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ユースキン製薬・農研機構 共同研究天然繭タンパク質から新たな皮膚保護剤を開発 - 皮膚バリア機能を補う高分子量セリシン素材 -

PR TIMES / 2024年8月21日 15時15分



[画像1: https://prcdn.freetls.fastly.net/release_image/62511/93/62511-93-82b979e73abeae1f268b25bc24012c54-1000x543.jpg?width=536&quality=85%2C75&format=jpeg&auto=webp&fit=bounds&bg-color=fff ]



ユースキン製薬株式会社(本社/神奈川県川崎市 代表取締役社長/野渡和義 以下、「ユースキン製薬」)と、国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構(本部/茨城県つくば市 理事長/久間和生 以下、「農研機構」)は、カイコの繭(まゆ)から抽出した「高分子量セリシン」を使って新たな皮膚保護剤を開発しました。

セリシンとは繭の繊維を取り囲む親水性のタンパク質で、分解されていない高分子量の状態であれば被膜を形成することが知られていますが安定化が難しい素材です。本開発では、変質しやすく不安定な高分子量セリシンについて長期間にわたる安定化に成功することで、機能性を活かした化粧品素材(皮膚のバリア機能を補う機能をもった素材)への使用を可能にしたものです。

【研究の背景】 日常のスキンケアはユーザーの肌悩みが多様化し、市場では高い安全性と機能性を有した製品が望まれています。一方、海洋・土壌汚染などの環境課題を背景に、よりサスティナブルな天然素材への利用にも注目が集まっています。ユースキン製薬では、様々な消費者のニーズを解決する素材のひとつとして、カイコがつくる繭(まゆ)成分に着目し、カイコや繭を利用する分野で著名な研究機関の農研機構と共同で研究を進めてきました。

カイコの繭は繊維を構成するフィブロインと、それらを取り囲んで保護する親水性のセリシンという2種類のタンパク質からできています(図1)。


[画像2: https://prcdn.freetls.fastly.net/release_image/62511/93/62511-93-f25703d14aa2a42aca654a9cb73844e0-747x499.png?width=536&quality=85%2C75&format=jpeg&auto=webp&fit=bounds&bg-color=fff ]


図1.カイコ繭繊維断面の模式図

フィブロインはシルク繊維として様々な分野で応用利用されていますが、セリシンは利用が進んでいません。セリシンはフィブロイン繊維の取得過程で分解されてしまいます。しかし、天然状態の高分子量を維持したセリシンでは透明な被膜を形成し、寒天状のゲルを形成するといったユニークな機能を持ちます。ユースキン製薬と農研機構はこの機能に着目し、被膜形成能によって皮膚を保護・保湿できる天然由来の新たな化粧品素材の開発を目指しました。

【研究の成果】 セリシンはフィブロイン繊維から分離する過程で分解され、分子量が低下する問題があります。そこで天然状態の高品質な高分子量セリシンを得るため、農研機構が保有している「セリシンホープ」という特殊なカイコ品種に着目しました。セリシンホープはフィブロインを生産せず、98%以上がセリシンで残りがその他微量成分からなる繭を作ります(図2)。


[画像3: https://prcdn.freetls.fastly.net/release_image/62511/93/62511-93-0170fcb139cb5ed44cd72243e5b7c208-3900x2856.jpg?width=536&quality=85%2C75&format=jpeg&auto=webp&fit=bounds&bg-color=fff ]


図2. カイコの繭 (左:通常品種の繭、 右:「セリシンホープ」の繭)

また、別の課題として、一般に高分子量セリシンの抽出に用いられるリチウム塩には毒性があり、残留の懸念から化粧品素材としての利用には安全上の問題があります。そこで、安全性が明らかで食品や化粧品への配合が既に認められているカルシウム塩を代わりに使用することで、安全な高分子量セリシンを抽出するための条件を確立しました。

その他、高分子量セリシンは固化しやすく、長期間にわたる安定的な保管が困難でしたが、グリセリンと組み合わせることで様々な課題が解決でき、最終的に高分子量セリシンを安定的に維持できる、「高分子量セリシン-グリセリン組成物(以下、HSG)」の開発に成功しました(図3)。さらに、透析※1法を用いない遠心分離による簡便な脱塩※2法を確立し、産業利用に適した方法でのHSG生産も可能となりました。


[画像4: https://prcdn.freetls.fastly.net/release_image/62511/93/62511-93-89263887ca3be5878eb293f60f25050a-908x383.jpg?width=536&quality=85%2C75&format=jpeg&auto=webp&fit=bounds&bg-color=fff ]


図3. 新たに開発した高分子量セリシン-グリセリン組成物(HSG)

表1. 従来技術との比較
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従来技術の3つの課題を克服したHSGは、化粧品素材として製造面・機能面・安定性の全てにおいて扱いやすい素材となります(表1)。HSGからグリセリンを取り除いて乾燥すると滑らかで柔軟な被膜を形成したことから、HSGに含まれる高分子量セリシンは被膜形成能を維持していることを確認しました(図4)。

HSGは、皮膚に適用した際にはグリセリンが皮膚内に浸透する一方で、高分子量セリシンは皮膚上に残って被膜を形成し、バリア機能を補います。HSGはクリーム等の化粧品基剤に分解することなく配合が可能であり、配合した際に皮膚の水分蒸散を抑制する効果が確認され、化粧品に配合したHSGが皮膚のバリア機能を補うことが示されました。(図5)。

[画像6: https://prcdn.freetls.fastly.net/release_image/62511/93/62511-93-36fda28a026d1ff5fdbe0d575589db60-3709x1177.png?width=536&quality=85%2C75&format=jpeg&auto=webp&fit=bounds&bg-color=fff ]


図4. HSGに含まれる高分子量セリシンの被膜形成能

[画像7: https://prcdn.freetls.fastly.net/release_image/62511/93/62511-93-75fda7b8f23e6353522f80d8c271c343-474x235.png?width=536&quality=85%2C75&format=jpeg&auto=webp&fit=bounds&bg-color=fff ]



図5. HSG配合クリームによる経表皮水分蒸散量(TEWL)※3の抑制効果

【今後の展望】 本研究により、応用利用が進んでいなかった高分子量セリシンを安定な素材として大量生産することが可能となり、セリシンの被膜形成能を活かして皮膚上でバリア機能を補う効果を持ったHSGの開発に成功しました。天然由来の高分子セリシンは、機能性を有しているうえ、自然志向の潮流に則した優れた成分として今後様々な活用が期待できます。ユースキン製薬は、これからも生活者の肌悩みに応え、潤いある社会に貢献すべく技術革新に取り組んでいきます。

【注釈】
※1 透析 : セリシン溶液中の塩類を除くため半透膜でできた透析チューブにセリシン溶液を詰め大量の緩衝液に長時間浸す操作を行う。高分子量セリシンは分子量が大きいので透析チューブの膜を透過せず塩類のみが膜を透過することからセリシン溶液中の塩類は時間の経過とともに薄まる。

※2 脱塩 : 塩化ナトリウムや塩化カリウムなど、水溶液中に含まれている塩類を除去する操作のこと。高分子量セリシンの抽出に用いられている臭化リチウムや塩化カルシウムを除去することを指す。

※3 経表皮水分蒸散量(TEWL) : 皮膚の最外層にある角層を通り生体内より蒸散する水分量のことで、汗によらない水分のこと。皮膚のバリア機能が何らかの原因で低下すると水分蒸散量は多くなる。

【発表論文・関連特許】
(論文)High molecular weight sericin/glycerol composition as a novel skin care material supporting human skin barrier function
日本シルク学会誌(The Journal of Silk Science and Technology of Japan) 第32巻、pp. 29-42、2024
(DOI) https://doi.org/10.11417/silk.32.29
(公開特許)特開2020―193196 「被膜形成能を有する高分子量セリシン組成物およびその製造方法」

【研究責任者・研究担当者】
研究推進責任者 : 
・ユースキン製薬株式会社 研究開発部 部長  飯野隼人
・農業・食品産業技術総合研究機構 生物機能利用研究部門 所長  立石 剣

研究主担当者   :
・ユースキン製薬株式会社 研究開発部 研究開発グループ 第2チーム チームリーダー  今江龍太
・農業・食品産業技術総合研究機構 生物機能利用研究部門
絹糸昆虫高度利用研究領域 新素材開発グループ グループ長補佐  寺本英敏



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