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ロシアでコロナ感染「マイナスの経験を宝に」 バレリーナ石井久美子さん、病乗り越えた今

産経ニュース / 2024年6月9日 10時0分

3月に出版した「腰痛、ねこ背、巻き肩を解消! 胸椎伸展10分寝るだけストレッチ」(主婦と生活社)

200年を超える歴史を誇り、チャイコフスキー「眠れる森の美女」などの古典を初演したことでも知られるマリインスキー・バレエ団。そのロシア最高峰のバレエ団に日本人として初めて迎えられた石井久美子さん(29)は4年前、新型コロナウイルスに感染した。療養のため帰国した後は、後遺症の線維筋痛症に苦しめられた。「バレエダンサーに復帰するにはまだ時間が必要」というが「マイナスの経験こそ私の宝だと思っています」と振り返る。今はバレエ学校を主宰しながら、著書も出版。バレエへの変わらぬ愛とともに前を向く。

「日本人初」の責任

身長169センチで手足が長く、ロシア人ダンサーと並んでも遜色がないスタイルを誇る石井さん。17歳でロシアにバレエ留学し、2年後の2013年、マリインスキー・バレエ団に日本人として初めて正式入団した。近年まで外国人に門戸を開かなかった名門だが、石井さんは1年目からソロで踊る機会にも恵まれた。

「私よりきれいなロシア人は、いくらでもいる。そしてここでは、ロシア人も悲鳴を上げながら踊っている。その中で私を選んでくれた。期待に応えよう、『日本人初』の責任を果たそう、と誰よりも努力しました」

過酷なレッスンで極度の貧血に悩まされながらも、バレエの本場で日本人の個性をどう生かし、弱点を克服できるか試行錯誤を重ねた。しかし20年に入り、新型コロナウイルスが蔓延し始めた。

ガラスが刺さるような痛み

旧都サンクトペテルブルクにある本拠地、マリインスキー劇場は20年3月に閉鎖された。アジア人であることを理由に、身の危険を感じる出来事にも遭遇した。「街中で『お前、コロナだろう』といわれ、雪玉を投げられた。突き飛ばされたこともありました」

母国に戻る外国人ダンサーが増え、石井さんも後輩の永久メイさんと3月下旬に一時帰国。半年後にはロシアに戻ったが、年末、コロナ感染が判明した。

「病院はきちんと対応してくれましたが、熱が下がっても全身にガラスが刺さるような痛みが続き、『私、死ぬかも』と本気で思いました」

翌年1月、はうようにして日本に帰国した。それから3カ月間はトイレ以外、寝たきりの療養生活を送った。診断された病名は「線維筋痛症」。体の広範囲に痛みやこわばりが生じ、倦怠感、鬱などを伴う原因不明の慢性疾患だ。治療法は確立されておらず、「肌にシーツが触れるだけでもすごく痛む。もう踊れないかもという不安と、介護をしてくれる母への申し訳ない気持ちでいっぱいでした」と振り返る。

私だから伝えられること

そんな日々でも、バレエへの思いは募るばかりだった。「私がロシアで得た経験を日本のダンサーに生かしてほしい」と布団の中でメモを取り始めた。2度目のコロナ感染にも見舞われたが、むしろその後、痛みは半減したという。

療養に努めながら今年3月、自身の体と向き合い続けて得た知識と経験を元に、著書も出版した。日本で始めたバレエのレッスンは、2年で2000人以上が受講。国内の有名ダンサーもアドバイスを求めて訪れる。「誰よりもバレエを愛し、苦しんできた私だからこそ、伝えられることがある。まずはダンサーに復帰し、将来はマリインスキーで踊れるダンサーを育てたい」と夢を語った。(飯塚友子)

いしい・くみこ 1994年、東京都出身。8歳でバレエを始め、2011年にロシア国立ワガノワ・バレエ・アカデミーに留学。13年、サンクトペテルブルクに拠点を置く名門マリインスキー・バレエ団に日本人として初入団。現在、日本国内でバレエ学校を主宰している。

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