パナマ:危険なジャングル「ダリエン地峡」で移民への集団性暴力が増加
PR TIMES / 2023年11月21日 20時15分
南米コロンビアと中米パナマの国境にまたがる未開のジャングル、「ダリエン地峡」。北米に渡ることをめざし、約100キロメートルにおよぶこの区間を横断する移民は、途中の山間地に設置されたテントで誘拐や集団レイプに遭ったと証言している。2023年に国境なき医師団(MSF)は、パナマに渡った397人の性暴力被害者を治療。その多くは子どもであった。MSFはダリエン地峡における移民に対する暴力と苦しみが常態化する恐れがあると警告している。
[画像1: https://prtimes.jp/i/4782/655/resize/d4782-655-ca0f04dd32496b6bb58e-0.jpg ]
あらゆる危険と隣り合わせ
安全上の理由から名前を伏せているベネズエラ人の移民女性は「5回もレイプされて、どうしたら生きていけるの?」と泣きながら問いかける。自国の経済状況によって、世界で最も危険なルートのひとつとされるダリエン地峡の横断を余儀なくされ、旅の途中で何度も性暴力を目撃した。「私たちはより良い未来を求めてジャングルを横断していたのであって、人生を終わらせるためではありません。命を奪うのは蛇ではありません。ジャングルの中でレイプし殺す男たちによって奪われるのです」
この被害者は、ダリエン地峡を渡り、米国を目指して北上してきた46万人近い移民の一人だ。旅の途上では崖からの転落、川での溺死、強盗、誘拐、レイプなど、あらゆる危険にさらされる。
この女性は、行動を共にしていた全員が武装した男たちに誘拐され、暴力を受けたと話す。「私はバットで足を殴られました。お金がない人は殴られたのです。お金を持っていないと言ったのに、後から持っていると分かった人はもっとひどい暴力を振るわれました。『そうだ、あの女は金を持っている』と言い、そしてレイプしました。多くの人が同様にレイプされるのを見ました。裸にされて殴られるがまま。3人くらいでつかまれてレイプされ、相手が交代してまたレイプ。悲鳴を上げれば殴られます」
1週間で59人が性暴力の被害に
パナマでMSFに支援を求める被害者の数をみると、ダリエン地峡における性暴力は増加しているのがわかる。10月だけで、MSFは107人のケアに当たった。当月は59人がMSFのケアを求めた週があり、計算では3時間に1件の割合で性暴力が起きたことになる。被害者の中には11歳、12歳、16歳の子どもも含まれていた。
衝撃的な数字とはいえ、性暴力は偏見や恐怖のために報告されないことが多く、これらの統計は実数を大きく下回っている可能性が高い。
MSFの医療コーディネーター、カルメンサ・ガルベスは「性暴力の被害に遭った全ての人が、タイムリーなケアを受けられるとは限りません。この手の暴力の被害者に対する偏見、加害者からの脅迫、性暴力との認識不足、人びとが安心して助けを求められないという事実のためです。加えて、犯罪を報告することで、北への旅が遅れるのではないかという不安もあります」と言う。
命を奪われる危険も
[画像2: https://prtimes.jp/i/4782/655/resize/d4782-655-60fddc409783eea90ac4-1.jpg ]
MSFの患者は、武装した男たちが移民のグループを誘拐してはダリエン地峡の通行料だとして金を盗んでいると話している。患者は、望まない接触からレイプに至るまで、性暴力が他の移民の前で、あるいは行為目的で建てられたテントの中で起きると説明している。MSFが治療した性暴力被害者の95%は女性。被害者を守ろうとして暴力を振るわれ、殺される人もいたと言う。
あるベネズエラ人女性は「女性を守ろうとした若い男性も殴られ、地面に投げつけられました。私たちの目の前で少年の額に銃弾を撃って殺したのです」と振り返る。
女性は次のように求める。「これ以上、死者やレイプが増えないようにお願いします。このような扱いは不公平です。私たちは子どもたちのために戦う女性です。川があり、動物や蛇がいることは分かっています。でも、最も危険なのはジャングルの中にいる男たちです。レイプされれば私たちの人生は終わりです」
移民のリスク軽減と医療アクセスの確保を
パナマで性暴力の被害者を治療しているMSFのスタッフは、その深刻な医学的・心理学的影響を指摘している。ガルベスは「治療が間に合わなければ性暴力は人びとの体や心の健康に影響を及ぼします。女性の妊娠に影響を及ぼす性感染症はその一例です。HIV感染からエイズを発症し、他の人にうつる恐れがあります。外傷、望まない妊娠、社会的孤立、罪悪感、体験した出来事について繰り返し考えること、うつなどを引き起こす可能性があるほか、不安、自殺願望、不眠症、薬物乱用と新たな性暴力被害に遭うリスクまで高まるのです」と指摘する。
MSFは関係各国政府に対し、性暴力を含め、移民がさらされている多くのリスクをなくすため、ダリエン地峡における効果的なプレゼンスを確保することを求めている。ガルベスは「誰もこのような暴力で苦しむべきではありません」と憤る。MSFはまた、性暴力の被害者が望まない妊娠やHIV、その他の性感染症を避けるため、72時間以内に医療を受けられるようにすることも政府に求めている。
[表: https://prtimes.jp/data/corp/4782/table/655_1_6b414ff8d71a1f890b278269333010bc.jpg ]
企業プレスリリース詳細へ
PR TIMESトップへ
この記事に関連するニュース
-
スーダン:国境なき医師団、首都の基幹病院での活動停止へ──病院への暴力的攻撃を非難
PR TIMES / 2025年1月10日 18時45分
-
英国史上最悪の「国家的レイプ」事件に「英首相が加担した」と、イーロン・マスクが糾弾する理由
ニューズウィーク日本版 / 2025年1月7日 20時11分
-
アングル:移民取り締まり強化は「好機」、トランプ氏復帰喜ぶ密入国業者
ロイター / 2024年12月29日 15時16分
-
ガザ地区:イスラエルによる攻撃、包囲、封鎖はガザの完全破壊──国境なき医師団報告書
PR TIMES / 2024年12月19日 17時30分
-
地中海での移民・難民の捜索救助活動を停止──イタリア当局の妨害により船の運用困難に
PR TIMES / 2024年12月17日 18時45分
ランキング
-
1裏切られた気持ちでいっぱいです…月収25万円・65歳サラリーマン、毎年「ねんきん定期便」を必ずチェック、年金月19万円のはずが「初めての年金振込日」に知った衝撃事実に撃沈
THE GOLD ONLINE(ゴールドオンライン) / 2025年1月15日 8時15分
-
2理想の体形や収入がいつまでも手に入らない理由 強い願いも「無意識」に打ち負かされてしまう
東洋経済オンライン / 2025年1月15日 8時15分
-
3「馬上、枕上、厠上」がキャリア形成にも重要な理由 「1人になれる時間」は本来いくらでも存在する
東洋経済オンライン / 2025年1月15日 8時0分
-
4松屋が「本気のガチ中華」で投入した商品の"正体" 「中華一番」の作者も唸る「水煮牛肉」の実力
東洋経済オンライン / 2025年1月15日 8時40分
-
5なぜ繁忙期も「あの同僚だけ残業せずに帰れる」のか? デキル人が無意識に使う思考パターン
ITmedia ビジネスオンライン / 2025年1月15日 8時10分
記事ミッション中・・・
記事にリアクションする
記事ミッション中・・・
記事にリアクションする
エラーが発生しました
ページを再読み込みして
ください