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異例ずくめの袴田さん再審公判大詰め 依然続く全面対決、夏ごろ判決か

産経ニュース / 2024年5月5日 10時0分

昭和41年に静岡県内でみそ製造会社の専務一家4人が殺害された事件で死刑が確定した袴田巌さん(88)の再審公判が、静岡地裁(国井恒志裁判長)で大詰めを迎えている。実質的な審理は第14回公判でほぼ終わり、今月22日の第15回で求刑と最終弁論を経て結審する見通し。判決は夏ごろ言い渡されるとみられる。事件から約58年。異例ずくめで進んだ公判を経て、死刑判決が覆るのか判断が注目される。

全て姉が代理出廷

「この1年で58年分の戦いをやったので、それは大変だった。検察が何を言おうと、巌は無実でございます」

4月24日に行われた第14回公判の閉廷後の会見。袴田さんの姉、ひで子さん(91)は、年齢を感じさせない力強さで語った。

2度の再審請求を経て、再審公判は令和5年10月に始まった。袴田さんは平成26年の地裁決定によって釈放されたが、それまでの長期収容の影響で拘禁症状があり、いまだ心身はむしばまれたままだ。

地裁は再審公判を前に、袴田さんの出廷を例外的に免除。これまでの再審公判はすべて、ひで子さんが代理として参加している。

検察は「有罪」主張崩さず

確定判決で袴田さんの犯行着衣とされた「5点の衣類」に付着した血痕に、赤みが残りうるか-。再審開始を争った再審請求審に続き、再審公判でも、この点が最大の争点となった。

5点の衣類は、事件の約1年2カ月後、現場近くのみそタンクの中から発見された。衣類を発見したみそ工場の従業員らは、血痕が「濃い赤色だった」などと証言した。

検察側は再審公判で、みそタンクに長期間漬けられても赤みは「残りうる」と主張。衣類の腕の部分にあった穴と、袴田さんの腕に当時あった傷の位置がほぼ一致するなどとして、袴田さんを有罪とする主張を維持した。

一方の弁護側は、衣類が1年2カ月もみそタンクの中にあれば、血痕に赤みが残ることはないと訴えた。衣類は袴田さん逮捕後に入れられたもので、捜査機関による「捏造(ねつぞう)証拠」だとした。

「対質」で比較

第10~12回公判では、検察側、弁護側が計5人の専門家を証人申請し、3期日を使って尋問を行った。最終日には5人を証言台の前に並ばせ、一斉に尋問して見解を比較しやすくする「対質(たいしつ)」という珍しい手法も取られた。

弁護側の専門家らは、1年以上もみそに漬かっていれば、血痕の赤みは化学反応で「黒くなり、赤みは消えるはずだ」などと述べ、弁護側の主張を支えた。

検察側は「赤みは残りうる」とする法医学者7人による共同鑑定書を新たに提出。証人尋問では、出廷した学者の一人が弁護側の鑑定について「変色を阻害する要因を検討していない」と指摘したものの、血痕は黒くなるとする弁護側の主張を根本的には否定しない場面もあった。

遺族側の陳述も

次回の第15回公判では、関係者の意見陳述も行われる予定だ。

検察側は、事件で死亡した専務の孫にあたる男性が心情を記した書面の代読を求めている。また、ひで子さんも意見陳述をする見通しだ。

検察側は再審公判でも一貫して「袴田さんが犯人」との有罪立証を続けてきた。検察側の論告・求刑に対し、弁護側は最終弁論で改めて無罪を主張する方針だ。(橘川玲奈)

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