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投資のおかげ お金で命を買っている状態 崩壊する過剰な評価 森永卓郎さんが残した言葉 話の肖像画 経済アナリスト・森永卓郎<5> 

産経ニュース / 2025年2月5日 10時0分

経済アナリストの森永卓郎氏=令和6年12月10日午前、東京都千代田区(斉藤佳憲撮影)

森永さんは1月28日に亡くなられました。令和6年12月の取材をもとに連載します。

《がんを宣告され、家族のために身辺整理を開始した》

父親の相続で失敗した教訓を踏まえて、自分の資産のリストをパソコンで作っておいたのですが、あるときハードディスクが壊れて消えてしまいました。幸い、妻のパソコンにコピーがあったので事なきを得たのですが、資産リストはパソコンのデータだけに頼ると危険です。

令和6年に入って、口座の一本化に取り掛かったのですが、これに4カ月ぐらいかかってしまったんです。私は預金を10の口座に分散していました。銀行の経営不安が高まったときに、預金保険の対象内に収めるようにしたことも理由の一つです。

もちろん、自分のことだし、認知症というわけでもないから、どこの銀行に口座を持っているのかはすぐに分かる。ところが最初につまずいたのは、父親のときと違って、今は銀行の窓口にいきなり行っても受け付けてくれないことなんです。事前に予約しないといけない。

しかも、なかなか予約が取れない。下手をすると2週間先とかになるんです。予約が取れたとしても、口座の解約には印鑑、通帳、キャッシュカードの全部がそろっているのが条件になります。ところが通帳が半分くらい見つからないんですよ。

さらに家から印鑑が山ほど出てきた。どれがどの銀行の届け出印かまるで分からない。仕方ないので束にして持って行ったんですが、ある銀行で「どれも違う」と言われてしまった。大騒ぎになったんですが、結局、「さすがにこれは違うな」と思って持参しなかった、かわいい猫のイラスト入りのものでした。なぜあんなもので登録したのか、自分でも分かりません。

《令和6年7月には、すべての株式や外貨資産を売却した》

私はそれまでにも所有する株式を少しずつ処分していました。病気とは関係なく、今の日本の経済状況はバブルだと判断したからです。

米半導体大手のエヌビディア1社の時価総額株が一時、3・6兆ドルもの値を付けたり、東京23区の新築マンションの平均分譲価格が1億円を超えても誰も疑問を抱かない。しかし、過剰な評価はある日、音を立てて崩壊するものです。

例えば、ニューヨークダウ平均株価は世界大恐慌の1929年から3年近く下落を続け、約9割も下がった。平成元年末から始まった日本の株価暴落は、やはり8割以上下がりました。

40年前、私がバブルの到来を予測して訴えたときと同じく、誰も耳を貸してくれませんでした。病気を機に、タカラトミーなど一部必要なものを除いて、すべてを売却しました。

なぜタカラトミーを除いたかというと、株主優待で毎回特製のリカちゃん人形とトミカがもらえるからです。私の私設博物館「B宝館」(埼玉県所沢市)に収蔵するために、どうしても必要なのです。

売却した際は為替レートが1ドル160円くらいで、日経平均株価も4万1千円台だったので、かなりの利益がありました。でも、これは私が相場を見事に当てたのではなく、たんに資産整理のタイミングが良かっただけです。

この利益は非常に助かりました。私は現在、保険適用外の免疫療法を受けていて、これには非常にお金が掛かるんです。

私の会社には、これまでに稼いだ印税やテレビの出演料などが蓄積されていますが、私は会社から給料をもらっているだけなのです。会社の資金を私の治療に使うことはできません。

投資を整理して得た利益のおかげで、私は高価な治療をしばらく続けられることになった。いわば、お金で命を買っている状態ですね。(聞き手 岡本耕治)

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