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活発な林業活動は、森林による炭素隔離量を増加させる

PR TIMES / 2024年4月26日 17時15分

静岡大学農学部の江草智弘 助教は、東京大学農学生命科学研究科、University of Natural Resources and Life Sciences Viennaとの共同研究で、主要な人工林樹種に対して、林齢増加に伴う成長をモデル化しました。
そして、それを用いて、日本の森林における未来の炭素隔離量を定量的に評価しました。
その結果、林業を活発に行うことにより、炭素隔離量が大幅に高まることを明らかにしました。



【研究のポイント】
・日本の主要四大人工林樹種、スギ・ヒノキ・マツ属・カラマツを対象に、日本全国スケールで最新の「林齢-炭素蓄積量関数(注1)」を作成しました。
・この林齢-炭素蓄積量関数を用いて、過去から未来に渡る日本全域の森林による炭素隔離量(注2)を推定しました。
・林業活動を行わなければ、森林炭素蓄積量は、近い将来、飽和することが分かりました。
・活発な林業活動は、日本の森林における炭素隔離量を大幅に高めることが分かりました。
なお、本研究成果は2024年4月17 日にScience of the Total Environment誌に掲載されました。


[画像: https://prtimes.jp/i/96787/34/resize/d96787-34-48489e4137ccd1bdd6bb-0.png ]



【研究者コメント】
静岡大学農学部助教 江草 智弘(えぐさ ともひろ)
将来の森林の在り方については、様々な意見があり、議論を積み重ねる必要があります。本研究で得られた結果は、そのような議論を行う上で、有益な情報を提示するものだと考えています。

【研究概要】
森林造成や森林成長による炭素隔離は、地球温暖化抑制のための有力な手段として期待が高まっています。そのため、樹種ごと・地域ごとの森林成長特性と広域の土地利用変化に関する正確な情報が必要不可欠であり、この情報に基づいた森林炭素蓄積の未来予測が重大な意味を持つでしょう。さらには、予測計算結果から、木材を含めた森林による炭素隔離を最大化するような森林施業戦略を探索することもできるでしょう。
現場での樹木サイズ計測に基づく森林炭素蓄積量推定は、最も正確であると考えられます。国家森林資源調査(NFI)は我が国の総森林面積を対象に林分材積を提供し、この中でも、直接現地観測からの見積(森林生態系多様性基礎調査(注3):m-NFI)は最も信頼できるものです。
そこで、私たちは、日本の代表的人工林樹木であるスギ・ヒノキ・マツ属・カラマツの4タイプを対象として、2009~2013年に行われたm-NFIを用いて林齢-炭素蓄積量関数を作成しました。そして、この林齢-炭素蓄積量関数を用いて、過去の林齢別森林面積変化から過去の森林炭素蓄積量の経年変化を推定し、さらに、伐採・植林シナリオによる木材生産を含めた森林の炭素隔離能力の違いを検討しました。結果として、4タイプ全てにおいて、これまで考えられてきた成長速度、過去の森林炭素蓄積よりも、本研究におけるm-NFIを用いた新規推定値が大きくなりました。2060年時点の炭素隔離量予測値は、炭素貯留機能に関する樹木生産物の歩留まり率を100%とした上では、現状の2倍の伐採率と伐採に対して100%の植林率を仮定した場合が、伐採も植林もしないと仮定した場合の3~4倍となりました。また、この大きな伐採率・植林率条件の炭素隔離量は、現況の伐採率・植林率条件の2~3倍にも達しました。日本の人工林は、積極的な伐採と植林により、樹木生産物による炭素貯蔵の長寿命化を図るという前提の下で極めて高い炭素隔離能力を発揮することが示唆されました。森林が地球温暖化を抑制する新たな、そして、驚くべき能力を見出すことができたとも考えています。


【用語解説】
注1 林齢-炭素蓄積量関数
森林の年齢から面積当たり森林炭素蓄積量を算出する関数。
注2 炭素隔離
 大気中への二酸化炭素の放出を防ぐために、炭素を生物学的、もしくは地質学的な方法で安定的に貯留すること。
注3 森林生態系多様性基礎調査
 日本全域で4 km間隔の格子点を考え、その交点が森林に位置する場合、そこを現地調査対象地とする標本調査。5年間隔で調査が行われており、各調査期で約1万5千点の調査点を持つ。調査項目は多岐に渡るが、最重要項目は材積推定のための毎木調査である。


【論文情報】
掲載誌名: Science of the Total Environment誌


論文タイトル: Carbon stock projection for four major forest plantation species in Japan


著者: Tomohiro Egusa1, Ryo Nakahata2, Mathias Neumann3, and Tomo’omi Kumagai2
1 静岡大学
2 東京大学
3 University of Natural Resources and Life Sciences Vienna


DOI: https://doi.org/10.1016/j.scitotenv.2024.172241

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