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アイデアを武器に時代を拓いた天才起業家の旧私邸 雅と俗を融合した空間でランチを楽しむ 建築を味わう

産経ニュース / 2025年1月11日 11時30分

邸宅レストラン雅俗山荘のダイニングルーム。奥は庭に面したテラスルーム

「10歩先」を見続けたこの人の発想力や独創性に〝賞味期限〟などないのだろう。小林一三(雅号・逸翁、1873~1957年)は、没後70年近くになる今も評伝や伝記、語録集が出版されている。「人の宝は金ではなく事業」。この言葉通り、阪急電車を核に宅地開発やターミナルデパート、宝塚歌劇といったアイデアを次々に形にしていった。根底にあるのはたくさんの人を喜ばせたいという思いだった。この稀有な実業家の息吹を感じたいと、大阪・池田にある一三の私邸だった「邸宅レストラン雅俗山荘(がぞくさんそう)」を訪れた。

(新村俊武)

桜の名所である五月山の麓、昭和12年に完成した一三の私邸・雅俗山荘は、美術工芸品の収蔵も考えて建てられたのだという。平成21年、国の登録有形文化財に認定された。

重厚な長屋門をくぐると、クリーム色の瀟洒な建物が現れる。木製フレームを露出させた外観や四つ葉型の装飾は、英国チューダー様式を思わせる。瓦はスペイン瓦形式だが和風の銀灰色で、和と洋を巧みに組み合わせている。

玄関ホールから続く吹き抜けのロビー空間は荘重な佇まいで、非日常の高揚感に包まれる。暖炉もあり、かつては小林家のくつろぎの場だったという。

「宝塚歌劇ファンの方はもちろんですが、小林一三ファンの方も多く来店されます。山梨からもいらっしゃいますよ」

支配人の清水総一郎さんが教えてくれた。山梨は一三の郷里だ。

没後は半世紀にわたって逸翁美術館として使われたが、その移転に伴い、平成22年に小林一三記念館に生まれ変わった。このとき1階の一部がレストランとしてオープンした。

「ダイニングルームの壁、床、天井はすべて一三さんが住んでいたころのままです。当時、池田の冬は寒かったそうで、床暖房もありました」と清水さん。

この日は、ダイニングルームとひと続きの、庭に面した明るいテラスルームで、肉と魚料理の両方が楽しめるランチコースをいただいた。

前菜はノルウェー・サーモンのマリネ。サーモンの上に菜園のようにたくさんの野菜が盛り付けられ、見た目とともに味わいも華やか。魚料理は冬に脂の乗った鰆をしっとりと焼き上げ、添えられた歯ごたえのある野菜との異なった食感が楽しめる。

肉料理は鴨ロース肉のロティ。低温調理され、口の中にうまみが広がる。赤ワインソースがさらに食欲をそそり、レンズ豆やキノコ類もその味を引き立てる。

「メニューは3カ月ごとに変えていきます。旬の食材を厳選し、何より季節感を大切にしています」

パリや銀座の名店で経験を積み、多数の阪急阪神ホテルズレストランに携わった取締役料理長の安島浩二さんはそう話す。

食事の合間には一三が愛用したと伝わる1867年製のバカラのワイングラスを見せてくれた。

洗練されたデザートをいただいた後、庭に出た。3つある茶室の一つ「即庵(そくあん)」には椅子席がある。常識にとらわれない発想がここでも感じ取れる。

彼の著作『雅俗三昧』にこんな言葉が出てくる。

「芸術と生活の一致」

雅は芸術、俗は生活。目指したのはその融合だ。シビアな実業界に身を置く彼は、このふたつの境地を自由に行き来しながら、思索を巡らせたことだろう。

一三の美意識に触れ、その世界観に浸りながら食事を楽しめるこのレストランは、何ともぜいたくで心地よい空間だ。

邸宅レストラン雅俗山荘(要予約)

▶営業時間 ランチ11時30分~14時30分 4800円(税込み)~ ディナー17~21時 1万2千円(同)~

▶定休日 月・火曜日(祝日の場合は翌日)

▶問い合わせ 電話072・751・1333(受付10~17時)

▶住所 大阪府池田市建石町7の17(小林一三記念館内)

▶アクセス 阪急宝塚線池田駅から徒歩12分

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