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「高級魚サヨリの完全養殖」水産科高校生が初成功 ミシュラン三つ星店への出荷目指す

産経ニュース / 2024年5月10日 8時0分

出荷するため養殖サヨリを梱包する生徒=令和6年4月(多度津高校提供)

オリジナルブランド魚の開発に取り組む香川県立多度津高校の生徒たちが、完全養殖のサヨリを生み出し、話題を呼んでいる。その名も「瀬戸のキラメキ」。県内の商業施設で実施された試食販売では「コリコリと歯ごたえがあり、甘みもあっておいしい」と好評で、生徒たちは「自分たちが苦労して養殖した魚が買ってもらえ、喜んでもらえてうれしい」と手応えを感じた様子。指導教諭は「県外への展開を狙い将来的に有名な飲食店で使ってもらえるブランド魚にしたい」と意気込んでいる。

「日本初」の完全養殖サヨリ

同校の海洋生産科栽培技術コースでは週1回、3時限連続で行う課題研究の授業で、学校独自ブランド魚の開発を学習。令和元年からサヨリの完全養殖に挑戦しており、今年度は3年生9人が取り組んでいる。

完全養殖とは、卵から成魚まで育て、その成魚から採卵して成魚まで育てるサイクルを確立することを意味し、同校によるとサヨリでは「日本初」という。

サヨリは網ですくったり手で触ったりするだけで死ぬことがあるほか、狭い水槽内で壁に当たり下あごの奇形が出やすかったり、光に敏感でパニックを起こし水槽から飛び出たりするという。

そこで生徒たちは、円形水槽に水流を起こし、照明を24時間当てて明暗の変化を生じさせないなどの工夫を凝らした。2時間おきに高たんぱくのヒラメ用の餌を使用し、半年で出荷サイズになる成長速度の大幅アップも試みた。

冨田朝陽さん(17)は「魚は人とコミュニケーションがとれないので、よく観察して水を換えたり、餌の量を変えたりするのが大変だが飽きない」。指導教諭の大坂吉毅さんは「生徒たちが自ら課題を発見し解決する『学びのわくわく』を大切にしている」と話す。

天然魚の維持と安定供給

養殖のきっかけは、香川県三豊市の粟島で行っている海洋潜水(ダイビング)実習中に、浜辺に打ち上げられた海藻に付着した卵を生徒が偶然見つけて育てたこと。

サヨリは高級魚のため魚価が高い。養殖ものは天然ものの出荷のない時期にも出荷でき、寄生虫の心配がないなどといった点が魅力だ。しかし、これまで市販レベルの完全養殖は実施されておらず、大坂教諭は「マダイやハマチ、フグほどメジャーでなくニーズが高まっていなかったためでは」と分析する。

漁獲量が年々減って資源保護も求められる中、大坂教諭は、「どの魚種においても養殖技術の確立は天然魚の維持につながるとともに、時期を問わずに出荷できることで安定供給や利益の確保につながる」と、利点を指摘する。

おいしいモチモチ感

今年4月、三豊市のゆめタウン三豊で行われた試食販売には、生徒4人が参加。サヨリが泳ぐ水槽を置き、刺し身など300匹分の商品を用意した。川江卓真さん(17)は「声がけが難しかったが、子供に『おいしい』と言われ、うれしかった」と話した。

また高松市内の料亭、二蝶の店主・料理長に昨年6月、試食してもらい「生きじめによる高鮮度処理によってモチモチ感がある」と評価された。

天然ものは刺し網の段階で死んでしまうが、養殖ものは直前まで生かしておけるので鮮度がよく、「サヨリのイメージとは異なる味わい、食感」が売りだ。竹本葵さん(17)は「東京のミシュランガイド三つ星店で取り扱ってもらえるような品質に仕上げ、売り込みに行きたい」と、意欲を見せる。

昨年12月には丸亀市内の飲食店に出荷したという実績を持つ。同校では、今年は5月に成魚から採卵し、孵化(ふか)した稚魚に餌のワムシを与えて大きくし、清掃や餌やりを続けて12月までに成魚約3000匹を育て上げる計画だ。(和田基宏)

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