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JRA通算1500勝達成を達成した騎手・戸崎圭太が語る、怪我からの復活とコンディショニング術

Rolling Stone Japan / 2024年10月3日 17時0分

史上21人目、現役では9人目の記録であるJRA通算1500勝達成を達成した戸崎圭太騎手(Photo by Mitsuru Nishimura)

史上21人目、現役では9人目の記録であるJRA通算1500勝達成を達成した騎手・戸崎圭太。2019年のJBCレディスクラシックで落馬し、右肘開放骨折の重傷を負いながらも、見事な復活を遂げた。ジャスティンミラノと挑んだダービー(G1)の話、そして怪我からの回復にいたるまでのメンタルや体調管理、自身のカラダとの向き合い方やコンディショニング術をきいた。

──ジョッキーの日々のルーティンはどんな感じなのか、とても気になります。

戸崎:それぞれのジョッキーによって違うと思いますが、僕の場合は火曜日から金曜日までは「攻め馬(馬の調教のこと)」が毎朝あります。3時間くらいの間に3、4頭やる。昔、地方競馬場にいた頃は15頭とか連続で「攻め馬」をしていました。

──それって相当な運動量ですよね?

戸崎:そうですね。土日はレースなので、月曜日にちょっと自主トレみたいなことをやっています。ジョギングを30分くらいだったり、体幹のトレーニングだったり基礎的な部分。それだけでリラックスにもなるというか、リフレッシュにもなるんで。あと、瞑想もやりますね。いわゆるマインドフルネスと呼ばれるもの。最初は「いったい俺は、なにをやっているんだろう?」なんて思っていたこともありますが、続けていくと本当に気持ちよくなってきました。

──まずは、馬のこと、聞かせてください。やはり馬によって性格なども違うのでしょうね。

戸崎:全く違いますね。人と同じように気性の荒い馬もいれば、おとなしい馬もいる。それを見極めるのはジョッキーとして当たり前なのですが、いかに早く気付いてあげられるかもスキルの一つだと思います。

──ジョッキー同士で、「あの子はちょっと難しいよね?」みたいな話もします?(笑)

戸崎:しますよ(笑)。もちろんジョッキーによって馬の捉え方も違うので、自分とは違う印象を持っているなと思うこともありますけどね。

──歓声と怒号が飛び交う大観衆の前で馬に乗るのは相当なプレッシャーかと思うのですが、どうやって平常心を保っておられるのでしょうか。

戸崎:僕はもともとすごく緊張する方で、もうそういう大きなレースじゃなくて、もう一レースとか二レースとかでもゲートの中に入って、スタートを切る瞬間とか本当に心臓が飛び出しそうになります(笑)。「うまくスタートを切らなければ」とこちらが思っていても、相手も生き物だから、なにを考えているのか分からないし、その時の気分や体調にも左右されますし。最近は少しずつ慣れてきて、緊張も随分なくなってきてはいますけどね。



──それはどうしてでしょうか。

戸崎:馬との信頼関係ができてきたからだと思います。それに、もしスタートをミスしたりとか、レースでうまくいかなかったりした時であっても、それも今の自分のスキルというか。運命みたいなところもありますし、年を重ねていく中で、それを受け入れることができるようになってから、少し見え方が変わってきたように思いますね。

「人馬一体」という言葉がありますが、それができていると自ずと自信にも繋がってくるし、信頼関係もできてくる。そうすることで自分の気持ちも楽になっていったのだと思います。とはいえ、先日のダービーで一番人気の馬に乗ったのはとてつもない経験でしたね。

──そのお話もぜひお聞きしたかったんです(笑)。

戸崎:初めての経験でしたし、自分自身の財産になりました。ダービーの動員数って10万人を超えるんですけど、そんなに人があつまることってそんなにないですし、一番人気の馬ですから「めちゃくちゃ注目されているな」とは感じていました。

前日も普通に眠れたし、朝も普通に起きて過ごしていたのですが、いざダービーへ向かうための準備をし始めたあたりから、尋常じゃないほど緊張してきましたね。「あ、今自分はプレッシャーを感じているわ……」と久しぶりに思いました(笑)。でも、そのプレッシャーもうまく利用してレースに臨めたので、そこも自分で成長できた部分なのかなと。

──結果についてはどんなふうに思いましたか?

戸崎:とても悔しいですが、そこも素直に受け入れることができましたね。今、自分がやれることはやれたと思っているし。もちろん「ここはこうした方が良かったな」と思う部分がないわけではないのですが、そこは次の課題として取り組んでいけたらいいのかなと思っています。でもなあ……どっちか勝っていればねえ(笑)。そういうところなんですよ、僕は。

──ちなみに戸崎さんは、「逃げ」と「差し」どちらが好きですか?

戸崎:「差し」の方が気持ちいいですよね。でも乗っていて勝ちやすいというか、基本は前に行くことなので、どちらかというと「逃げ」というか「先行」の方が得意ではありますね。

──馬も勝敗って分かっているんですかね?

戸崎:分かっているんじゃないかなと思う瞬間はよくありますよ。例えばずっと負け込んでいた馬も、一度レースで勝つと自信を取り戻して調子が良くなるなんて話はよく聞きますし。ずっと調子が良かったのに負けたことがきっかけとなって調子が悪くなることもあって。

──ジョッキーの気持ちが伝わったりするのでしょうかね?

戸崎:それもあると思いますね。浴びている歓声の雰囲気でも気づくだろうし。緊張するタイプの馬も当然います。心臓がバクバクしているのが、こちらに伝わってくるんですよ。だから、なるべく人間の方が平常心を保ってあげなければ……と思っていますね。あ、でも逆に人間が緊張していると、「大丈夫だから俺に任せろ」というタイプの馬もいる。そういうところも含めて可愛いですよね、馬は。

──2019年、JBCレディスクラシックでの落馬による大怪我をされ、約半年という長期休暇の後に復帰するもなかなか調子が出なくて大変だったとお聞きしました。

その時の怪我はかなり大きく、神経もやられてしまって手も握れない状態だったんです。本当に復帰できるか分からないままリハビリを続けるのは確かにきつかったのですが、「とにかく今できることをやるしかない」という気持ちで祈りながら日々続けていましたね。ただ、「続けること」それ自体はそんなに苦ではなかったんですよ。

僕、小学校四年から中学校三年まで野球をやっていたのですが、ずっと補欠で。だけど、なんか絶対にレギュラーになれる気持ちでい続けたんですよね(笑)。中学校3年生くらいまで「プロ野球選手になれる」とさえ信じていたんです。そういう楽天的な考えの持ち主なので、周りからしたら苦境と思うような状況でも平気なのかもしれない。



──ポジティブな性格なのでしょうか。

戸崎:多分あんま先のことを考えるより、「今やることに集中する」「とにかくコツコツとやる」のが大事だと思っていて。あとは、やっぱり馬との絆というか。リハビリしていて「しんどいな」と思いながらも、「またあの馬に乗って大きなレースに挑みたい」という気持ちで頑張れた部分もありますね。いろんな馬との出会いがあり、それぞれにドラマとかストーリーがあったので。

──落馬を経て見事復活されて、戸崎さんは、ライフスタイルの中でコンディショニング(健康維持)をどのくらい意識されていますか?

戸崎:一番大きなところはグルテンフリー、小麦を抜くことをしています。それを始めたのが6、7年前です。最初の2年間は、調味料から何から全て小麦粉の入っていない食材を使っていました。そのため、僕よりも妻の方が苦労したと思います。今は調味料に関してはそこまで厳密にはしていませんが、基本的に小麦は摂取しないようにしています。

──少し緩めのルールにしておいた方が、ストレス発散にもいいかもしれないですね。食生活の部分で他に気をつけてらっしゃることは?

戸崎:タンパク質やミネラル、ビタミンなど体にとって大切な栄養はサプリメントでも補うようにしています。例えば、腸内細菌を増やす「アルベックス ALBEX 乳酸菌生成エキス サプリメント」や、夏バテ防止に最近取り入れた「マイプロテイン クレアチン」、ビタミン剤は「Lypo-C Vitamin C+D」を常用しています。塩はミネラルがたっぷり入った天然塩で、プロテインは「ニューサイエンス ヘンププロテイン」。

あと、基礎体温を上げると言われているスパイス「ヒハツ」や、免疫力を上げる効果があるとされている「ターメリック」などもよく使っていますね。この辺りはトレーナーからいろいろ教わり、試していく中で自分に合っているものが残っていった感じです。

──「腸活」なんていう言葉が流行ったり、「第二の脳」などと言われたりしていますが、やはり腸を整えることは大事ですか?

戸崎:そう思いますね。腸壁って簡単にいうと網状になっていて、腸の調子が良くないとその網が緩くなり、その隙間から体に悪いものが漏れ出てしまうらしいんですよ。その網状の腸壁を引き締め、悪いものが体に漏れ出さないようにすることが健康の秘訣だといわれています。

──コンディションを整え、翌日のパフォーマンス向上のためにも睡眠は大切にされていますか?

戸崎:していますね。1日8時間は寝るようにしています。ただ仕事柄、3時とか4時に起きなければならない時があって、逆算すると19時には就寝しなければならなくなる。それは難しいので、昼間に仮眠などして調整しています。睡眠時間って、人によってちょうどいい長さがあると思うんですよ。人によってはもっと必要な場合もあるし、5時間くらいでちょうどいい人もいる。それは自分で見つけていくものなのかなっていうのは思っています。

──睡眠の際、リカバリーウェアTENTIALというブランドの「BAKUNE」というパジャマを着用されているとうかがいました。

戸崎:はい。2年ほど前、ジョッキー仲間から勧められて取り寄せました。もちろん、科学的にもいろいろ考えて作られていると思うんですけど、僕は感覚派なのでその辺は全く詳しくなくて(笑)。でも着てみただけで、「これは素晴らしい」と肌で感じましたね。とにかく着心地が良くて、軽くて着ている感じがしないんですよね。

関連記事:戸崎さんが語る、グルテンフリーへのこだわり、健康管理術【TENTIAL コンディショニングマガジン】


戸崎圭太
1999年にデビュー。若手時代から存在感を放ち、2008年で306勝をマークし初めて地方全国リーディング獲得。2011年には安田記念を制して初のJRAG1勝ち、2013年3月から中央入りを果たした。2019年にはJRA通算1000勝を達成。NARとのダブル1000勝は史上4人目。

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