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有機野菜の購入促進には“過剰な美意識”の弊害に焦点をあてた訴求が有効−明治大学商学部加藤拓巳専任講師と日本電気株式会社の共同研究成果がJournal of Consumer Marketingに掲載−

PR TIMES / 2024年12月23日 14時15分



 明治大学商学部加藤拓巳専任講師と日本電気株式会社の共同研究成果がJournal of Consumer Marketing (Impact Factor 2.70, ABDC Journal Quality List - A ranking)に掲載されました。販売状況が芳しくない有機農産物は、これまで環境配慮と健康が訴求されてきました。しかし、環境面は、利他的要素であるため、自身に直接かつ即時の価値はもたらしていません。健康面は、利己的要素であるものの、「美しさのプレミアム*1」により、農薬・化学肥料で管理された通常の農産物を「美味しくて栄養豊富」と評価してしまいます。そこで、本研究は、日本における有機農産物を対象として、環境配慮と健康よりも、消費者の“過剰な美意識”の弊害に焦点をあてたマーケティングコミュニケーションの方が購入意向を高めることを明らかにしました。

出典:Kato, T., Yoshimura, W., Shinozaki, Y., Hayami, K., Ikeda, R., & Koizumi, M. (2024). Disadvantages of the food beauty premium: New marketing communication for organic food. Journal of Consumer Marketing, 1-15, Emerald Publishing.
https://doi.org/10.1108/JCM-05-2024-6867


本研究のポイント
- 社会問題が日々深刻化する中、顧客価値と環境配慮はトレードオフの関係ではなく、両立すること が重大な経営課題となった。消費者もその社会的背景をよく理解しており、商品・サービスの倫理的妥当性を重視した消費行動(エシカル消費)を行うと表明している。しかし、現実的には、環境に配慮した商品の販売は難しい状況にある。なぜなら、調査では消費者は「社会的望ましさバイアス*2」によってエシカル消費に肯定的な態度を示すものの、実際には、自身の支払うお金に見合った最大の価値を得たいという欲求に即して行動する。つまり、エシカル消費に関しては、人々は言行が一致しにくい。
- まさにその状況に陥っている商材の1つに有機野菜がある。これまで、有機野菜の訴求では、環境配慮と健康という2点を繰り返し主張してきた。環境配慮面としては、有機農業は化学肥料や殺虫剤の使用を削減することで、環境および生態学的影響を抑えて土壌を健康に保ちながら果物や野菜を栽培している。健康面としては、通常の果物や野菜よりも残留農薬が含まれる可能性が低く、かつ栄養素が多く含まれる傾向が主張されてきた。
- しかし、それらは有機農産物の購入促進には効果が乏しい現状がある。環境面は、利他的要素であるため、自身に直接かつ即時の価値はもたらさない。健康面は、利己的要素であるものの、「美しさのプレミアム」と「醜さのペナルティ*3」がその価値を阻害してしまう。消費者は美しいものに対して高い価値を見積もる。食品の例だと、「美しい農産物は美味しくて栄養豊富/醜い農産物は不味くて栄養が少ない」と考えてしまう。
- 上記の消費者の価値観に応えるため、農家や企業は苦渋の決断をしている。まず、世界中で収穫された農産物のかなりの部分が消費者の形状の期待を満たさないために廃棄するため、フードロスと野菜の価格高騰の問題が生じている。次に、見た目を美しくするために、有機栽培よりも農薬・化学肥料を導入している。特に日本人は果物と野菜に対して、色・形・サイズの見栄えが美しいことを非常に重視する。つまり、過剰な美意識は、オーガニック食品の環境配慮と健康というメリットを放棄するだけでなく、フードロスによる経済的損失と価格高騰をひきおこしている。
- そこで、本研究は、日本における有機農産物を対象として、環境配慮と健康よりも、消費者の“過剰な美意識”の弊害に焦点をあてたマーケティングコミュニケーションの方が購入意向を高めることを明らかにした。従って、商品の価値が正しく伝わっていない状況下では、その価値認識を歪めている実態を伝えることも有効な手段である。


[画像: https://prcdn.freetls.fastly.net/release_image/119558/176/119558-176-7be6c52a97b0ae834b258e5610fdadf6-1379x913.png?width=536&quality=85%2C75&format=jpeg&auto=webp&fit=bounds&bg-color=fff ]


用語説明
*1 美しさのプレミアム: ステレオタイプ的に魅力的な人や物に対して価値を高く見積もる傾向
*2 社会的望ましさバイアス: 社会的に望ましいと考えられている選択肢を選ぶという心理的な圧力
*3醜さのペナルティ: ステレオタイプ的に魅力的でない人や物に対して価値を低く見積もる傾向

この記事に関連するページ
加藤拓巳専任講師ホームページ
https://takumi-kato.com/

加藤拓巳専任講師の研究紹介記事「マーケティングとは、販売を不要にする価値づくり」(Meiji.net)
https://www.meiji.net/business/vol429_takumi-kato

受験生のための学部選択ガイド Step into 商学部
https://www.meiji.ac.jp/stepinto/shogaku/

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