「労働時間を減らす元気がない」働き方改革に苦悩する救急現場の若手医師 医師の負担減らす特定行為看護師も
RKB毎日放送 / 2024年4月29日 16時47分
4月から始まった「医師の働き方改革」。患者の命と向き合いながら、自身の働き方をどう変えていけばいいのか。救急医療の現場で苦悩する若手医師の一日に密着しました。
救急現場で働く5年目の若手医師が早出した理由は…
地域医療の中核を担う福岡市中央区の「済生会福岡総合病院」。救急車を24間体制で受け入れ、主に重症患者の治療を行っています。
救命救急センターで患者の処置にあたる山本駿医師。医学部を卒業して5年目の若手医師です。心臓と血管の病気を専門とする循環器内科の病棟を担当していますが、毎日のように救急科の応援要請に対応しています。この日の山本医師の出勤は、就業開始時間40分前の「午前7時50分」でした。
記者「昨日も遅かった?」
山本駿医師「早く帰れたが、自分の仕事を遅くまでやっていました。午後10時くらいです。」
早出して臨んだのは循環器内科の先輩医師との勉強会。これは労働時間にあたらない「自己研鑽」で自らの意思で参加しています。勉強会が終わるとすぐにICU=集中治療室に入院している患者たちの元へ向かいます。
山本駿医師「この救命センターに入院している人は毎日、毎日(状態が)変わるので、朝と夕でずっと診ていないといけない」
回診の合間に、循環器内科の外来の医師から電気ショック治療の要請が入ります。そして、休む暇もなく救急科から応援要請。急いで救急の処置室に向かいます。一息つくことができたのは、正午を過ぎてからでした。
午後になっても救患への対応や患者の家族への説明など、ほとんどの時間を救急の治療室で過ごしました。
夜になっても仕事は続く…「労働時間を減らす元気がない」
記者「もう午後7時半ですが、まだ続く?」
山本駿医師「まだ患者さんがいます。明日手術が僕が2件担当しているんですけど、その人のデータのチェックと準備とか指示出し、あいさつをしにいかないと。患者さんが寝る前に、消灯が22時なので」
記者「自分なりに労働時間を減らすという努力はできている?」
山本駿医師「労働時間を減らそうとする元気がない。目の前の事を考えているから月の労働時間に目が向かない」
取材中にも電話が鳴ります。
山本駿医師「行かないと…」
山本さんの時間外労働は、月に平均100時間、年間1200時間ほどにのぼります。
今月から始まった医師の働き方改革では、勤務医の休日・時間外労働の上限は原則、A水準といわれる年間960時間です。ただ、救急医療を行う医療機関は特定労務管理対象機関の指定を受けることで年間の上限がB水準の1860時間に緩和されます。
済生会福岡総合病院では、山本さんが所属する循環器内科や脳神経外科、心臓血管外科など、6つの診療科について特定労務管理対象機関の指定を受けています。
久保田徹副院長「どうしても救急でやっていますのでやはり重症の方が立て続けに来たりすると労務が重なります。診療の制限はできないと思う。うちの病院の性格上ですね」「むしろB水準を申請することによって労働実態をきちんと把握してそれをフィードバックしながらどういう業務を削減できるのか。時間をかけて960時間に持っていこうと思って変えたところです」
医師に代わって医療行為「特定行為看護師」とは
医師の負担を減らすためこの病院が5年前から取り組んでいるのが医師の代わりに看護師が一部の医療行為を行う「特定行為看護師」の育成です。
現在、19人が特定行為看護師の研修を終了しています。
特に、救急の患者が回復する過程で行われる人工呼吸器の設定変更や投与する鎮静薬の調整などの医療行為をできることが、医師の負担軽減につながっています。
救急科久城正紀医師「代わりをしてくださるのでめちゃくちゃ助かりますね」
済生会福岡総合病院は今月、特定行為だけを担当する5人の専門チームを作りました。外来や病棟に所属しないため、要請に応じてフリーに動くことができるのがメリットです。専門チームは毎朝のミーティングで外科や救急科の医師から要請された特定行為を確認し分担を決めます。
特定行為看護師副田剛希さん「患者さんのためにタイムリーにできるので。例えば患者さんが呼吸が苦しいとなったとしても自分たちが側にいるので(呼吸器の)設定を変えてあげたりすると患者さんも楽になったり」
特定行為看護師三山麻弓副看護部長「入院中の患者さんの時間軸というのがあるので、そこに医師が合わせていくというのは難しいんですね。手術があったり外来があったりするので、フリーに動ける看護師がいてある程度患者さんのタイミングに合わせて処置をするということも患者さんに還元できる一つかなと」
済生会福岡総合病院は、医師の負担を減らすとともに「看護師のスキルアップ」と「患者へのタイムリーな対応」を目指して今年6月には特定行為看護師の専門チームの人数を増やす方針です。
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