった角度から批判されて、ボコボコにされることもあります。

人に合わせようとしても、自分を見失って、焦りや不安が増すばかりですから、同じことをしても、「評価」や「見方」は人によって違う……と考えることが大切です。

大事なポイントは、「捨てる神あれば、拾う神あり」という視点を持つことです。

私がそう考えるようになったきっかけは、1987年に『受験は要領』という受験生向けの本を出版したことにあります。

この本は、「数学なんて、考えたって、どうせわからない」という自分の体験を元にして、「数学は自力で解かず、解答を暗記せよ」とか、「英単語を覚えるより、英短文を丸暗記せよ」など、実践的なテクニックを紹介したものです。

私からすれば、ごく当たり前のことを書いたつもりですから、「効果的な勉強法を教えてくれて、ありがとう」という反響が来るものと思っていました。

■人様の評価が悪い方が得することもある

実際に、多くの受験生からは「おかげさまで、東大に合格できました」とか、「無理だと思っていた慶応の医学部に一発合格しました」という喜びや感謝の声が届きましたが、それと同じくらいの大非難を浴びることになりました。

「小手先の受験テクニックを教えるとは、けしからん」と学校の先生や教育関係者から、一斉に非難の声が上がったのです。

すでに40年近く前のことですが、この経験を通して、同じことに対する評価は、それぞれみんな違う……ということを痛感しました。

それと同時に、教育関係者の非難が集中したおかげで、本が大ヒットしましたから、人様の評価が悪い方が得することもある……という事実を知りました。

人が褒ほめたり、貶(けな)したりすることを「毀誉褒貶(きよほうへん)」といいますが、自分が何らかの行動を起こす場合には、どんなことでも、毀誉褒貶があることを前提として考えておく必要があります。

ものすごく褒める人と、ものすごく腐す人の両方いる方が「面白い」と考えることができれば、前向きな気持ちで物ごとに取り組むことができます。

褒められたら素直に喜び、腐されたら改善点を検討してみればいいのです。

その繰り返しが、自分のスキルとなって、自信を持つことにつながります。

■その期待の本質に目を向けられるか

人の期待に「応える」必要はない

周囲の人が自分に「期待」していることがわかると、肩にチカラが入って、緊張したり、焦る気持ちになります。

日本人は、周囲の期待に応えるのは「当然のこと」と考えがちですが、人の期待というのは、意外と相手の勝手な都合だったりします。

人の期待にすべて応える必要はない……と考えることも、心を平穏に保つための有力な選択肢となります。

行動心理学では、人から期待されると、相手の気持ちに応えようとする人間の心理を「ピグマリオン効果」と呼んでいます。

ピグマリオン効果とは、人から期待されると、「相手が自分を信頼してくれているのだから、何とかして、その気持ちに応えたい」というモチベーションが生まれて、意欲的に物ごとに取り組める……という心理効果を指します。

握手をするビジネスマン
写真=iStock.com/Morakot Kawinchan
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/Morakot Kawinchan

人の期待に応えるというのは、人間の本能的な心理ですが、無理をして期待に応え続けてしまうと、心身のバランスを崩すことになります。

精神科医としては、本能的に期待に応えてしまうのではなく、その期待の本質に目を向けることが大切だと考えています。

最初に検討する必要があるのは、その期待は「本当に正しいのか?」とか、「自分がやらなければいけないことなのか?」を考えてみることです。

■ケースバイケースで取捨選択を

上司から、「この仕事は今日中に頼むね」と言われたら、その理由をリサーチしてみることです。

納期が迫っているのならば、素直に従うのが賢明ですが、「昨夜、飲みすぎたから早く帰って寝たい」のであれば、スルーするという選択肢が生まれます。

上司の期待に応えなくても、会社をクビにはなりませんが、出世には影響します。

自分の行動は、出世をモノサシにするかどうかで判断することができます。

相手が夫や妻などのパートナーであれば、相手の期待に応えないと、離婚を切り出される可能性があります。

離婚したくなければ、どうしたら期待に応えられるかを考え始め、それでもいいならば、無視することもできます。

少し極端な例を挙げましたが、大事なのは、すべての期待に無条件に応えようとするのではなく、それに応えなかったら、どんなことが想定されるのかを見極めて、ケースバイケースで取捨選択することにあります。

「A」と「B」の文字が書かれたブロック
写真=iStock.com/Andrei Askirka
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/Andrei Askirka

■物を考える習慣を持っているかどうか

知識ではなく「考える力」を鍛える

東大や京大を出ているお笑いタレントを「インテリ芸人」と呼んで珍重するなど、日本人は人の学歴に過剰反応する傾向がありますが、学歴コンプレックスというのは、自分と他人を比べて劣等感を感じるだけのことですから、そこから何かが生まれることはありません。

日本の学校教育は「知識偏重」のため、どうしても知識を重視しがちですが、大事なのは知識の量ではなく、考える量にあります。

私がたくさんの本を出版できるのは、知識が豊富なわけでも、東大を出ているからでもないと思っています。

物を考える習慣を持っているから、他の人と違うことが言えることに尽きると自己分析しています。

自分らしく生きていくためには、「考える力」を鍛えることが不可欠なのです。

考える力とは、「計算する力」と置き換えることができます。

計算する力には、次のような二つがあります。

①「展開」を読む力

この先の可能性を予測して、2手先、3手先の展開を読むことです。

展開を読むことによって、それに応じたソリューションを準備できます。

②「可能性」を読む力

この先の可能性を推理して、幅広い選択肢を考えることです。

選択肢の幅が広がることで、さまざまなケースを想定したソリューションを用意することができます。

この二つを意識することによって、計算の「奥行き」と「幅」を広げることが可能になります。

■「計算高い」といわれる人の共通点

本当に頭のいい人というのは、豊富な知識を持っている人ではなく、きちんと計算ができて、この先の展開や選択肢を正確に読むことで、しっかりとソリューションを整えられる人だと思います。

計算する力を鍛えておかないと、不安や焦りに悩まされることになります。

例えば、会社や官僚などの組織には「派閥争い」というものがあります。

「この人とうまくやっていけば、将来的に出世できるだろう」と考えて、簡単に「この人に付いていきます」などと宣言すると、その先には、さまざまな困難が待ち受けています。

考えられるのは、次のようなリスクです。

・他の派閥の人から敬遠される
・周囲から「私利私欲で動く打算的な人」と見られる
・直接の上司を「裏切った人」と噂になる
・出世のためなら「何でもする人」と軽蔑される
・付いていこうと思った相手が途中で失脚することもある

こうしたリスクを想定して、ソリューションを準備してから動かないと、周りから「計算高い人」といわれます。

計算高い人というのは、自分の利益を優先して、私利私欲で行動する人ではなく、「計算が甘い人」のことです。

先の先まで計算して、周到に根回しをする人であれば、周囲から「あの人は計算高い」と見られる心配はないのです。

■東大を卒業した賢くないたくさんの医者

「自己改造」を繰り返す

失敗したら別のやり方を試すことを含めて、「自己改造」を前向きな気持ちでできる人は、物ごととポジティブに向き合うことができますから、それだけうまくいく確率が高まります。

うまくいく確率が高まれば、成功体験を積み重ねるごとに緊張や焦る気持ちがなくなって、段々と自分の中で自信が芽生えてくることになります。

自己改造とは、自分の考えを曲げたり、否定することではなく、目の前のタスクに対する方法論を「アップデート」することをいいます。

過去の成功体験に縛られることなく、柔軟にやり方を変えていけるから、変化に応じた対策が可能になって、物ごとがうまくいくのです。

日本人には、学歴や肩書だけで、「あの人は賢い」と判断するところがありますが、私はこうした考え方は意味がないと思っています。

医者であれ、弁護士であれ、その人が賢かったのは、その肩書を手に入れた時点のことです。

その当時は優秀だったかもしれませんが、今でも優秀であるとは限りません。

私の知り合いには、東大を卒業した賢くない医者がたくさんいます。

何を基準に賢くないと判断しているのかといえば、最先端医療の勉強をしていないため、考え方が昔のままアップデートされていないからです。

人間にとって大事なのは、「今よりも良くなりたい」と思って、小さな一歩でもいいから、前を向いて歩みを進めることです。

若い人であれば、自己改造のチャンスはいくらでもありますが、「自分を成長させる」という視点を持つことに、年齢は関係ありません。

高い場所から街を眺めるビジネスマン
写真=iStock.com/metamorworks
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/metamorworks

いくつになっても、向上心を持って、自分を変えていける人が、本当の意味で賢い人なのだと思います。

難しく考えるのではなく、自己改革とは、「今よりも、ちょっとだけマシになること」と考えれば、格段にハードルを下げることができます。

■「経験知」を積み重ねる3段階のサイクル

「場数」を踏む

揺れ動かない心を作るためには、「場数」を踏むことが欠かせません。

人前で話すことが苦手ならば、意識的に場数を増やすことで、あがり症を抑えることができます。

こうした効果を、一般的には「場慣れ」と呼んでいますが、その場の雰囲気に慣れてしまえば、自然と緊張や焦りは感じなくなり、落ち着いた気持ちで話をすることができるようになります。

場数を踏むためには、最初の一歩を踏み出す勇気を持つことが肝心ですが、あがり症の人に対して、私は「人生は実験の連続だ」と考えてみましょう……とアドバイスしています。

苦手なことをやる場合でも、「これは実験だ」と考えれば、身構えるのではなく、試すつもりで取り組むことができます。

実験ですから、失敗することもありますが、失敗しても必要以上に落ち込むのではなく、その原因を考えてみることが重要です。

和田秀樹『仕事も対人関係も落ち着けば、うまくいく』(クロスメディア・パブリッシング)
和田秀樹『仕事も対人関係も落ち着けば、うまくいく』(クロスメディア・パブリッシング)

「今回の実験は失敗だったな。失敗の原因は、自分を大きく見せようとして、柄にもなく、自慢話をしたことかもしれないな。次はもっと謙虚な気持ちで話をすれば、みんなに自分の言いたいことが伝わるような気がする……」

こうした経験を積み重ねて、反省点を明確にすることが「自己改革」の本質であり、それが「経験知」となって、自分に自信が持てるようになります。

経験知というのは、場数を踏むだけでは手に入りません。

場数を踏んで、たくさんの失敗を経験し、そこから学んだことを次に活かすことで、初めて自分の能力として身につくものなのです。

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和田 秀樹(わだ・ひでき)
精神科医
1960年、大阪府生まれ。東京大学医学部卒業。精神科医。東京大学医学部附属病院精神神経科助手、アメリカ・カール・メニンガー精神医学校国際フェローを経て、現在、和田秀樹こころと体のクリニック院長。国際医療福祉大学教授(医療福祉学研究科臨床心理学専攻)。一橋大学経済学部非常勤講師(医療経済学)。川崎幸病院精神科顧問。高齢者専門の精神科医として、30年以上にわたって高齢者医療の現場に携わっている。2022年総合ベストセラーに輝いた『80歳の壁』(幻冬舎新書)をはじめ、『70歳が老化の分かれ道』(詩想社新書)、『老いの品格』(PHP新書)、『老後は要領』(幻冬舎)、『不安に負けない気持ちの整理術』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)、『どうせ死ぬんだから 好きなことだけやって寿命を使いきる』(SBクリエイティブ)、『60歳を過ぎたらやめるが勝ち 年をとるほどに幸せになる「しなくていい」暮らし』(主婦と生活社)など著書多数。

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(精神科医 和田 秀樹)

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