ほろよい余話 下漬け、酢漬け、本漬け 秋田・男鹿の郷土食「ハタハタずし」の手間ひま
産経ニュース / 2025年2月5日 12時19分
昨年末、秋田県男鹿市に滞在した折に、郷土食「ハタハタずし」について取材した。
冬の「神鳴り」が鳴る頃に獲れることから、魚へんに神と書く「鰰」(ハタハタ)。男鹿半島で大晦日に行われるナマハゲ神事では、ナマハゲをもてなす酒肴の膳に盛り付けられる。男鹿の人々にとって海の恵みの象徴であり、祈りの依代のような存在である。
かつて地元では、近所のお裾分けとして、野菜ではなくハタハタが玄関に届いたそうだ。冬場に、産卵期を迎えたハタハタの卵「ブリコ」が沿岸に大量に打ちあがり、浜一帯を赤く染めるほどだったという。
初めてハタハタずしを食べたとき、宝石のようなブリコの存在感と弾ける食感に感動したことを覚えている。ハタハタずしは、正月料理にもかかせない一品だが、近年はハタハタの漁獲量が低迷し、すっかり高級魚となってしまったことから、漬ける家庭もめっきり減ってしまったそうだ。
取材に向かったのは男鹿の船川港にほど近い「サナブリファクトリー」。ハタハタずしを愛してやまない工藤幸子さんが講師に招かれ、ハタハタずしを漬けるワークショップが行われた。
幸子先生は、各家庭で漬け込まれたハタハタずしを持ち寄って食べ比べる「ハタハタずしグランプリ」を企画するなど、各家庭の漬け方を探求し、家で美味しく漬けこめるレシピを伝授されてきた。今回も貴重な機会に熱心な参加者が集い、和気あいあいとした講習会が開かれた。
最初に「下漬け」の工程から。ハタハタの頭と尾、内臓を落とし、塩漬けにして重しをのせる。日をおいて、あがって来る水をこまめに捨ててしっかりと血抜きする。その後、酢で洗って塩を抜き、酢漬けにしてさらに日をおく。
そして「本漬け」へ。樽底に青々とした笹の葉を敷き、酢漬けしたハタハタを敷き詰める。その上にご飯と麹を加え、細かく刻んだ人参や柚子皮、ふのり(海藻)を散らせば、花を散らしたような彩りに。酒やみりん、ざらめ砂糖の調味料を振りかけ、さらに上から重ねて漬けこむ。2週間以上おいて、ようやく食べ頃となるそうだ。
講習後、幸子先生からお手製のハタハタの味噌漬けをいただいた。軽く炙れば香ばしい脂が滴り、立派な身にはふっくらとした白子が詰まっていた。またもや新たな美味しさの境地に至り、感動しきりであった。
絵と文 松浦すみれ
まつうら・すみれ ルポ&イラストレーター。昭和58年京都生まれ。京都の〝お酒の神様〟をまつる神社で巫女として奉職した経験から日本酒の魅力にはまる。著書に「日本酒ガールの関西ほろ酔い蔵さんぽ」(コトコト刊)。移住先の滋賀と京都を行き来しながら活動している。
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