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「ふてほど」に登場した昭和ワード“ボンタン狩り”ってなに?「バナナ」「ボンスリ」「洋ラン」…令和よりも多様性があったなつかしの80年代変形学生服を一挙解説

集英社オンライン / 2024年3月22日 20時0分

毎週、なつかしの昭和カルチャーをフィーチャーすることでも話題になる金曜ドラマ『不適切にもほどがある!』(TBS系)。3月1日放送の第6話では“ボンタン狩り”なるワードが登場。Z世代にはおそらく摩訶不思議だらけの80年代の学校制服文化について、昭和世代が解説する。

昭和の多様な変形学生服

1986年から現代にやってきた主人公の小川市郎(阿部サダヲ)は、ひょんなことから世代間ギャップを楽しむ令和のクイズ番組に出演することに。

そこで、令和Z世代チームに「通学中の不良に集団で襲い掛かり、穿いている特殊なズボンを奪うことを『〇〇狩り』と言います。〇〇とは何?」という問題が出題された。

正解は「ボンタン」。昭和世代は「あった、あった!」と膝を打ったことと思うが、若い視聴者の多くはピンとこなかっただろう。

本作では市郎の娘の純子(河合優実)が「スケバン」ルックなセーラー服を、昭和へタイムスリップして不良ファッションに目覚めた向坂キヨシ(坂元愛登)が短ラン&ボンタンを着用していたりと、学ランをカスタマイズした当時の“変形学生服”の描写が散見される。

しかし、学校制服の製造販売を行うカンコー学生服が「世代別の中学校の制服タイプ」についてインターネット調査したところによると、詰襟(学ラン)を着た経験については、60代が99%なのに対し、20代は63%と激減。

特に昨今はブレザーが台頭しており、もはや変形学生服を見たことがない世代も多い。

いったい当時の変形制服カルチャーはどのようなものだったのか。伝説のヤンキー漫画『カメレオン』の舞台にもなった千葉県松戸駅前の喫煙所にいた51歳の男性は、当時をなつかしむようにこう証言してくれた。

「短ランの他にも、“セミ短”や“中ラン”、“長ラン”と徐々に丈が長くなって、丈がくるぶしまである“洋ラン”ってのもありました。


ワタリ(モモ幅)が太いんだけど裾がキュッと締まっている学生ズボンをボンタンと呼びますが、そのなかでも膝下から膨らんで細くなる“バナナボンタン”や、膝下から裾がスリムになっている“ボンスリ”、ワタリから裾までストレートな極太シルエットの“ドカン”などいろいろありましたね。


俺は短ランにボンタンの組み合わせがお気に入りで、キヨシと同じようにインナーは赤Tだった。そういえば靴下もよく赤を履いてたなー」

そうした変形制服の調達はなかなか大変だったと男性が続ける。

「当時はネットなんてないから『チャンプロード』って暴走族向け雑誌の広告ページからハガキや電話で注文してました。

『ベンクーガー』とか『ジョニーケイ』とか変形学生服メーカーがいくつもあって、一度買うとメーカーからカタログが届くようになるんです。それを見てるだけで心躍ったよね」

ヤンキー以外も普通に持っていた「標準服=ダサイ」のイメージ

松戸駅前のベンチに座っていた営業職の52歳の男性は店頭で変形学生服を購入していたという。

「京急蒲田駅の商店街にあった『ヤング』って専門ショップで買ってました。あとは川崎駅前や横須賀のドブ板通り、上大岡とかにもあったね。そういうお店が全国各地にあったんですよ。

そんな時代だからボンタン狩りも多くて、僕も気に入ってたボンタンを狩られたことがありますよ」

80年代当時、千葉県内の高校生だった55歳の男性によると、狩ったボンタンで商売をする輩もいたそうだ。

「気に入らない後輩から狩ったボンタンを、かわいがってる後輩に1本5000~1万円くらいで売ってましたね。自分も狩られた経験があって、そのときはバイトをがんばってお金を貯めて買い直しました(苦笑)」


意外にもボンタンはヤンキーだけのものではなかった。50代の別の男性が語る。

「私みたいなパンピー(一般ピープル)でも、“標準服はダサい”というイメージがあったから、ボンタンをファッション感覚で穿いてました。仲のいい先輩や親戚が、卒業するとお下がりでくれるんですよ。

ただ、ガッツリ変形したのは着る度胸もないから、ちょっとだけ太いのとかですけどね。そういうハンパな制服は狩られないし、不良とも会話できるから私にはちょうどよかったんです」

女子学生も同様だった。松戸駅前でスマホをいじっていた54歳の女性も「標準のセーラー服はダサかったから、オシャレ感覚で長いスカートを穿いていた」と話す。

「指定より少し長めの膝下20㎝くらいだと先生からも注意されませんでしたよ。もちろん、スケバンの子たちは競うように長いスカートを穿いてましたけどね。

学年一の不良の子はスカートの裾を地面に引きずって歩いてました(笑)」

別の50代女性もまた当時をなつかしむ。

「学校に行くときはスカートのウェストを折り返して、ギリギリ先生の検査にひっかからない丈にして、登下校や遊びに行くときはロング丈に戻したり。

うちの学校では長すぎると先生にハサミでスカートの裾を切られたんで。それもどうせ切るならまっすぐきれいに切ってくれればいいのに、適当にガタガタに切るから、後始末が大変で。

あと、制服の見えないところを凝るのも流行ってましたね。男子なら学ランの裏地。うちの彼氏は登り龍の刺繍をいれてました。

それが最高にカッコいいと思ってたから、当時の自分、どんだけ趣味が悪いのか……(笑)」

変形学生服のルーツはバンカラ

当時の変形制服カルチャーについて、ヤンキー評論家の岩橋健一郎氏(57)が解説する。

「変形学生服のルーツは1910年代に現れた“バンカラ”です。ハイカラに傾倒する世の中のアンチテーゼとして生まれた彼らは着古して、すり切れた粗末な学生服などを着て、“表面の姿かたちに惑わされず真理を追究すること”を標榜していました。

その後、70年代に荒れる学校が社会問題化して、バンカラに類似した服装のツッパリやヤンキーと呼ばれる不良少年が登場。

ただ、彼らはより派手な外見を求めたので、バンカラのような内面を重視する思想は失われていましたね」

変形制服の最盛期を迎えたのが80年代だが、そのブームのきっかけは何だったのか。

「漫画『ビー・バップ・ハイスクール』(1983~2003年連載)の影響は大きかったと思います。作中にもボンタン狩りのシーンが描かれていて、それがリアルにも波及したのでしょう。

ただ、私が少年時代を過ごした横浜市鶴見区ではボンタン狩りに遭遇したことはありませんよ。

“学ラン狩り”ならありましたが。ちなみに当初は長ランとドカンが主流でしたが、機動力が低くケンカに向いていないため、機動性を重視した短ランやボンタンが生まれました」

とにかく制服のバリエーションが豊富だった80年代。学生服に関しては、間違いなく今より多様性があったのかも。

取材・文/河合桃子
集英社オンライン編集部ニュース班

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