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Google社員、有給中の突然「レイオフ(一時解雇)」に唖然…終身雇用が崩壊しつつある日本でも普及しかねないレイオフに備えるためには

集英社オンライン / 2024年3月4日 11時1分

先月、Google勤務の日本人男性が、日本での有休中に突然解雇通知を受けたという話がXで大きな話題となった。それはアメリカのテック系企業で現在流行しているという「レイオフ」(一時解雇)だったそう。日本ではあまり知られていないレイオフとはいったいどういう制度なのか?

ゴールドマン・サックスなど金融業界にもレイオフの流れが波及

いま、欧米のテック系企業で流行している「レイオフ」という制度をご存知だろうか?

レイオフとは、業績が悪化した企業が人件費の削減を目的に、従業員を一時的に解雇すること。基本的には業績が回復した際には再雇用することを前提としているが、有休中や育休中などとは異なり、あくまで「解雇」なので給与は支給されなくなる。



アメリカでは新型コロナウイルス流行期に採用を拡大したところ、コロナの収束とともに、人員の過剰が目立つようになった。これがレイオフが流行した要因のひとつだと言われている。2022年後半から2023年初夏にかけて、主にテック系企業での大規模なレイオフが続き、今年に入ってからも再びレイオフ報道が相次いでいる。

いまやGoogleやマイクロソフトといったテック系大企業のみならず、大手外資系のゴールドマン・サックスなど金融業界にもレイオフの流れが波及している状況だ。

そんななか今年2月、X上でGoogleのアメリカ本社に勤めていた日本人男性社員が、突然レイオフされたという内容のポストを投稿し、3.5万以上の“いいね”(2月末時点)を獲得し話題となった。

この男性は、なんの前触れもなく有休中に突然解雇されてしまい、いきなり無職に陥ったことに大きなショックを受けたようだ。

Xのポストの補足によれば、レイオフ後すぐにGoogle社員でなくなるわけではないようで、退職の準備期間は設けられていたそうだが、これには他のXユーザーから≪厳しい世界…≫≪外資はこんなにも冷酷なのですね…ビックリしました…≫と、企業のあまりのドライさに驚きの声が多く寄せられた。

この、日本ではあまり知られていないレイオフとはいったいどういう制度なのだろうか?

そこで、経営者側労働法専門弁護士として活躍し、多数の労働訴訟案件などを担当してきたKMM法律事務所の倉重公太朗弁護士に、レイオフについて法的な観点で解説してもらった。

そもそもレイオフって何? リストラとの違いは?

まず知っておきたいのは、アメリカにおけるレイオフの仕組みについてだ。

「アメリカの雇用の根底には『Employment-at-will』といって、雇用は雇用主と被雇用者との双方の自由意志によって成り立っているという考え方が存在します。よって、雇用主が従業員を解雇する際は、人種差別や性差別といったモラルに反するような理由でない限り、理由を問わず自由に解雇できる仕組みなのです。従業員もまた同じように予告や説明なしに仕事を辞めることが可能です。

今回話題になったGoogleのレイオフも突然解雇通知されたとのことで、日本とは真逆の価値観に驚く人も多く、こうして話題になったのでしょうが、アメリカでは割と普通のことなのです。

ちなみにレイオフは『一時帰休』とも訳されますが、あくまで一時的な解雇で再雇用の意思があるという姿勢を見せておくことで、労働者からの訴訟を避ける目的があると思われます。訴訟でもし企業が負けた場合には、多額の賠償金を支払う必要があるため、そうしたリスクは避けたいという意図がレイオフする理由のひとつとも考えられます」(以下、「」内は倉重氏のコメント)

そのほかにも、「一時的な解雇」にしておくことで優秀な人材の流出を抑制できることや、その人材が蓄積してきたノウハウなどの企業資産が損なわれないようにするといったことが、企業側のメリットとしてよく挙げらている。

日本とアメリカではそもそも雇用に対する基本的な考え方がまったく違うということだが、日本における解雇の特徴についても聞いてみた。

「日本ではいきなり解雇を通知するのではなく、社員への退職を段階的に促すことが多いです。一段階目が社内で退職者を募る『希望退職募集』、二段階目が社員を呼び出して退職を促す『退職勧奨』、それでも人員削減が追いつかない場合の最終段階として、はじめて一方的に解雇を通知する『整理解雇』が行われます。これらは一般的にリストラとも呼ばれています」

終身雇用が揺らぐ日本、レイオフが普及する可能性も…

現在日本ではレイオフはアメリカほど浸透していないが、それには解雇に対する労働法の厳しい規制が関係しているという。

「日本には『解雇濫用法理』といって、労働者を守るために会社からの一方的な解雇を制限する基本的なルールが存在します。このルールに違反した解雇は労働契約法16条によって無効とされます。長年、終身雇用が前提となっていた日本において、理由もなしに解雇を通達するようなことは不当解雇として扱われるのです」

しかし、倉重氏は日本の高度経済成長を支えた制度のひとつである終身雇用制が揺らぎかねない昨今の様子から、今後解雇のかたちが変わっていく可能性はゼロではないと指摘する。

「先ほど説明した『解雇濫用法理』は、企業が定年まで社員を雇う終身雇用制を想定して考えられたものです。しかし昨今の若者の間では転職が当たり前だったり、ずっと同じ企業に勤めることを逆に不安視したりする傾向が強いのです。高度経済成長期と違って経済状況も不安定ななか、大手企業にいれば一生安泰だという価値観も揺らいできています。

そういった背景もあるので、時代にそぐわない法やルールであれば、今後変わっていく可能性もゼロではない。とはいえ、政府が終身雇用を否定するような法改正をすれば支持率の低下に繋がるので、そう簡単には変わらないとは思う一方で、大手企業の崩壊が始まってから手を打つようでは遅いのではないかとも思います」

2019年に経団連の中西宏明会長やトヨタ自動車の豊田章男社長が、終身雇用制の維持が難しくなっていると発言し、これまでの雇用の価値観が揺らいできているのは明らかだ。

さらにはITやAIの進化で、長く働くことではなく、労働生産性や効率が重視される世の中になった。こうした働き方の価値観が変化している今、アメリカのようなレイオフが、今後日本で取り入れられるようになっていくこともあるのかもしれない。

もしも、ある日突然レイオフされたらどうする?

もし日本でも今後レイオフが一般的になる未来が来るとしたら、レイオフ後どう対応すればいいのだろうか。

「レイオフは一時的解雇といえど、業績が回復して再雇用してもらえるのがいつになるのかわからない、先が見えない状態となります。そのためレイオフの期間中に転職することが一般的だと思いますが、その間収入が途絶えることに不安を覚える人も多いでしょう。しかし失業保険をもらうことで求職活動を続けられますし、レイオフは会社都合の解雇であるため退職金や一時金をもらえる場合もあります。

転職だけでなく、起業を考える方や、休職してゆっくり自身の今後のキャリアについて考える期間にする方など、レイオフ後の道はさまざまあると思います。これからの時代に大事なのは、突然解雇通知をされても困らないように、個人のスキルを高めて、企業に依存しない意識を持つことではないでしょうか」

取材・文/瑠璃光丸凪/A4studio 写真/shutterstock

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