第64回 自治体の最高意思決定機関『庁議』で“組織・人材が語られる自治体”へ
政治山 / 2022年11月24日 2時4分
「OSを変えた」総合計画の策定
石岡市では、10年後の将来像を描いて2021年度に総合計画を策定しました。2020年度に人材マネジメント部会に参加した翌年度、政策企画課に異動したことで、新たな総合計画の策定に関わることができました。
総合計画では、人材マネジメント部会で学んだバックキャスティングなどの考えを使い、総合計画審議会の会長である大学の先生から「OSを変えた」と評価いただくほど、従来型の総合計画から大きな方向転換を行ってより良いものができたと思っています。
問われるのは総合計画が実現できる「組織としての力」そして2022年度からは、総合計画で描いた将来像の実現に向け、様々な取組を実施していくわけですが、そこで私が最も重視するのは、「総合計画が実現できる組織作りに関する取組」だと考えています。なぜならば、総合計画に基づく取組を実現していくのは他ならぬ職員自身であり、職員の力を最大限発揮するためには「組織としての能力」が問われているからです。
直近の問題解決に目を向けすぎていないか?私の部署では、自治体の最高意思決定機関とされる『庁議』を所管しています。『庁議』では、基本的に月に1回、首長をはじめとする特別職、各部局のトップが一堂に顔を揃え、重要課題を審議するわけです。
しかし、その議論のほぼすべてが直近の問題解決に関することであり、重要事項の審議もありますが、情報共有のための報告が大半を占める状況です。情報共有や直近の問題解決のための審議を否定するわけではありませんが、総合計画を実現するために「最高意思決定機関としてどのような会議が望ましいか」を考えた際、それは、直近の問題解決だけを審議するのではなく、「組織全体のマネジメントがどうあるべきかの議論も必要ではないか、その内容を皆で共通理解する必要もあるのではないか」と考えるようになりました。
政策実現力を高める組織経営のあり方を庁議で意見交換するこうしたことを考えるなかで以前、拝聴した人材マネジメント部会の出馬幹也・部会長の講演の中に「機能している組織において経営層、部課長がどのような役割を担うべきなのか」という話があったことを思い出し、その内容を庁議メンバー全員が視聴し、意見交換する場を作ることができないか?と考えたのです。
とはいえ、数多くの審議案件や報告案件を抱える中で、限られた庁議の時間の中にそれを入れ込むのは容易ではありませんでした。そもそもの意見交換の必要性についての内部調整があり、その後も庁議案件数を踏まえて時間が取れないことから見送ること数カ月……。出馬部会長のオンライン動画を事前に視聴することで会議時間を短縮するなどし、ようやく2022年7月に実現することができました。
出馬部会長の動画では、増え続ける業務に対し、組織が機能しなくなってしまう要因についての話から始まり、トップを含めた部課長などのそれぞれの役割に問題があるのではという課題を投げかける内容が繰り広げられました。庁議メンバーは、直近の問題解決に誰もかれもが目を向けすぎるがゆえに、マイクロマネジメントが当然となってしまい、組織全体の効率性が低下してしまうという危機を感じていただいたと思います。
参加者からは、
「“非常に参考になる”素晴らしい内容だった」
「複線型人事やキャリアパスが大事」
「“不都合な真実に真摯に向き合う”という言葉がささった」
「人材育成基本方針の見直しが必要」
「職員が通常業務に追われており、業務のスクラップが大事である」
などの他、部長級の人事評価の在り方や決裁区分の在り方、地方自治の仕組み自体が直近の問題解決に目が向きやすいことの懸念など様々な意見が出ました。
緊急事態が頻繁に起こり、目まぐるしく変化する社会情勢の中で、総合計画で定めた将来像を実現するためには、組織自体が「変化に対応できる組織でなければならない」と考えています。
本市の総合計画でも施策の1つとして「組織・人材マネジメントの充実」を掲げ、目指す姿として「仕事にやりがいを持ち、自ら考え、学び、行動することで、市民に信頼される職員が育成・確保されています。チャレンジ意欲のある職員により高度化・多様化する行政サービスへの需要への対応ができています」という状態を目指しています。
これは、人材マネジメント部会が2030年に掲げるビジョン『多くの自治体において、質の高い人材マネジメントが実践され、結果として「ほんとうの笑顔」が組織と地域に拡がっている』という姿とも一致するものであると思います。
この小さなうねりが、大きな波になるように次の一手を考えていきたいです。
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