1. トップ
  2. 新着ニュース
  3. スポーツ
  4. スポーツ総合

希少疾患「デント病」抱えるDeNA大和 伝えたい「病気があったからここにいる」

産経ニュース / 2024年6月12日 10時0分

川崎市内の病院を訪問したDeNAの大和(中央)。闘病中という少年は「プロ野球選手を見るのは初めて」と目を輝かせていた=3日(鈴木智紘撮影)

DeNAのベテラン内野手、大和は国内で数百人しかいない希少疾患「デント病」を抱えながらプロの世界を生き抜いてきた。加齢にともない腎機能が低下する遺伝性の病で、50歳前後で末期腎不全へと進行するとされる。むくみや倦怠(けんたい)感といった症状と付き合いながらシーズンを送る36歳は、「同じ病気の方々に元気や勇気を与えられたら」と、一年でも長い現役生活を目標に掲げている。

「病気があったからこそ自分はここにいると思う。普通の人に負けたくない。ただ、その気持ちだけでした」。3日に川崎市内の病院を訪れた大和は、「プロ野球選手になりたいと思ったきっかけ」を問われ、病と闘う子供やその家族を前にまっすぐな言葉を口にした。

診断名がついたのは2022年12月。ただ、幼少期から腎機能に異常があり、定期健診を受けながら野球を続けてきた。血液を濾過(ろか)する機能を持つ腎臓は、体内の老廃物や余分な塩分、水分を尿として排出する。若いころはそこまで気にならなかったが、年を重ねるたびにむくみや疲れの取れづらさを感じてきた。

腎機能の状態を示す老廃物「クレアチニン」の血中濃度でみると、「僕の数値だと、普通なら入院して病院食を食べてる方もいると思うし、腎臓移植をしている方もいる」という。デント病と診断を受けてからは本格的な食事療法を開始。最低限の塩分量で過ごすため、球団の管理栄養士に別メニューを用意してもらっている。

チームメートとの食事会でも食べられるものは限られる。「自分の体のためと思えば我慢も苦じゃない」とはいえ、「食べたいものをなかなか食べられないのが現実ですね」と苦笑する。

しかし、スポーツに汗はつきもの。水分や塩分が制限される中で体調を管理するのはきわめて難しい。症状として顕著なのは手足のむくみだ。「バットを握ったときのグリップの角度が違ったり、ひどいときはスパイクが入らないこともある」。厚さのことなる2種類のバッティンググローブを使い分けたり、針治療で緩和させたりして対応している。記録的猛暑となった昨夏は「数値が上がって大変な時期があった」といい、「去年の反省を生かしたい」と日々自分の体と向き合っている。

アスリートとして必要不可欠なトレーニングにも制約がかかる。クレアチニンは筋肉を動かした後に出る老廃物で、数値が高くなると腎臓に負担がかかる。筋肉を肥大させるような負荷の高いトレーニングは避け、「筋肉痛をなるべく作らない、そのギリギリのトレーニングを毎日こまめにやる」ことで、必要な筋肉量を保っている。

末期腎不全となると、生命維持のために人工透析や腎移植を受けなければならなくなる。「こればっかりは体調次第」ではあるが、現在は将来的な腎移植を検討しているという。

病を公表したのは、22年オフの契約更改の時だった。今季でプロ19年目。「同じ病気の人たちに元気を与えられる、ラストスパート」との思いがあった。自身も幼少期、ドキュメンタリー番組で目にした病気やケガを克服した選手の姿に勇気をもらった。

「自分がこうなれれば、『自分にしかなれない自分』がいるというのを想像できたとき、(病気を)プラスに変えることができた。大変な思いもすると思うけど、他の人にはない自分の武器だと思う。そうやってプラスに(思考を)変えられたら、人生を楽しく過ごせるんじゃないかな」

その言葉を、子供たちは真剣な表情で聞いていた。

持ち味でもある打撃での勝負強さは今季まだ発揮しきれていないが、守備では本職の遊撃だけでなく一~三塁まで器用にこなしてチームを支える。気の抜けない毎日の連続でも、「1年でも(プロとして)長くプレーすることで、ここ(病院訪問)に来た意味があるのかな」。いつかの自分を思い浮かべながら、グラウンドに立ち続ける。(川峯千尋)

この記事に関連するニュース

トピックスRSS

ランキング

記事ミッション中・・・

10秒滞在

記事にリアクションする

記事ミッション中・・・

10秒滞在

記事にリアクションする

デイリー: 参加する
ウィークリー: 参加する
マンスリー: 参加する
10秒滞在

記事にリアクションする

次の記事を探す

エラーが発生しました

ページを再読み込みして
ください