バイデン米政権、中東の紛争拡大を制御できず 大統領選を控え後手に、停戦協議も頓挫
産経ニュース / 2024年10月2日 21時46分
イスラエルによるレバノン侵攻を受け、イランが再びイスラエルへの大規模攻撃を行ったことで、中東情勢は、軍事衝突の連鎖が加速する懸念が強まった。イスラエルがレバノンの親イラン民兵組織ヒズボラへの軍事行動をエスカレートさせていることは、バイデン米政権が同盟相手であるイスラエルの動きを制御できていない現実を映し出している。
レバノン情勢を巡っては、米仏などが9月25日、共同声明を発表し、イスラエルにヒズボラとの21日間の停戦を受け入れるよう迫った。しかし同国のネタニヤフ政権はこれを無視し、27日に空爆でヒズボラ最高指導者のナスララ師を殺害。バイデン大統領は30日、イスラエルに重ねて停戦を促したが、同国は10月1日にレバノン南部への地上侵攻に踏み切った。
一連の経過は、昨年10月にパレスチナ自治区ガザを巡るイスラム原理主義組織ハマスとイスラエルの戦闘が勃発して以降に繰り返されてきたパターンと軌を一にする。
今年4月には、イランが自国公館への攻撃の報復として初めてイスラエルへの直接攻撃を実施。イスラエルが米軍などとともに、その迎撃に成功したのを受け、バイデン氏はネタニヤフ首相に、これ以上の紛争を避けるよう説得した。しかしイスラエルによる戦線拡大に歯止めをかけることはできず、米国などが仲介するガザ停戦協議もすでにほぼ頓挫している。
バイデン政権にとり現在の中東での重点は、イスラエルの自衛能力を支援しつつ、紛争の広域化は阻止することにある。中東の不安定化は原油価格の高騰などにつながるほか、域内の米軍や米権益が脅かされるリスクも高まるためだ。
一方、大統領選が11月に迫る中でイスラエルへの姿勢を硬化させれば、有力なユダヤ系支援者やロビー団体の離反を招く恐れもある。バイデン政権はこうした事情を見透かされ、後手に回っている状態だ。(ワシントン 大内清)
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