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インフル感染原因で子供らに「急性脳症」発症相次ぐ 幼児死亡例や重い後遺症 脳炎も注意

産経ニュース / 2025年1月11日 16時54分

全国で猛威をふるっている季節性インフルエンザだが、医療現場では感染が原因で「インフルエンザ脳症」などを発症する子供らが相次ぐ。急性脳症は重い後遺症が出る場合が多く、静岡県内では基礎疾患のない幼児の死亡が確認された。熱が下がった後も意味不明な言動が続くなど症状が悪化するケースもあるとされ、医師らは、迷わず医療機関を受診するよう促している。

静岡県静岡市の県立こども病院では、インフルエンザの流行に伴い、昨年12月中旬から、発熱してけいれんや意識障害での救急搬送が増加している。小児救急輪番日では一晩で4~5人が運ばれてくるとし、インフルエンザ脳症の症状の有無を慎重に評価する。

基礎疾患なく

小児感染症科の荘司貴代医長によると、運ばれてくる多くは短時間でけいれんが止まる「熱性けいれん」。だが、けいれん後に意識が戻らない、もしくはけいれんが続いて呼吸状態も不安定になる場合は中枢神経合併症を疑われ、緊急で処置が始まる。先月中旬から今月6日までに乳幼児3人がインフルエンザ脳症と診断され、うち幼児1人が死亡した。

幼児は生来健康で、ワクチンは未接種での初感染だった。ウイルスから体を守ろうと、免疫が過剰反応し、脳が急激にむくみ血液循環の悪化で脳の一部が壊死する「急性壊死性脳症」だった。インフルエンザ脳症の中でも重症で死亡率が高く、後遺症が出ることが多いという。

国立感染症研究所のまとめによると、昨シーズン(令和5~6年)のインフルエンザ脳症の患者数は189人(昨年10月8日まで)で、少なくとも8人が死亡。元~2年は患者が258人、死亡が16人だった。

荘司氏はインフルエンザで療養中に受診する目安として、けいれん▽意味不明な言動▽異様に興奮している―といった神経症状などを挙げ、「インフルエンザでは高熱でうわごとを言う熱せん妄が出やすいが、解熱剤を使っても持続する場合は迷わず受診してほしい」とする。

通常診療に影響

治療の緊急度が高いインフルエンザ脳症患者が急増している影響で、小児集中治療室(PICU)で神経機能を検査する脳波計などの検査機器が占有され、通常の予定されている診療が難しくなってきているという。

加えて、感染症の治癒過程でウイルスに免疫が過剰に反応するなどし、中枢神経に炎症が起きて歩行障害などが出る「急性散在性脳脊髄炎」などの脳炎の患者も多く、荘司氏は「脳炎・脳症の患者がこれほど多いシーズンは経験したことがない。機器もマンパワーも足りていない」と訴える。

さらに、総合診療科の入院患者の半数がインフルエンザによる肺炎や喘息(ぜんそく)などの症状で、家庭内感染が目立ち、ほぼ全員がワクチン未接種だという。荘司氏は「多くの患者が入院しているが、ワクチンを接種した方の重症化はまれだ。チャンスがあればワクチンを打ってほしい」と話した。(王美慧)

急性脳症

ウイルスや細菌などの感染症が原因で、脳が急激にむくむことで嘔吐(おうと)やけいれん、意識障害、呼吸困難などが生じる病気の総称。発熱に伴い、1日程度で急激に病状が悪化する場合もある。あらゆる年齢層で生じ、特に乳幼児期など低年齢の発症が多く、死亡や発達障害などの後遺症が出ることが多い。

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