ミッドシップ開発は「ゼロからのスタート」、GRヤリスで見せたトヨタ流「もっといいクルマづくり」への新たな挑戦
レスポンス / 2025年1月14日 8時0分
トヨタGAZOOレーシング(TGR)は1月10日、「東京オートサロン2025」にてニュルブルクリンク24時間耐久レース(ニュル24時間)参戦車両の『GRヤリス』と、開発中の直列4気筒2.0リットルターボエンジン(G20Eエンジン)をミッドシップレイアウトで搭載した『GRヤリス M コンセプト』を初公開。ニュル24時間への6年ぶり復帰や、GRヤリス M コンセプトでのスーパー耐久シリーズ(S耐)参戦を発表した。
◆「最終的なゴールは市販化すること」
GRヤリス M コンセプトに直列4気筒2.0リットルターボエンジンを搭載した理由について問われると、GAZOO Racing Companyプレジデントの高橋智也氏は「このエンジンは戦闘力のあるスポーツエンジンということで開発を進めているので、それを僕らのスポーツカーに載せたらどうなるのかというところからスタートしている」と回答。
トヨタ自動車の中嶋裕樹 副社長は、「(2024年5月に行われた)スバルさんマツダさんとのマルチパスウェイワークショップで申し上げたように、低ハイトでショートストロークのエンジンを作ってどんなアピアランスの車でも対応できるようにしていきたい。バッテリーEVだから低ハイトの車ができるんじゃなくてエンジンでもやりたい、という思いから開発を一生懸命やってきた。
モータースポーツを通じたもっといいクルマ作りで、我々の最終的なゴールは市販化すること。『エンジンの火を絶やさない』というモリゾウさんからの熱いメッセージを受けて、しっかり開発をしてくれてるメンバーもいる。 なので、色々な考えがあると思うが、仮にエンジンをこれからやめていくような方がおられたとしても、トヨタとしてはエンジンを最後まで作り続けるカーメーカーになりたいという思いが非常に強くあるし、それを実現するために2リットルのエンジンというのは、モータースポーツのハイエンドから実際に市販化していく、特に電動化時代のエンジンとして活躍するこの幅を持たせたいという思いがある。縦置きでも横置きでも、非常に汎用性の高いエンジンを次世代型として作っていきたい。なので、車名がとあるセリカだとか、とあるMR2…なんて話もあるが、そういった小さな話ではなくて、幅広いレンジでいっぱい載せるぞというようなことを目指している」と語った。
とは言え、中嶋副社長の口から『セリカ』という言葉が飛び出してしまうのは、「僕にもわずかながら、モリゾウさんと同じく“クルマ好きのおじさん”の部分があるから…そこはご理解ください」とのこと。
◆ミッドシップ開発は「ゼロからのスタート」
「MR2にしろ、私が勝手に宣言したセリカにしろ、そういう車名で色々な思いを皆さん共通に語れるというのは、正に先代の人たちの努力。そういう名車を今の時代にどういう形で再現できるかと言えば、ただ単にレストアして作るというのも一つの手かもしれないが、今の時代に応じた形で提供していければとは思う。やはりクラウンなり、かなりロングセラーのブランドがある中で、もう一度原点に返って、その車名に込めた思いだとか、その車の持ってる伝統といったところにもしっかり焦点を当てている。
我々はチーフエンジニア制度をとっているが、これも“車種群”という形で持っている。 昔は1つの車に1人という体制だったが、今はそうではなくて、もう少し大きなかたまり、“群”という形で、思想を持ってこのクルマ群がどういう役割をお客様に対して果たすべきかということも考えながら車群を作ってもらっている。そういう意味では、MR2という答えも一つの解だと思うし、それがセリカなのかもしれない。 色々と話題になったり、そういう賑わいがあることがありがたいし、それをいい意味で期待を裏切るような形で彼らが作ってくれるのではないかと思う」(中嶋副社長)
ミッドシップというレイアウトにも大きな注目が集まる。高橋氏によれば、その背景には「GRヤリス、GRカローラがどうしてもフロントヘビーなクルマであったこと、重心の近くに重いもの(エンジン)載せることで車の動きが改善されるだろうというのをモータースポーツで試してみたいという思いがあった」という。トヨタ自動車 GRヤリスチーフエンジニアの齋藤尚彦氏も「フロントにエンジンがある四駆の(操作性に)、なかなか乗り越えられない壁があった」とする。
ミッドシップエンジン(レイアウト)の開発については「ゼロからのスタート」とのことだ。「正直ミドシップの何たるかもよくわかっていなくて、やっぱり20年30年、間が空いてしまったので技術が残っていないに等しい。本当に今から勉強を始めるという形」(齋藤氏)
「何が起こるのかを味見したいな、というぐらいに思っている。今年のS耐を見てほしい」(高橋氏)
◆「もっといいクルマづくり」への新たな挑戦
組織体制や人材育成の部分でも変化がありそうだ。これまでTGRとROOKIE Racing(RR)は「クルマづくり・人材育成の主体はTGRであり、プライベーターチームとしてモータースポーツ参戦を行うRRはその活動の一部」という関係性だったが、今後は「レースなどの極限状態における走行データを共通言語として、現地現物でクルマや人と向き合う開発パートナー」となることも発表している。ともにモータースポーツを起点としたもっといいクルマづくりや人材育成を、一段高いステージへ引き上げていくことを目指すとし、「TOYOTA GAZOO ROOKIE Racing(TGRR)」としてニュル24時間やS耐に参戦する。
「TGRRそのものが人が鍛えられる一番大きなスキームの変更だと思っている。 RRがモータースポーツレースのノウハウをすごくたくさん持っている、僕らTGRはクルマ作りのノウハウを持っている。その両者がやっぱり合わさることでお互いの強みをより活かしていける。今までは役割分担があって、レースをやるチーム、クルマを作るチームと分かれていたのが、お互い土足で踏み込むようなより深い交流をすることで、自然とその中にいる人の視野が広がるし、スキルも高まっていく。人材育成には一番プラスになると思う」(高橋氏)
TGRは、MoneyGram Haas F1 Teamとの提携や、欧州でのドライバー育成を目的としたHitech TGRの活動、TOYOTA GAZOO Racing Developmentの設立など、モータースポーツにおける3要素「People」「Product」「Pipeline」を鍛える取り組みを進めている。さらに、人づくり・環境づくり・しくみづくりを一気通貫で進めるため、TGRが取り組むモータースポーツのグローバル体制を強化することも発表された。モリゾウ氏をトップとし、その直下に加地雅哉氏、春名雄一郎氏、2名のグローバルディレクターを配置。関係機関、関係会社、レーシングチーム、および、国内拠点、グローバル拠点との連携を強化するとともに、人づくりと環境構築を進めていく。
「今までどちららかというと国内レースの領域と、海外のWRC、WECというワークスモータースポーツの領域が上手くかみ合ってない部分もあったと思う。グローバルで串をさしながら、みんなでもっといいクルマ作りのためのモータースポーツやろうというのがヘッドクォーターの一番の狙い。具体的な体制についてはこれからだが、まずは加地、榛名の2人を軸に活動をスタートさせるという宣言をさせてもらった」(高橋氏)
トヨタ自動車からTGRに希望制でエンジニアやメカニックが異動し、レースで得た知見を市販車開発の現場に持ち帰るという取り組みも加速させるという。
「社内からそういったチャレンジ制度を活用した応募が色々と来ている。やはりやりたい人がスポーツカーをやることが重要。これをやりたいんだという思いを持った人が作るクルマが、将来どんなものになるかすごく楽しみにしている」(齋藤氏)
数々のトピックスとともに、TGRの「もっといいクルマづくり」のための挑戦が今年も始まった。レースの現場でどのようにクルマと人が鍛えられていくのか、期待が高まる。
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