体力、スピード、集中力がダダ落ちの50代でもこれで戦える…人生後半に輝く人がしている"転身"のやり方
プレジデントオンライン / 2025年1月24日 15時15分
※本稿は、藤井孝一『50代がうまくいく人の戦略書』(三笠書房)の一部を再編集したものです。
■50代に求められるシフトチェンジ
今は人生100年時代といわれる時代です。昔と比べて50代のイメージは元気で若々しいものに変わってきています。
芸能界を見れば木村拓哉さん、福山雅治さん、石田ゆり子さんなど、50歳を超えても驚くほど若々しい俳優がたくさん活躍しています。
一般的に「中年」というくくりでまとめられることもあり、40代と50代を地続きでとらえている人が多いかもしれません。
けれども、現実には50代は更年期に差しかかる年齢であり、加齢による衰えを自覚する時期といえます。
また、多くの人にとって、50代は子育てを終え、親の介護や死別と向き合うタイミングでもあります。
仕事の上でも、50代になれば定年というリミットを強く意識するようになります。人生後半戦の生き方について、「このままでいいのか」「どうすればいいのか」あれこれ思い悩む機会も増えるのではないでしょうか。
私は2024年現在、58歳です。自分の実感に照らし合わせてみても、やはり40代と50代では明らかな変化がありました。
■体力・気力、リスク許容度も落ちてくる
まず、なんといっても体力・気力が落ち、リカバリーに時間がかかるようになりました。記憶力も衰え、本や映画のタイトルがなかなか出てこないということが増えています。
スピードや集中力も残念ながら続かなくなっています。
たとえば、30代の私は週末起業をアドバイスするにあたり、「ブランディングと認知度アップを図るために、メールマガジンやブログを毎日書きましょう」といったように、体力と気力にものをいわせる手法を提案していました。
当時は、最新のトレンドや技術を活用して知名度や実績を上げるノウハウを教えることもできました。
しかし、最近では世の中の流れについていくための学びのスピードも落ちています。YouTubeやTikTok、Instagramとなると、さすがに若者と張り合う自信がありません。
モチベーションという意味でも、30代や40代と比べれば下降しているのは事実です。以前であればリスクを恐れずに踏み出せたようなことでも、いまは慎重になっている自分がいます。
■経験に裏打ちされた知識とスキルが武器になる
なんだか、冒頭から暗い話をしてしまいましたね。
ただ、ここでいいたいのは、50代になったら、いろいろなことをあきらめて大人しく生きろ、ということではありません。
50代を防戦一方の下り坂として受け止めるのは間違っています。たしかに、どんなに強がっても、年齢に伴う肉体的・精神的な衰えを否定するのは無理があります。衰えを自覚することは不可欠です。
重要なのは、
「衰えを自覚した上で、戦い方を変える」
ということです。
50代にはポジティブな要素があります。それは、経験に裏打ちされた知識やスキル、そして人脈です。きっと、みなさんも長年のキャリアを通じて知識やスキルを身につけているはずです。
その知識やスキルをうまく生かす方向に「シフトチェンジ」すれば、まだまだ一花も二花も咲かせることができます。
この本では、50代から人生を輝かせるために何をどうシフトチェンジするか、その戦略について考えてみたいと思います。
■50代で「もう経営にしがみつくのはやめよう」
私は大学卒業後、大手金融会社で営業・マーケティングの仕事に携わりました。本業のかたわら、中小企業と起業家の活動をサポートする経営コンサルタントとしても活動し、34歳のときに独立。フリーランスとして仕事をしたあと、40歳で会社を設立し、経営者となりました。
そして51歳のときに会社経営を後進に譲り、現在では主に個人で執筆活動やコンサルティングなどの仕事を行なっています。
いってみれば、50代からフリーランスの経営コンサルタントに戻ったようなものです。
50代で経営を退くというのは、もともと決めていたことでもありました。若い頃から年上の経営者をいろいろと見ている中で、「50歳くらいがバリバリの第一線で勝負できるリミットではないか」と考えていたのです。
おそらく、50歳を迎えた時点で、まだまだやれるという自信があれば、そのまま経営者を続けていたかもしれません。
ただ、実際に50歳になってみて「やっぱり、もう経営にしがみつくのはやめよう」と思いました。
あらためて振り返ると、私の決断はけっしてネガティブなものだったわけではありません。その頃に感じていたのは、「戦うフィールドを変える必要性」でした。漠然とですが、50代はもっと違う働き方があると考えていたのです。
■絶頂期のプレーをみせる大谷翔平選手のもっと後に
最近、私の選択を裏付けるような本を読みました。『人生後半の戦略書』(アーサー・C・ブルックス/木村千里訳/SBクリエイティブ)という本です。
同書によると、高いスキルを求められる職業では、たいてい30代後半から50代前半にキャリアの落ち込みがはじまります。
わかりやすい例を挙げれば、アスリートは20代でピークを迎えます。アメリカのメジャーリーグでは、まさに大谷翔平選手が私たちに絶頂期のプレーを見せてくれています。
それに比べれば、アーティストや知識労働者のピークは、もっとずっとあとにくるようなイメージがあります。中には50代でも伸びしろがあると考える人もいますが、現実は違います。
たとえば、発明家やノーベル賞受賞者が大発見をする時期は30代後半とされています。あのダーウィンも、若い頃の研究をもとに50歳で『種の起源』を発表して以降、研究者としては大きな成果を残すことができず、失意の晩年を過ごしているのです。
■ダーウィンより、バッハのようにあれ
もっとも、人間には二種類の知能が備わっています。
一つ目は「流動性知能」と呼ばれるものです。これは発想力や柔軟な思考力、目新しい問題の解決力を指しています。簡単にいうと、私たちが普段の仕事で発揮している実務能力です。
どんなに若いときに斬新なアイデアで成果を生み出した人も、加齢による流動性知能の落ち込みを避けることはできません。
けれども、知能にはもう一つの「結晶性知能」というものがあります。結晶性知能とは過去に学んだ知識やスキルを活用して問題を解決する能力です。この結晶性知能は、流動性知能のあとから上昇していくことがわかっています。
つまり、ダーウィンが失意の後半生を送ったのは、流動性知能にいつまでもこだわっていたからです。
発想力や柔軟な思考力の落ち込みを受け入れ、もう一つの知能である結晶性知能を生かす方向にシフトチェンジする。そうすることで、第二のキャリア人生を輝かせることができるのです。
じつは、このシフトチェンジを体現した偉人の一人が作曲家のバッハです。バッハは天才として早くから才能を発揮し、1000曲以上の作品を世に送り出しました。日本人にとってもバッハは「音楽の父」として、なじみ深い作曲家です。
しかし、彼の栄光は長続きしませんでした。バッハを時代の主役から引きずりおろしたのは、じつは彼の息子たちです。
特に次男のカール・フィリップ・エマヌエル・バッハは、当時は父親よりもずっと有名になり、バッハは時代遅れの作曲家とみなされていたのです。
けれども、バッハはそのままでは終わりませんでした。作曲家として時代をリードするのではなく指導者へと転身。第二のキャリアを充実させ、周囲からも尊敬されながら生涯を閉じたのです。
■積み重ねてきたものを周囲に還元していく
私たちが見習うべきは、バッハのような生き方です。
50代からの人生の後半戦は、前半戦と同じようなやり方で世俗的な成功を目指すのは困難です。私は40代の10年間、がむしゃらに会社経営に邁進してきたおかげで、経営者としての経験値を身につけることができました。経営の基本や難しさも経験を通して理解していますし、経営者の気持ちもよくわかります。
その蓄積を生かし、50代の今は当時の経験を振り返りながら、より現実的なアドバイスができるようになったと思っています。
50代からは「重ねてきた経験を周囲に還元していく」ような生き方へのシフトチェンジが求められます。第二の曲線に飛び移れば、私たちには幸せで楽しい人生が待っているのです。
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経営コンサルタント
中小企業診断士。1966年、千葉県生まれ。慶應義塾大学文学部卒業後、大手金融機関を経て99年に独立。著書に『週末起業』(ちくま新書)など。
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(経営コンサルタント 藤井 孝一)
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