Mei Semonesが語るジャズ、ボサノヴァ、J-POPの融合「これこそ私が望んでいた音楽」
Rolling Stone Japan / 2024年10月29日 18時10分
日本人の母を持つニューヨーク拠点のシンガーソングライター、Mei Semones(芽衣シモネス)が、11月3日開催の「アジアで注目を集めるアーティストが一堂に介する」ショーケース・フェス、BiKN Shibuyaに出演する。ジャズ、インディーロック、ボサノヴァなどを融合し、日本語と英語を織り交ぜた歌詞で歌うEP『かぶとむし』で話題沸騰中の彼女が、ミュージシャンとしての歩みを語ったインタビューをお届けしよう。
Mei Semonesにとって2022年後半は変化の連続だった。心機一転、ニューヨークに引っ越したばかりだった。新しい恋が芽生えると同時に、親友との友情に終止符が打たれた。その年の春にバークレー音楽学校を卒業し、決して甘くない大人の現実になんとか順応しようとしていた。
「人生の過渡期だった」とSemonesも言う。当時彼女は日本語幼稚園の先生として正規雇用で働きながら、創作活動の時間を取るのに苦労していた。「10時間労働を終えてから作曲をしようと頑張っていた。『こんなのやってられない。自分がみじめだ』って感じだった」。
負担をかかえながらも、その期間にSemonesは不安定な時期と正面から向き合う曲をいくつも書きあげた。それらの作品が今春リリースされた3枚目のEP『かぶとむし』のベースになっている。インディーロックとメロディアスなポップの要素を盛り込んだ『かぶとむし』は、この数年彼女がリリースしてきたジャズベースの実験的な音楽をさらに膨らませ、今まででもっともエキサイティングで完成度が高い。収録にはヴィオラがノア・レオン、ヴァイオリンがクローディアス・アグリッパ、ベースにジェイデン・ラソ、ドラムにランソン・マカファーティが参加。いずれもバークレー時代に知り合った面々で、制作にも携わってもらった。
Semonesの音楽を特定のジャンルに分類するのは難しい。本人も十分承知しているが、とくに気にはしていない。自分の音楽を一言で表現すると?という質問に、本人は「ジャズとボサノヴァにインスパイアされたインディーJ-POP」と答えるきりだ。この1~2年あらゆる層の観客の前で音楽を披露し、韓国のインディーロックバンドSay Sue MeからオルタナポップシンガーBRATTY、台湾のElephant Gymまで様々なアーティストと共演する機会にも恵まれた。だが初めて自分の音楽を聴いたファンがどう受け止めようと、本人はあまり気にしていない。
日本語のタイトルがつけられた新作EPは、ジャズ寄りの「てがみ」、観客を鼓舞するメロディアスなインディーズロック「いなか」「わかれのことば」など、実に多種多様だ。Semonesいわく、最初のころは大学で習ったアルペジオで作曲していたそうだ。楽曲のギターラインの基盤になるアルペジオについて、「なんか気持ち悪いな、って感じだった」と本人。「モダンジャズや即興ではよく使われるけど、ポップソングにはどうなんだろう?って」。
音楽ルーツとこの先の未来
「新しい自分のスタート地点に立っている気分」
ジョン・コルトレーンからスマッシング・パンプキンズなど、あらゆる音楽に影響を受けた独特なバックグラウンドと感性のルーツは、ミシガン州アナーバーで過ごした幼少期にまでさかのぼることができる。最初にハマったのはギターで、『バック・トゥ・ザ・フューチャー』で主人公のマーティ・マクフライが「ジョニー・B・グッド」を演奏するシーンを見たのがきっかけだった。その後は「天国への階段」、レッド・ホット・チリ・ペッパーズと10代初期にありがちな道をたどり、最終的に中高生でジャズの沼にどっぷりハマった。
Semonesの歌詞は英語と日本語の両方で書かれている。たまたまそうなったわけではなく、奇をてらったわけでもなく、Semonesにとってはアーティストとして自分らしさを表現する上で重要な要素だ。若かりしころの作曲について、「日本語と英語を混ぜて作曲するまでは、曲を書いてる実感がわかなかった」と本人は語っている。「大学1年目まで日本語で作曲したことはなかった。そしたら、『これこそ私が望んでいた音楽だ』って思ったの」。
Photo by Maria-Juliana Rojas for Rolling Stone
多くの場合、観客は英語圏の人々が中心であることは本人も十分理解し、表現上のもうひとつのツールとして英語と日本語を自在に切り替えている。そうやって歌詞から歌詞へ言葉を切り替えては観客を驚かせ、なじみのある言葉から異言語に切り替えては際立たせたい音楽性やストーリー性を強調するのだ。ただし、先月日本で行われた初のソロライブの際は例外だった。ちなみにこのときのライブは満員御礼で、Semonesの母親も友人15人を連れて見に来ていた(編注:今年1月、chelmico・鈴木真海子をゲストに迎えてBlue Note Placenに出演)。
今後については、ある晩はBowery Ballroomで、次の晩はBlue Noteで、といった具合に、ジャズとロックの両方面で活躍したいと意気込んでいる。すでにデビューアルバムの制作も進行中で、スタンダードジャズ、ワルツ、インディーロックなど、この数年間にSemonesが融合してきたありとあらゆる要素が感じられる「なんでもあり」な作品になるそうだ。
全体的に、前より創作活動に時間がさけるようになったのがとくにありがたいという(今では幼稚園の仕事が副業だ)。新たな拠点ニューヨークで演奏をするたび、「こんなことができるなんて、本当にすごい」という思いを噛みしめている。『かぶとむし』は3枚目のEPだが、Semonesはまだ序の口だと考えている。本人いわく、「新しい自分のスタート地点に立っている気分なんだ」。
今年10月に新曲「Dangomushi」をリリース
From Rolling Stone US.
BiKN Shibuya 2024
日程:2024年11月3日(日・祝)
時間:OPEN 11:00 / START:12:00 (予定)
会場:東京 渋谷 O-EAST / O-WEST / O-nest / O-Crest / duo MUSIC EXCHANGE / 7th floor
※Mei Semonesは14:25〜duo MUSIC EXCHANGEに出演
詳細:https://bikn.asia/
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