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大阪の団地から日本酒文化を世界へ 酒×農業で新たな魅力 足立農醸代表・足立洋二さん 関西ひとめぐり

産経ニュース / 2025年1月10日 6時0分

大阪府高槻市牧田町にある「富田団地」。この団地の1階テナントに、輸出用日本酒やフルーツが副原料の「クラフトサケ」を造るカフェ併設醸造所「足立農醸」がある。「日本酒文化を世界に」。わずか8坪の酒蔵から、大きな挑戦が始まっている。

「伝統的酒造り」が国連教育科学文化機関(ユネスコ)の無形文化遺産に登録され、熱視線が注がれる酒造業界。そのなかで足立農醸のように、団地の一角で酒造りを行う〝団地酒蔵〟は極めて珍しいという。

もともと酒造りとは無縁だった。高校卒業後、水泳の道を志し米・テキサス州の大学へ留学したが、2年で挫折。同じ地域の別の大学へ入学し、23歳のとき学生街の日本食レストランでアルバイトを始めた。

転機となったのは、レストランで日本酒の飲み比べをしたとき。日本人がほとんどいないその土地で「sake」はたちまち人気を集めた。「日本酒はこれからますます伸びていく」-。そう確信してから業界へ飛び込む決断をするのに時間はかからなかった。

帰国後は、青森県や兵庫県の酒蔵で計約6年修業。そのかたわら、耕作放棄地を復田させて米作りをしつつ日本酒をプロデュース、販売する足立農醸を令和3年に立ち上げ、5年に独立した。

当初は、醸造所を持たず委託醸造する「ファントムブルワリー」という形態で販路を拡大。酒造りができる場所を探していた折、インターネットで偶然見つけたのが富田団地内のテナントだった。内覧したその日に思い切って即決した。

図面を引きながら酒造タンクや搾り機を並べ、短い階段を上った中2階部分には麴を作る部屋を設けた。念願の酒蔵は昨年秋に完成。当初はガレージのようだったという殺風景な場所は、カフェスペースが併設されたコンパクトな酒蔵に生まれ変わった。

「酒蔵を見てもらうことで、ちょっと飲んでみようかなと思ってもらったり。そうしたきっかけ作りの場所にすることを一番大事にしている」。カフェスペースでは、大きなガラス窓から酒造りの工程を見ることができる。

地元の「農」の魅力を付加価値としてプラスすることにこだわる。「農業ありきの酒造り。もっと農業も盛り上げていきたい」。府内や府出身の農家と組み、キウイやイチゴ、ブルーベリーなどを掛け合わせて醸造したワインのような味わいのクラフトサケは、普段日本酒を飲みなれていない人にもおすすめだ。

「38歳でスイスに酒蔵を」というのが、起業時から描く青写真だ。「スイスはヨーロッパで人の集まる中立国。そこでなら日本酒文化をもっと広めていけるはず」。大阪郊外の団地から始まった酒造りが、いつか世界を酔わせる。(藤木祥平)

あだち・ようじ 大阪市出身。青森県の酒造会社「八戸酒造」で修業中の平成30年、自身が手掛けた日本酒がフランスのコンクールで純米大吟醸・純米吟醸酒部門でプラチナ賞を受賞。日本酒をプロデュース、販売する足立農醸を令和3年に立ち上げた。

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