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「ちょっと時間もらっていいですか」は絶対許してはいけない…仕事の成果に直結する部下のNG態度

プレジデントオンライン / 2025年1月24日 15時15分

※写真はイメージです - 写真=iStock.com/DNY59

数字に強いチームを作るには何が必要か。ビジネス数学教育家の深沢真太郎さんは「ビジネスで必要な数字センスを身につけるには、たとえば、『部長、ちょっと時間もらっていいですか?』の『ちょっと』という表現を許さず、『1分』と表現することを徹底させるといい」という――。

■数字センスの有無は仕事の成果に直結する

いきなりですが、ひとつ質問です。

数字センスのある人材・組織とは、具体的に何ができる人材・組織なのでしょうか? もしビジネスで必要な数字センスを身につける方法があるとしたら、それはどんなアプローチで実現できるものなのでしょうか?

私はビジネス数学・教育家として活動をしている独立教育者です。私の提唱するビジネス数学とは、数学的に仕事をする人材を育成する教育のこと。つまり数字や論理を合理的に使い、高い生産性を実現できる職業人を増やすことが使命です。

この記事では、データ(数字)を巧みに扱える能力を数字センスと表現することにします。言うまでもなくビジネスにおいて数字センスは無いよりはあったほうが良いスキルです。人材育成の専門家として断言しますが、数字センスの有無は仕事の成果に直結しています。

私はこのエッセンスを経営者や管理職層向けの講演でお話しするようにしています。なぜならこのテーマには多くの誤解と、誰にでも簡単に実践できる本質的な内容が含まれているからです。

■ビッグデータ→統計学→DX

まずは時代背景からお話をします。

DXという言葉が飛び交う現在のビジネス潮流において、データ活用の重要性が再び声高に叫ばれるようになりました。

「再び」と申し上げたのは、時代によってキーワードこそ変わりますが、結局のところ本質的にはずっと同じことが言われ続けているだけだからです。

たとえばかつて、「ビッグデータ」という言葉がトレンドワードだった時代がありました。膨大に蓄積されていくデータをうまく活用していこうという機運が高まり、「ビッグデータの時代だし、ウチの会社も何かできないか」と思った人も多かったのではないでしょうか。

あるいはかつて、「統計学ブーム」がありました。『統計学が最強の学問である』(西内啓/ダイヤモンド社)がベストセラーになり、多くのビジネスパーソンが統計学の書籍やセミナーを求め、今からでも学ぼうという機運が高まりました。

しかし、冷ややかなことを申し上げるようですが、ビッグデータの時代に「何かできないか」と思った人の中で、実際に何かができた人はおそらくほとんどいません。

統計学ブームに乗って勉強しようとした人の多くは、途中で理解することが難しいと挫折してしまい、おそらくそれっきりの人がほとんどです。

結局これらはすべて「データ(数字)をうまく活用して仕事を変えていこう」という考えであることに変わりはありません。時代に関係なく、トレンドワードに踊らされることなく、私たちビジネスパーソンにとって基本中の基本に過ぎないのです。

■「うちは文系出身者が多くて…」という誤解

しかしこれだけ基本的なことにもかかわらず、企業の経営者やマネジメント、あるいは人事や育成担当者と対話を重ねていくと、かなり多い頻度で、失礼ながら本質的でない次の言葉を耳にすることになります。

「うちは文系出身者が多くて、数字とかそっちのほうは弱いんですよね」

この言葉はつまり、「学生時代に(いわゆる)文系だった人間は数字センスがない」と言っていることと同じです。しかし本当にそうなのでしょうか。

「文系」「理系」と書かれた木製のブロック
写真=iStock.com/Seiya Tabuchi
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/Seiya Tabuchi

私はこの問いに対して「NO」の立場をとっています。すなわち、ビジネスに必要な数字センスと学生時代の文系・理系はまったく関係がありません。

では何と関係があるのか。どうすればそのような人材や組織が開発できるのか。私のこれまでの経験からポイントが大きく3つあります。

①数会話(すうかいわ)
②発見する喜びを知る
③定義と変化に敏感

ここからそれぞれ詳しく解説していきます。ぜひあなた自身はもちろん、あなたの会社の人材育成や組織開発のヒントにしていただければ幸いです。

■「会話を変える」という発想

そもそも、数字とはなんでしょうか。

哲学的な問いのようですが、私には明確にひとつの答えがあります。

「数字とは、コトバである」

数字とは言語、つまりコミュニケーションで使うものです。「おはよう」や「愛している」と同じように、人と人とが通い合うために使うコミュニケーションツールです。

おそらくあなたはこれを「当たり前のこと」と思うでしょう。しかし記事を読んだ瞬間は当たり前と思えても、いざビジネスの場面において当たり前のように実践できているかはまったく別の話です。

結論から言えば、私に研修やコンサルティングの相談をしていただく企業のほぼ100%が、社内において数字をコミュニケーションツールとして使えていません。

ですから私は「数会話(すうかいわ)」という造語をつくり、企業の人材育成に活用しています。数会話とは読んで字の如く、数字を使って会話するという意味です。たとえば次のような会話を許さず、具体的な数字で表現することを求めるものです。

「部長、ちょっと時間もらっていいですか?」

「ちょっと」という表現を許さず、たとえば「1分」と表現することを徹底させます。このようなことに意味があるのか疑問に思うかもしれませんが、この「1分」とは少なくともこの部長との対話を事前に想像し、設計し、具体的な時間という量的概念で計測しているからできる発言です。

「1分」という数字が重要なのではなく、「ヒト」「ジカン」「カネ」といった量的概念で捉え、計測しようとする感覚を養うことが重要なのです。

このような文化(慣習)を経営層から実践していくと、徐々に管理職層に浸透していきます。そしてさらに現場の従業員たちにも強制的に浸透していくことになり、特定の人材だけではなく組織全体として数字センスがアップするのです。

■人は「見つけた」ときに喜びを感じる

一般論として、人は何かを「見つけた」ときに喜びを感じます。

「宝探し」や「間違い探し」など、子どもの頃にこのような遊びで楽しい体験をした人も多いでしょう。もしかしたら大人になった今でも、このような遊びに触れると夢中で楽しんでしまい、宝(あるいは間違い)を見つけたときは嬉しい感情になるのではないでしょうか。

つまり、人は何かを「見つけた」ときに喜びを感じるのです。

翻って、ビジネスにおいて「見つけるもの」とはなんでしょうか。私が思いつくだけでもこのようなものがあります。

「原因」
「傾向」
「意外な事実」

生じた問題の原因が特定できた。過去のデータを分析していたところ傾向が明らかになった。顧客にアンケート調査をしたところ、意外な事実が見つかった。これらはビジネスにおいて喜ぶべきことであり、共通するのは何かを発見したということです。

虫眼鏡とビジネスの成長グラフ
写真=iStock.com/HAKINMHAN
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/HAKINMHAN

そして重要なのは、これらを発見する際におそらく役立ってくれたのが数字であるということです。つまりビジネスパーソンが何かを発見するためには、数字の活用がマストになるのです。

ですからもしあなたの部下に数字センスを身につけて欲しい人物がいたら、いわゆるビジネス数字の勉強をさせたり、「数字を意識しなさい」という正論をぶつけるだけでは意味がありません(これまでそのような失敗事例をたくさん見聞きしてきました)。

そうではなく、今の仕事において「宝探し」あるいは「間違い探し」のようなタスクを意図的に課すのです。つまり「何かを見つけてごらん」という指導をするのです。

そしてどんな小さなことでも良いので、何かを発見した人物には大袈裟なくらい褒めることが重要です。

「なるほど、これが原因だったのか。よく突き止められたね」
「こんな傾向があるとは知らなかった。ありがとう!」
「意外な盲点だったよ。よく見つけたね」

……

このようなコミュニケーションがあることで、部下は何かを新たに発見することが自分に「嬉しさ」をもたらすと覚えます。

もっと認めてもらうために、もっと褒めてもらうために、勝手に数字を読んだり、数字を集めて分析し始めたりします。このサイクルになったら、部下の数字センスは自動的に磨かれていきます。

マネジメントや育成側としては「してやったり」です。

■数的な定義をすること、変化に敏感であること

最後のポイントは、「敏感であること」です。

数字センスのある人は例外なく、次のふたつにとても敏感です。

・定義
・変化

まず定義に敏感とはどういうことかを説明しましょう。

数字センスのある人はビジネスで扱う対象を数字で定義するスキルがあります。たとえば生産性という概念を「少ない資源でできるだけ多くの成果を」と解釈することは間違いではありませんが、数字センスのある人はそこからもう一歩だけ先に進み、「少ない資源でできるだけ多くの成果を」を数字で定義します。

例えば営業の仕事であれば、

(生産性)=(営業成績)÷(稼働時間)

あるいはマーケティング部門であれば、

(生産性)=(収益)÷(広告費)

ここまで定義できてようやく生産性とは何か、生産性が上がったとはどういうことか、上がったとは具体的に何がどれくらい増えたことを指すのか、明確にできます。

そしてこのようなスキルのある人は、先ほどご紹介した数会話の量も圧倒的に多いことがわかっています。

定義に敏感な人材に育成するためには、指導する上司側が定義に敏感でなければなりません。部下が「好調です」というなら、「好調という言葉の定義を数字でしているか?」と指摘してください。

このような小さな指導の積み重ねが、数字センスのある人材を育成することにつながります。

次に変化に敏感とはどういうことかを説明しましょう。

まず一般論として、成果を出す人は変化に敏感です。たとえば優秀な管理職は常に部下の様子を観察しています。ですから「最近ちょっと元気がないな」とか「今日は笑顔が少ないな」といったことに気づくことができます。

これはビジネス以外でも言えることでしょうか。たとえば恋愛においていわゆる「モテる人」とはどんな人でしょう。これもまた、「気づくことができる」という答えも考えられるのではないでしょうか。

つまり変化に敏感な人ということです。ただしモテる人が恋愛という土俵において結果を出す人であるという前提がありますが。

このように成果を出す人の共通点は、変化に敏感であることです。もしこのことを認めてくださるなら、私があなたにお伝えしたいことは99%伝わったと思います。

ビジネスにおいて変化というものに気づくためにもっともパワフルな方法は何か。答えはひとつしかありません。数字を定点観測し確認することです。

ですから変化に敏感な人材に育成するためには、常に数字を定点観測し確認することを習慣化させることが理想です。しかし目的や意義もなくそれを習慣化させることは困難を極めます。

そこで重要になるのが、先ほどご紹介した「発見は喜びである」という考え方です。意外な事実や傾向を見つけることを楽しめるメンタリティになると、勝手に「変化」を探すようになっていきます。

「あれ? 今日はいつもより多いか? 実際に確かめてみよう」
「おや? 昨日に比べて少ない気が? 実際に確かめてみよう」

こうして数字を定点観測し確認することが苦ではなくなります。ここまで導くことができれば、数字センスは自動的に磨かれていきます。繰り返しですが、マネジメントや育成側としては「してやったり」です。

■数字センスは今からでも身につく

以上の3つが、数字センスを身につけるためのポイントです。ここまでの内容をご理解いただければ、「文系・理系」という分類がいかに本質的でないかがお分かりいただけるでしょう。

最後に補足です。

数字センスという言葉を用いましたが、「センス」という言葉からつい私たちは「持って生まれた能力」とか「今さら身につけることはできないもの」だと思ってしまうようです。

深沢真太郎『読むだけで数字センスがみるみるよくなる本』(三笠書房)
深沢真太郎『読むだけで数字センスがみるみるよくなる本』(三笠書房)

しかしそれは大きな誤解です。周囲の人間の働きかけや環境次第で、今からでも十分に磨くことができるスキルです。そしてその鍵はやはり、周囲に「指導する」という発想を持った人がいるかどうかです。

私はそのような指導者マインドを持ったビジネスパーソンの育成にも力を入れています。すなわち私ひとりではなく、みんなで日本のビジネスパーソンの数字センスを鍛えていこうという発想です。

もしこの記事に何かを感じていただけた人は、ぜひ自らその役割を担っていただき、まずは職場や身近な環境において、数字センスのある人材や組織の開発を目指してみてください。

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深沢 真太郎(ふかさわ・しんたろう)
ビジネス数学教育家
日本大学大学院総合基礎科学研究科修了。理学修士(数学)。国内初のビジネス数学検定1級AAA認定者。予備校講師から外資系企業の管理職などを経て研修講師として独立。その独特な指導法で数字や論理思考に苦手意識を持つビジネスパーソンの思考とコミュニケーションを劇的に変えている。大手企業をはじめプロ野球球団やトップアスリートの教育研修まで幅広く登壇。SMBC、三菱UFJ、みずほ、早稲田大学、産業能率大学など大手コンサルティング企業や教育機関とも提携し、ビジネス界に数学教育を推進。2018年に国内でただ1人の「ビジネス数学エグゼクティブインストラクター」に就任し、指導者育成にも従事している。著書に『数学的思考トレーニング 問題解決力が飛躍的にアップする48問』(PHPビジネス新書)、『わけるとつなぐ これ以上シンプルにできない「論理思考」の講義』(ダイヤモンド社)、『数字にだまされない本』、『数学女子智香が教える 仕事で数字を使うって、こういうことです。』(ともに日経ビジネス人文庫)などがある。

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(ビジネス数学教育家 深沢 真太郎)

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