なぜいま『論語』か〜早稲田大学教授・渡邉義浩さんに聞く
Record China / 2024年10月24日 15時20分
日本の中国古代史研究者である渡邉義浩氏の著作『「論語」 孔子の言葉はいかにつくられたか』の中国語版出版記念イベントで取材しました。
日本では三国志研究の第一人者として知られる、早稲田大学の渡邉義浩教授(62歳)。コロナ期間中のオンライン授業のために書きためた講義ノートに基づく著書『論語 孔子の言葉はいかにつくられたか』(講談社選書メチエ、2021年)がこの秋、中国で翻訳出版されました。
出版記念イベントで北京入りした渡邉教授は、記者のインタビューに対し、「私は『諸葛亮マニア』なんです」と笑って答えました。高校時代に三国志好きが高じて理系から文系に転向し、その後、中国古典研究の道へと進んだという渡邉教授。学者人生の中で最も忘れられない体験の一つは、発見されたばかりの古墳「曹操高陵」に日本人学者として初めて正式に入れたことだそうです。
渡邉教授の研究室の公式サイトには、「三国志でも論語でもなんでもいい。中国に興味を持ち、何の偏見も持たずに中国を認識してくれる人が一人でも増えるといいなと思い、研究だけではなく、啓蒙書をかいたり、講演をしたりしています」と書かれています。そんな思いを凝縮した著書、翻訳書、論文など、これまでに100タイトルあまりを世に送り出してきました。今回の本で一番伝えたいメッセージは何か、それが中国で読まれることの意義をどう考えているのか、『三国志』と『論語』の研究がどうつながるのか、お話を伺いました。
――まずは『論語 孔子の言葉はいかにつくられたか』の中国での出版、おめでとうございます。
ありがとうございます。中国は『論語』の故郷です。自分の本が中国で出版できることは名誉なことで、ありがたいことだと思っています。
――この本に寄せた思いをお聞かせ下さい。
宗教も同じですが、学問においても、開祖の言葉は別にたくさんある必要はなく、それが積み重なって経典になっていくことを伝えたいと思っています。また、本に書いていることが全部正しいと盲信するのではなく、古典をどう生かすかは、読み手に左右されるのだということも伝えたいです。
――なぜ『論語』にフォーカスした本を出したのでしょうか。
『論語』などの古典は、時代や個人によって受け取られ方が異なります。だからこそ、時代を超えた普遍性を持って読み継がれてきました。『論語』も、それを手にした一人ひとりの思い に基づいて読まれてきたのです。
それでも、それぞれの時代で『論語』がどのように受容されてきたのか、あるいは、そもそも『論語』はどのように成立したのか、という『論語』の成立と解釈による受容の過程を把握することは必要だと考えます。
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