物心ついてから父と二人暮らし。生活のために定時制の高校に通いながら働く耕一郎は、酒浸りの日々を送る父への怒りをため込んでいた。そんなある日、父の残酷な一言で怒りが爆発する。殴り倒した父を雪の中に放置し、都会に逃亡してきた彼を待っていたのは、身元を証明するものが何もないまま、一人で生きていかなければならないという現実だった――。
『正しき地図の裏側より』(「遡上の魚」改題)で第36回小説すばる新人賞を受賞した逢崎遊さんは25歳。読み始めたら止まらないリーダビリティと先の読めない展開、社会からドロップアウトした主人公に寄り添って書き切った筆力は、これからの活躍を大いに期待できます。受賞作品について、これまでの歩みについて、逢崎さんにお話をうかがいました。
聞き手・構成=タカザワケンジ/撮影=大槻志穂