1. トップ
  2. 新着ニュース
  3. 芸能
  4. 音楽

wyolica、葛谷葉子、bird、25周年を迎えた3組がミニライブで示した現在地

Rolling Stone Japan / 2024年12月17日 17時54分

左から、bird、葛谷葉子、wyolica(Photo by 上飯坂一)

2024年12月13日(金)に25周年を迎えた、wyolica、葛谷葉子、birdが一堂に会したミニライブ&トークイベントがタワーレコード渋谷店B1F CUTUP STUDIOで開催された。オフィシャルイベントレポートを掲載する。

【画像】ライブの様子

2024年12月13日、渋谷の街がいつも以上に人並みで揺れる金曜の夕暮れ。タワーレコード渋谷店B1F CUTUP STUDIOにて、wyolica、葛谷葉子、birdが一堂に会するミニライブ&トークイベント「Sony Music Labels presents 25th Anniversary Artists LIVE & TALK」が開催された。これら3組のアーティストは、いずれも1999年にソニーミュージックからデビューした、いわば同期生。2000年代初頭の音楽シーンに新鮮な空気を吹き込み、その後も各々の歩幅で音楽的キャリアを積み重ねてきた彼らは、どのような「25周年」を迎えたのだろうか。

開演にあたって、まずはイベントの司会を務める栗本斉から簡単なアナウンスがあった。1999年とはどんな年だったか——EUにユーロが導入された年、ドコモのiモードが開始された年、映画『マトリックス』や『シックス・センス』が公開された年。西暦と出来事は対応するが、そこから実に25年、四半世紀もの時が経ったような実感はあまりない。この歳月の間に、何が変わって何が変わらなかったのか。会場に集ったファンたちも、久々に顔を合わせたアーティストたちも、どこかでそれを確かめようとしていたように思える。観客のメインは、同世代と思しき40〜50代だが、ときおり30代前後の若い顔ぶれも見受けられた。


wyolica

最初にステージへ姿を表したのはwyolica。ヴォーカルのAzumiは赤いドレスにヘアバンド、ギターのso-toはニット帽姿というナチュラルな出で立ちが印象的だ。EPICソニーのオーディションを通して出会った彼らは、2年間の準備期間を経て1999年にシングル「悲しいわがまま」でデビュー。翌年には大沢伸一プロデュースによる1stアルバム『who said "La La..." ?』(2000年)をリリースし、いきなりヒットチャートの一角に食い込んだ。so-toは当時、プロデビューしたことを家族にも秘密にしていたという。2013年に一旦解散したwyolicaだが、結成20周年となる2019年に再結成。そして今年、「メトロにゆられて」という待望の新曲を発表した。wyolica流の「シテーポップ (so-to談)」を目指したというこの曲は、シティポップ的なニュアンスを漂わせつつも、wyolicaらしいフォーキーなR&Bらしさも感じさせる。2曲目にして最後を飾るのは、デビューアルバムから「さあいこう」。温かなムードに満ちた、ファンから最も愛されてきた1曲だ。ギターとボーカルだけのシンプルな編成が、逆に歌詞のメッセージを引き立てる。「さあいこう/君とこのまま/未来は僕たちを待ってるのさ/すべての心のうち/見せずとも/時代が僕たちを待ってるのさ」。何度もリフレインされるコーラスは、はからずもこの日のイベントの主題を暗示しているかのようだった。朗らかなムードで行われたトークパートでは、デビュー当時の懐かしい思い出の数々が語られた。同じく大沢伸一のプロデュースでデビューしたbirdには盟友すぎて「さん」付けができないこと、葛谷葉子の楽曲センスにずっと尊敬の念を抱いていたこと。作曲家志望としてオーディションを受けていたwyolica結成前のso-toが、デモテープに「CHARAさんに歌ってほしいです」と書いていたこと。時間さえ限られていなければ、そのまま何時間でも語り続けてしまいそうだった。「メトロにゆられて」のアナログ7インチリリースの予定や、2024年12月27日に恵比寿BLUE NOTE PLACEでのライブ告知など、今後の予定もアナウンスされた。




葛谷葉子

続いてステージに現れたのは葛谷葉子。彼女が人前で生の歌声を響かせるのは、実に22年ぶりだという。デビューアルバムの『MUSIC GREETINGS VOLUME ONE』(1999)以来、その天才的な音楽性がデビュー当時から高い評価を受けてきたが、シャイな人柄ゆえにその後はCHEMISTRY「最後の夜」(2000年)やBoA「LOVE LETTER」(2007年)など、ソングライターとしての活躍の方が目立っていた。しかし2021年ごろより再びソロアーティストとしての活動を本格化させ、2022年には新作となる3rdアルバム『TOKYO TOWER』を発表し、先月末(11月27日)には待望の4thアルバム『Dramatic』をリリースした。しかし活動再開後もリリースライブなどは行っていなかったため、半ば幻のアーティストのようになっていた。その場に集う誰もが、いまの彼女がどのように歌うのかを心待ちにしていた。シンプルな白いニットに身を包んだ葛谷は、ギタリスト・土肥真生と二人編成でゆっくりと息を整える。1曲目に披露されたのは「Dramatic」。新作アルバムのタイトル・トラックでもあるこの曲は、デビュー当時からのR&B的なセンスに、よりメロウな浮遊感と繊細なヴォーカルが加わったような印象を受ける。本曲のアレンジを担当したのは、アイドルグループであるフィロソフィーのダンスの作編曲で知られる宮野弦士。若い才能からもリスペクトされる彼女の歌声は少し緊張気味に聴こえたが、それでも観客を酔わせるには十分だった。続く2曲目は、これも新作アルバムからのバラード「Youthful Days」。そのタイトル通り、過去の恋心を振り返るようなバラードだが、その歌詞には「過去の恋への追憶」にとどまらない、今の心をもときめかせるような熱さが渦巻いていた。アルバムバージョンの編曲を担当したのは名手・冨田恵一 (冨田ラボ) で、そのアレンジメントはまさに職人技である。しかしギターとボーカル、そして少しのバックトラックという形で披露されたライブバージョンは、そのシンプルさが逆に胸を打った。トークパートでは、デモテープを送ったところ二次審査で落ちてしまったが、その中のスタッフが音楽性を気に入ったことでデビューが決まったこと。昔から生歌では緊張しがちで、公開収録で「最後の夜」のサビをまるまる飛ばしてしまったことなど、懐かしい日々の数々が語られた。来年には「Dramatic」のアナログ盤リリースも決まっている葛谷葉子。もし叶うならば、また彼女の生声を聴きたいと願うファンもきっと多くいることだろう。


bird

この日のトリを務めたのはbirdだ。1999年当時、wyolicaと同じく大沢伸一との出会いを経てデビューした彼女は、ファーストアルバム『bird』(1999年)が70万枚を超える大ヒットを記録。関西発の新たなR&Bディーヴァとして、鮮烈な印象を残した。その後もスマッシュヒットを連発し、クラブシーンとライブシーンを行き来しながら音楽的指向を深化。レゲエやブラジル音楽、沖縄音楽などの幅広いジャンルを取り入れながら、現在まで懐の広い音楽活動を行ってきた。ギタリスト・樋口直彦との二人編成で届けられた1曲目は、デビューアルバムから「空の瞳」。ジャズやソウル、ポップスがスムーズに溶け合うそのサウンドは、かつての自由闊達な雰囲気を保ちながら、どこか余裕をまとっている。軽やかなギターと彼女の包み込むようなヴォーカルが、25年を経ても音楽が古びない理由を示しているかのようだ。続いての2曲目「SOULS」では、ステージを降りて客席の真ん中に腰かけ、超至近距離での生歌を披露。この日登壇した3組の中で最もコンスタントにステージに立ち続けてきた彼女の歌声は、デビュー時から変わらない力強さとリズムに溢れていた。観客たちもコール&レスポンスでそれに答え、CUTUP STUDIOを温かな熱気が包んだ。その余裕と貫禄は、アーティストとしての充実を伺い知るに十分だった。トークパートでは、大学に入って軽音学部に入ってから初めて歌い始めたというデビューまでの経緯や、デビュー前に大沢伸一(MONDO GROSSO)のクラブイベントに、wyolicaのAzumiと共に出演していた際の懐かしいエピソードが語られた。当時のbirdはアフロヘアーで、Azumiは銀髪だったため、電車の中では大目立ちし、アフロヘアーが崩れるために電車でも常に「背筋が直角」だったとのことである。今年9月にはデビュー25周年記念プロジェクトとして、オールタイム・リエディット・ベスト『25th anniv. re-edit best + SOULS 2024』をリリースし、新作アルバムも完成しているbird。来年も、オーディエンスに素晴らしい時間をプレゼントしてくれることだろう。

wyolica、葛谷葉子、bird——それぞれ2曲ずつ、合計6曲が披露された短いステージだったが、その余韻は十分に濃密だった。「メトロにゆられて」と「さあいこう」に込められたwyolicaの歩み、「Dramatic」と「Youthful Days」で示された葛谷葉子の再始動、「空の瞳」と「SOULS」に詰まったbirdの普遍性。1999年という出発点から、四半世紀の歩みを経てなお創造を続けるアーティストたちの充実した現在地を目撃した一夜であった。

レポート:加藤賢
写真:上飯坂一


<リリース情報>



wyolica
アナログ7inchシングル『メトロにゆられて』
2024年12月25日(水)発売
品番:MHKL-97 価格:2420円(税込) ※完全生産限定盤
Side-A メトロにゆられて
Side-B シェルター(Folky Soul 2024 ver)
※各種DSP配信中
DL/ST:https://lnk.to/Metro-ni-yurarete



葛谷葉子
アルバム『DRAMATIC』
CD 2024年11月27日(水)発売
品番:MHCL 3116 価格:3300円(税込)
LP 2025年1月22日(水)発売 ※完全生産限定盤【クリアヴァイナル(透明盤)】
品番:MHJL 408 価格:4400円(税込)



bird
デビュー25周年ベスト盤(アナログ)『bird /25th anniv. re-edit best selection + SOULS 2024』
2024年11月27日(水)発売
品番:MHJL-359 価格:4,400円(税込) ※完全生産限定盤
https://bird-25th.lnk.to/_LP

CD『25th anniv. re-edit best + SOULS 2024』
品番:MHCL-3096 定価:3,500円(税込)
購入はこちら https://bird-25th.lnk.to/best
※各種DSP好評配信中
bird『25th anniv. re-edit best + SOULS 2024 (Selected+1 Edition)』
https://bird-25th.lnk.to/reeditbest

この記事に関連するニュース

トピックスRSS

ランキング

記事ミッション中・・・

10秒滞在

記事にリアクションする

記事ミッション中・・・

10秒滞在

記事にリアクションする

デイリー: 参加する
ウィークリー: 参加する
マンスリー: 参加する
10秒滞在

記事にリアクションする

次の記事を探す

エラーが発生しました

ページを再読み込みして
ください