人生を豊かにする存在に ビール無関心層獲得へ「情質価値」でアプローチ サッポロビール
食品新聞 / 2025年1月17日 11時4分
「嗜好品としてのビールの魅力化」を中期目標に掲げるサッポロビール。個性と物語を強みとした独自のマーケティングで、昨年も「黒ラベル」を中心とした狭義ビールが引き続き成長。同社ビールカテゴリー(缶)出荷量はこの10年間で1.49倍と、市場を大きく上回る躍進を遂げた。
「26年にかけて酒税改正が続くなか、狭義ビールの市場があらためて注目されている。そこに向けて取り組んできた当社では、昨年は本当に大きな成果が出た。味覚の表現だけでなく、ブランドの個性と物語を伝える。これがわれわれが描く新しいマーケティングだ」。(15日の会見で野瀬裕之社長)。
力を入れるのが“ビール無関心層”へのアプローチ。ビールを飲まない人、ブランドなどを意識せず漫然と飲んでいる人などを合わせ4850万人と推計するこの層の関心を呼び起こすことで、200万人規模の新規顧客獲得を目指す。
そのためのキーワードとして、新たに「情質価値」を掲げる。感情の質を高め、人生を豊かにすることを意味する造語だという。
「一人ひとりの人生を豊かにする存在として、ビールの価値を引き上げる。これが嗜好品としてのビールの魅力化だ。ブランドごとに異なる情質価値をとらえ、お客様との関係づくりに取り組みたい」(常務執行役員マーケティング本部長 武内亮人氏)。
ヱビス×荒木飛呂彦コラボ缶も
「黒ラベル」「ヱビス」の広告ではブランドの個性と物語を伝えるとともに、顧客との接点も強化。「黒ラベル」の体験イベントを全国で開催するほか、その世界観に触れながら最高の提供品質で楽しめる「THE BAR」を7月にリニューアルオープン。
2月12日に数量限定発売する「ヱビスビール 荒木飛呂彦描き下ろしデザイン缶」また「ヱビス」では、昨年から東京・恵比寿に開業したブルワリーで開業1周年イベントを計画。さらに世界的漫画家の荒木飛呂彦氏とのコラボレーションにより、同氏が描き下ろしたポスターデザインをあしらった缶を発売する。100年以上続くブランドの姿勢を表現することで、新たなファン獲得につなげる考えだ。
諸コストの上昇を受けて、同社などビール大手4社は4月からの値上げを予定。この影響や発泡酒の縮小継続も踏まえ、今年のビール類市場は前年比95%程度で推移するとみる。
「(値上げによって)価格弾力性が高いもの、リーズナブルなものが影響を受けやすい。当社のポートフォリオはハイプレミアムなものが多く、市場に比べてインパクトは少ないとみている。需要変化のなか、個性と物語で価格以上の価値を生み出していきたい」(武内氏)。
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