成人期AD/HD(18歳以上)当事者100名を対象とした調査/6都道府県11施設の発達障害者支援センターアンケート
PR TIMES / 2013年6月12日 12時51分
成人期のAD/HD当事者 一日を通して様々な場面で困難抱え、生活に支障~7割以上が人間関係・就労・日常生活で「困っている」~
日本イーライリリー株式会社(本社:神戸市、社長:アルフォンゾ・G・ズルエッタ)は、18歳以上の注意欠陥/多動性障害(以下、AD/HD)当事者の現状や社会生活上の困難等を明らかにすることを目的に、全国で18歳以上の男女100名のAD/HD当事者を対象としたインターネット調査を実施致しました。同時に、6都道府県11施設の発達障害者支援センターへのアンケートも実施、成人期AD/HD(18歳以上)当事者を取り巻く現状が明らかとなりました。(調査時期:2011年)
成人の社会生活は子どもよりも複雑になり、責任も重くなるため、家庭や職場など、一日を通した様々な状況においてAD/HDの症状が与える影響も大きくなります。日本イーライリリーでは、注意欠陥/多動性障害(AD/HD)治療剤「ストラテラ(R)(一般名アトモキセチン塩酸塩)」について、日本で初めて、成人期のAD/HDへの適応追加の承認を2012年8月に取得しました。これにより、今まで承認された治療薬がなかった、成人期(18歳以上の)AD/HD患者にも薬物治療という選択肢を提供できることになりました。しかしながら、AD/HDの症状は障害とは気づかれにくく、特に成人期AD/HDについての正しい理解や適切なサポートは未だ十分ではありません。
主な調査結果は以下の通りです。
■7割以上の成人期AD/HD当事者が、様々な場面で困難を抱えていると回答
「日常生活」75.0%、「人間関係」83.0%、「就労」79.0%が困っている(「非常に困る」、「困る」、「少し困る」の合計)と回答【グラフ1.】。「日常生活」において最も困っていることとしては、「感情のコントロールができない」32.0%【グラフ2.】。「人間関係」においては「周囲から孤立してしまう」41.0%【グラフ3.】、「就労」においては「仕事に就いても、業務を遂行することが困難」35.4%【グラフ4.】と回答。
■就労時、最も困る症状は、AD/HD特有の「不注意」
就労時、AD/HDの症状が原因で困ることとして最も多かったのは、「同じミスを何度も繰り返す」72.7%、続いて「複数の業務を同時進行することができない」59.7%、「頼まれた業務を忘れてしまう」55.8%【グラフ5.】。
■周囲の理解、浸透していないことが示唆
自己肯定感が低い傾向がみられ、特に、「周囲の人から認められ、理解されている」「自分らしく生き生きと日々を過ごせている」と回答した成人期AD/HD当事者は、わずか12.0%であることが判明、周囲の理解が浸透していないことが示唆されました【グラフ6.】。
■成人期AD/HD当事者からの相談で最も多いのは就労に関する相談
発達障害者支援センターに成人期AD/HD当事者から寄せられる相談で最も多い内容は、「就労」54.5%【グラフ7.】。「就労」に関する相談内容で最も多いのは「仕事が長続きしない」90.9%【グラフ8.】、「日常生活」においては「家事ができない」81.8%【グラフ9.】、「人間関係」においては、「家族や同僚、友人との人間関係を築くことができない」63.6%【グラフ10.】でした。
■東京都立小児総合医療センター 顧問 市川 宏伸 先生 コメント
AD/HDの症状は、「不注意」は集中して話が聞けない、金銭の管理ができないなど、「多動性」はよくしゃべる、体の一部を動かすなど、「衝動性」は思いつきをすぐ言動にうつすなど、一日を通してさまざまな形であらわれます。これらの問題の程度が非常に強い、あるいは頻度が並外れて高いなどで生活上大きな支障があると判断される場合に、AD/HDと診断されます。AD/HD により生じる様々な支障を減らし、当事者がその人らしい生活をおくるためにも、成人AD/HD当事者への適切な治療が非常に大切です。
■こころとそだちのクリニック むすびめ 院長 田中康雄 先生 コメント
成人期のAD/HDに関する正しい理解や適切な支援が未だ十分に浸透していないことがうかがえます。自分を責めたり、本人が怠けているといった非難や誤解にさらされたり、良好な人間関係構築や就労などの社会生活において困難に直面している当事者が多数存在しています。大人になって初めて診断をうけ開始される治療には、環境調整などの心理社会的治療と薬物療法があります。本人や周りの人が、その人の発達特性を理解し、適切な診断・治療を受けて、生活上の悪循環を断ち切り、状況を改善していくためにも成人期特有の生きづらさへの支援が必要です。
■NPO法人えじそんくらぶ 代表 高山 恵子さん コメント
多くの当事者が困難を抱えているという調査結果にあらわれているとおり、AD/HDの症状は、昼夜を問わずあらわれ、仕事のみでなく、家事など日常・社会生活に支障をきたしています。周囲から見れば、「努力が足りない」、「反省できない」ようにみえるかもしれませんが、本人は本当に精一杯がんばり、人一倍の努力をして日常を切り抜けているのです。AD/HDのある人が自分の特性を知り、得意なことを活かして社会貢献できるように、サポートして頂きたいと思います。AD/HDを「治す」のではなく、「もともと持っている特性を適切なサポートを受けて、活かし、豊かに生きる」。そんなイメージで、AD/HDとともに向き合っていく方法をみつけていくことが大切だと思います。
以上
成人期AD/HD当事者対象調査および発達障害者支援センターアンケートについて
本リリースは、2011年に実施した調査結果の第2弾の発表となります。第1弾は、2011年11月2日にプレスリリースにて発表いたしました。第1弾のプレスリリースは、以下の日本イーライリリー株式会社のWEBサイトにてご覧いただけます。
https://www.lilly.co.jp/pressrelease/2011/news_2011_087.aspx
成人期AD/HDについて
小児期にAD/HDと診断された患者のうち約50~70%は成人期(18歳以降)にまで症状が持続することが示唆されており*1 、成人AD/HDの有病率は世界全体では平均3.4%*2 と報告されています。AD/HDと診断される成人では、気分障害、不安障害、強迫性障害、解離性障害、物質性障害など多岐にわたる障害が重なること*3、また、落第、失業、転職、離婚などがみられるという報告もあります*4。成人期AD/HDの治療は、患者との面接や、家庭・職場との連携、薬物療法など総合的なプログラムが重要とされています。詳しくはhttp://www.ADHD.co.jpをご参照下さい。
*1 Civic Research Institute:4-1- 4-12, 2002,*2 Br J Psychiatry 190:402-409,2007,*3 精神科治療学 19(4):415-424,2004,*4精神科治療学 19(5) : 563-569,2004.
日本イーライリリーについて
日本イーライリリー株式会社は、イーライリリー・アンド・カンパニーの子会社で、革新的な医薬品の輸入・開発・製造・販売を通じて日本の医療に貢献しています。統合失調症、うつ、双極性障害、注意欠陥・多動性障害(AD/HD)、がん(非小細胞肺がん、膵がん、胆道がん、悪性胸膜中皮腫、尿路上皮がん、乳がん、卵巣がん)、糖尿病、成長障害、骨粗鬆症をはじめとする、ニューロサイエンス領域、がん領域、糖尿病領域、成長障害領域や筋骨格領域における治療法を提供しています。詳細はホームページでご覧ください。http://www.lilly.co.jp
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