ノーベル賞受賞の被団協が記者会見、「核抑止」の考えを批判=被爆後80年機に『核のタブー』証言運動展開へ
Record China / 2024年12月25日 12時0分
ノーベル平和賞を受賞した日本被団協の田中熙巳代表委員ら3人が記者会見。田中氏は今回の受賞について「被爆者に対する励ましの意味と若い世代が『核のタブー』を強固にする期待などを感じた」と語った。
2024年12月24日、ノーベル平和賞を受賞した日本原水爆被害者団体協議会(日本被団協)の田中熙巳代表委員(92)ら3人が、東京・内幸町の日本記者クラブで記者会見した。田中氏は今回の受賞について「被爆者に対する励ましの意味と若い世代が『核のタブー』を強固にする期待など、ノーベル委員会の平和への思いを感じた」と語り、2025年に向けて「(被爆後)80年は一つの区切りであり、『核のタブー』を崩されないよう証言の大運動をやっていきたい」と決意を表明した。
『核のタブー』について同氏は「核兵器を使ってはいけないこと」と定義。「被団協はこれまで(運動を)広げてきたことに大きな力を提供してきたが、さらに強固なものにしていきたい」と強調した。その上で、「プーチンやイスラエルの高官が『核』使用の可能性を発言すること自体が問題だ。使われてはいけないのは戦術核兵器も同じである」と訴えた。
さらに「米国では(以前に比べ)年ごとに世論が変わってきた。我々の国連などでの訴えもあり、使ってはいけないという考えが大分普及してきた」と指摘したものの、「政府を変える世論になっていない。残念ながら日本も同じだ」と断じた。「核抑止力の考えを政策として取っており、使ってもよいとの判断が前提となっている」と指摘、「国民が影響力を持っていない」と嘆いた。「これは欧州でも同じで国民も支持している。これを変えることが重要であり、頑張らなければいけないと思う」と訴えた。
また「日本政府が『アジアの危機』」と言って中国、北朝鮮などの恐怖を煽りすぎる」と懸念。「このため国民が怖がっている。恐怖を煽らず、どうやって(これらの国と)話し合っているかを国民に率直に訴えかける必要がある。(我々は)政治家でも学者でもなく被爆者の立場から考えており、(唯一の)被爆国ということで他の国も耳を傾けてくれる」と要望した。
田中氏はノーベル平和賞授賞式の演説で、被爆者援護法(1994年制定)に触れた際「原爆で亡くなった死者に対する償いは、日本政府は全くしていないという事実を知っていただきたい」と原稿にはない予定外の発言をして政府の姿勢を批判した。この時の思いについて「戦争による国民の犠牲は受忍しなければならないという間違いが世界にはびこっているという思いが浮かんだ」と説明。「世界に呼びかけて国民の戦争の犠牲を作らないようにしないといけない思いだった」と心情を吐露した。その上で「核による被害はとんでもない(規模であり)、元々補償できない被害だと考えてほしい」と訴えた。
また晩餐会の場でノーベル委員会のフリードネス委員長から「最初は来年授賞を考えていたが来年では遅いと考えた。運動のためには今年授賞して、世界の世論を大きくして欲しいとの思いがあった」と言われたと内幕を明かした。
また、来年迎える被爆80年については、「核兵器禁止条約まではたどりついたが廃絶までの道のりは遠い」としたうえで、「80年はひとつの区切りなので、大事にして運動を強めていきたい」と強調した。
記者会見で浜住治郎事務局次長(78)は来年3月に米ニューヨークの国連本部で開かれる核兵器禁止条約の第3回締約国会議について「被団協も参加するよう話し合いをしている。(来年に向けて)もう一度被爆者が一体となって、取り組みを議論していきたい」と決意を述べた。
児玉三智子事務局次長(86)は「日本の隅々で被爆者が涙しながら被爆体験を語り続けてきた。(苦労が多く)いろんなことを言われたが、それを乗り越えて平和賞をいただいた」と率直に語った。
年明けにも首相と面会する予定で、田中氏は「唯一の被爆国の日本が核兵器廃絶のリーダーシップを取らないでどうするんだという話をしたい」と思いを込めた。(八牧浩行)
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