「当初は木造の車両だった」西鉄天神大牟田線が開業100周年 懐かしい写真と映像
RKB毎日放送 / 2024年4月14日 8時17分
西鉄天神大牟田線は12日で開業100周年を迎えました。天神大牟田線は福岡(天神)を拠点に久留米・柳川などを経由し、大牟田までの74.8キロを特急で約1時間で結ぶ路線で、本線のほかに二日市から太宰府までを結ぶ太宰府線と甘木線もあります。福岡県の南北をつなぐ大動脈として沿線住民の生活を支えてきた天神大牟田線。実は当初の計画変更が、今の天神の発展に大きな影響を与えていました。懐かしい写真と映像で振り返ります。
RKB本田奈也花アナウンサー「西鉄天神大牟田線の開業100周年を記念したたラッピング電車が登場しています。きょうから運行を開始します。」西鉄福岡(天神)駅では12日午前、天神大牟田線開業100周年のイベントが開かれ、記念のラッピング電車が披露されました。
大正から昭和へと時代が移り、街が活気にあふれていた1920年代。都市部では華やかな服装に身を包む人も見られました。今からちょうど100年前、1924年4月12日に西鉄天神大牟田線が福岡~久留米間で開業しました。最初の車両は木造でした。
福岡鉄道史料保存会吉富実理事長「大正13年に福岡ー久留米間でつくった九州鉄道の1形電車。木造ですけど最初から時速80キロ以上の運転ができるような高速仕様の電車になっています。」元西鉄の社員で、定年後に福岡鉄道史料保存会を立ち上げた吉富実さんです。
福岡鉄道史料保存会吉富実理事長「これが福岡駅ですね。今のパルコの位置です。第一次世界大戦が終わってすぐくらい。ちょうど今から100年前に天神大牟田線が開業した頃の写真です。」
開業当時の久留米駅の前には、人力車がたくさん並んでいました。国が管轄している鉄道が主に汽車だった時代に、「汽車ヨリも早ウ御座イマス」と高速性を売りにしていた西鉄天神大牟田線。1939年7月1日には、福岡~大牟田までの全線が開業しました。
福岡鉄道史料保存会吉富実理事長「計画では最初から熊本まで伸ばそうという構想でつくった電車なんですけど、『熊本の鉄道は熊本県でつくるんだ』という政治的な思惑の不一致があったみたいで、戦争が激しくなったので申請書は戻されています。」
天神大牟田線がどのように計画され、誕生したのか。当時の貴重な文書が残っていました。
福岡鉄道史料保存会吉富実理事長「これは『特許状』といって、国から『線路をひいて良い』と、大正3年4月6日に内閣総理大臣の山本權兵衞と内務大臣の原敬が大牟田線をつくった会社に与えた特許状です。『福岡県筑紫郡住吉町大字春吉』今の西中洲ですね。春吉を起点にして久留米までの軌道特許を出したという書類ですけど、なぜバツされているかというのは、その後大正8年に春吉の起点を天神に変えたから。これは非常に歴史的な書類ですね。」
起点となる駅が今の西中洲から天神に変更。このことが福岡の街を大きく変えることにつながります。
RKB本田奈也花アナウンサー「再開発が進む福岡市天神です。西鉄天神大牟田線が開業するまで商業施設はありませんでした。」周囲に商業施設がほとんどなかった当時の天神。福岡駅が出来たことで岩田屋が天神に進出するなど、街が活性化する一つのきっかけとなりました。1961年には福岡駅が高架化され、商店街「西鉄名店街」がオープンします。その後も天神は発展を続け、九州を代表する繁華街へと成長しました。
福岡鉄道史料保存会吉富実理事長「福岡県の中部から南部を縦貫する『「都市間高速鉄道』天神大牟田線が地域の社会とか経済に与えた影響は非常に大きいですね。」さらに、沿線では住宅の開発も進み、天神大牟田線は通勤・通学の足となっていきました。
平田利光さん(66)「花畑駅付近が立体交差になったんですけど、その時の記念にもらった裁縫セットです。」
天神大牟田線を学生時代から利用している平田利光さんです。
平田利光さん 「私が19歳、大学生の時の定期券です。49キロで1万160円でした。昔使っていた時刻表です。西鉄の電車がある時間にどこにいるのか一目で分かる「ダイヤグラム」です。犬塚を7時54分くらいに出まして、8時50分ごろに福岡の天神に着く。45年以上のつき合いなので、本当に生活の中にずっとあったような気がします。」
RKB下濱美有記者「西鉄天神大牟田線春日原駅近く、年季の入ったベージュの建物が見えてきました。実はこの建物、開業当時つまり100年前からこの場所に建っているんだそうです。」
天神大牟田線の「心臓」として、100年間に渡って支えてきた春日原変電所です。
西鉄鉄道事業本部施設部古賀史朗電力課係長「電力会社から2万2千Vの交流電気を購入し、ここの変電所の中で直流の1500Vに変換をして、電車の電気、駅とか踏切に使う電気に変えて送り出す。電車を動かすための心臓部。」
大正時代の電車は600ボルトが主流でしたが、西鉄は開業時から1500ボルトを採用。より早く、より多くの乗客を輸送することが可能で、1983年には最高速度が100キロに。利用者は1992年度に年間1億2788万人を超えました。
高架化が進み、先月には新駅の「桜並木駅」が開業した西鉄天神大牟田線。西鉄は「更なる利便性の向上を目指し、愛される電車にしたい」と話しています。一方、人口の減少に伴い、利用者が減っている駅もあり、今後、路線をどう維持していくのかも課題となっています。その主な理由は1997年の大牟田市の三池炭鉱の閉山や福岡県南部の人口減少などがあげられます。
西鉄によりますと2022年度の天神大牟田線の輸送人員は1日平均23万2000人、年間8483万人で、ピーク時より約4200万人減っています。こうした現状を少しでも打開しようと、西鉄は新たな取り組みも行っています。
今年で運行開始から5周年を迎えた「THE(ザ)RAIL(レール)KITCHEN(キッチン)CHIKUGO(チクゴ)」地元の食材にこだわった料理が楽しめる観光列車で、3月からは太宰府でおよそ80分停車する新しいコースでの運行も始まっています。
そして、自転車を車内にそのまま持ち込める「サイクルトレイン」も導入されています。土日・祝日のみですが、西鉄の公式LINEアカウントで事前に予約すれば、持ち込み料300円で利用できます。
また、西鉄は11日、PayPayドームでホークス戦がある日に、福岡(天神)駅発の有料座席列車「Nライナー」を試験的に運行すると発表しました。1日3便で1便あたり200席を運賃とは別に300円で販売します。二日駅まで11駅には停車しません。まずは4日間で実施してみて、利用客の反応を見て、今後どうするのか検討するということです。
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