1. トップ
  2. 新着ニュース
  3. 経済
  4. ビジネス

「オリオンビールだけが成功するのではなく、地元企業含めて沖縄全体が潤えば…」凄腕社長が多角化戦略の目標に掲げる「沖縄製造業として初の上場」

集英社オンライン / 2024年4月28日 11時0分

沖縄が誇るビールメーカーといえば「オリオンビール」である。地域に根差し、土着のブランドとして65年以上愛されてきた“県民ビール”だ。最近では、ビールのほかにもワインの開発やホテルの運営など、事業の多角化を積極的に行なっている。ビール以外の事業にも取り組む背景やIPOを見据えた展望について、オリオンビール株式会社 代表取締役社長 兼 執行役員社長CEOの村野一氏に話を聞いた。

【画像】2024年4月リニューアルされた「オリオンビール」が手がける注目のホテル2棟

社員の自信を取り戻すために課した「目標必達」

現在、オリオンビールの陣頭指揮をとる村野氏は、さまざまな企業を渡り歩いてきた“プロ経営者”として知られている。



ソニーの海外拠点では社長を務めたほか、出版社大手のデアゴスティーニ・ジャパンとカミソリメーカーのシック・ジャパンでも日本法人の社長として辣腕を振るってきた。そんななか、コロナ禍で厳しい状況におかれていたオリオンビールの業績回復に向けて村野氏に白羽の矢が立った。

奇しくも、就任当初はコロナ禍の真っ只中。そこから、いかにしてオリオンビールの立て直しを図ったのか。

「最初の3か月はどこをテコ入れすべきか考えた」と話す村野氏は、“目標必達”がオリオンビール浮上の最重要事項だと見定めたという。

「簡単に言うと、目標を達成して自信を取り戻す。個々の営業マンが見積もった予算を積み上げ、会社全体の予算を決定するという方針に変えました。やはり、人は自信を持つと物事がスムーズに回るようになるんですよ。
営業マン一人ひとりが予算を決め、目標必達のために全力投球する。その総和で積み上げた予算を達成することで、会社に勢いをつけようと考えたのです」(村野氏、以下同)

今までも、沖縄や株主の期待に応えようと頑張っていたものの、成果には結びつかずに予算未達が続いていた。

そうした状況を打破すべく、「必ず目標必達」を営業マンにコミットさせ、社内に新たなカルチャーの風を吹かせたのだ。営業現場の改革を行なったことで、村野氏が社長就任した初年度から全社の予算を達成。「やればできる」という自信が社内に根付いてきたという。

「コロナ禍と重なったこともあり、当時は『一体、私たちはどうなるんでしょうか』という一抹の不安を抱える社員が多かった。それでも、数字を作ることで道を拓いていける、状況を変えられると考えていました。
『社員が自信を持ったら、オリオンビールはさらに上に行ける』。そう確信していたこともあり、優先順位を挙げて営業現場の改革から着手したのです」(村野氏)

もうひとつはマインド面の働きかけだ。ビール会社特有の習慣として、お酒の液量で評価する、というのがあった。

 ビール会社特有の習慣打破のために追求した「バリュー」

人口減少が進む地域では、相対的に1人当たりのビールの飲酒量は減っていいくため、従前の評価基準ではマッチしないのだ。

「私は『ボリューム』ではなく、『バリュー』を追求しようとよく話しています。例えば、たくさん量を売ろうと思えば、安くしたほうがいいわけです。一方で高いものを売ろうと思えば、そこには創意工夫が必要になります。プライシングや売り方、マーケティングなどを試行錯誤し、数字を作りにいかなければなりません。

このように、社員の目線を利益志向に変えていったのも、オリオンビールの売り上げ向上に寄与した要因になっていますね」

しかし、社員の士気を高め、目標必達させるためには、新製品や新サービスを投入するだけでなく、成功させなければならない。「とにかく成功にこだわった」そう語る村野氏は、時間と労力をかけてどんなことに取り組んできたのだろうか。

「2022年10月に発売した『オリオン ザ・プレミアム』は社員がゼロから作り上げたプレミアムビールで、理想の酵母と出会うまでに沖縄本島の花や草木から3000以上の酵母を採集しました。『世界に誇れる沖縄を、もうひとつつくろう』という思いから、沖縄出身の音楽アーティスト・Awichさんや沖縄県民の方にCMを出演してもらい、沖縄の魅力を詰め込んだ形でプロモーションしたのです。その結果、オリオンビール史上最高の出荷数を記録し、成功を収めることができました」

製品が売れると、会社の流れが変わってくる。社員の努力が実れば、それが自信につながる。まさに好循環を作れたのが、オリオンビールの増収増益につながったのではないだろうか。

 “量”から“質”の転換に伴って進める多角化

その一方で、オリオンビールは「オリオンホテル 那覇」と「オリオンホテル モトブ リゾート&スパ」という2つのホテルを所有している。

前者はファミリー用の客室やビアダイニングを2023年11月に新設。 

後者も2024年4月に、全23室あるスイートルームの全面改装や、オーシャンウィング棟の最上階にある客室をプレミアムフロアへリニューアルするなど、積極的な投資を行なっている。

オリオンビールを多角化させる狙いについて、村野氏は「オリオンビールは沖縄と共に成長することを鮮明に決めたから」だと理由を述べる。

「沖縄と共に成長する2つのドライバーとして『酒類清涼飲料事業』と『観光ホテル事業』を定め、これらの事業領域には今後も投資を強化していく予定です。これまでのビールメーカーから総合酒類化へ舵を切り、チューハイやワインなど、多様な製品を販売していくのに加え、『沖縄に来て、楽しい時間を過ごし、沖縄を好きになってもらう』には、観光不動産事業も欠かせない要素だと考えています」

村野氏曰く、沖縄の観光は“量”から“質”への転換が求められているという。

2025年にはオリオンホテル モトブ リゾート&スパに近接する沖縄県北部の今帰仁村に大型テーマパーク「JUNGLIA(ジャングリア)」の開業が控える。

決してインフラが潤沢ではない沖縄が、ある種オーバーツーリズム状態になった際に、サービスの質が肝になってくるというのだ。

「ビールと関係ないワイン事業を始めたのは、量ではなく質にこだわる方が多い傾向にあり、そういった方々の支持を得ることが重要と考えるからです。そこで、糸満市観光農園のワイナリーを立ち上げてワイン開発に乗り出し、さらにはオリオンホテル那覇の1階に世界各国のワインを取り扱う『ENOTECA(エノテカ)』を誘致しました。エノテカは沖縄初出店で、県内随一を誇るワインのラインナップが揃っています」
 

酒類清涼飲料事業と観光ホテル事業の2つがシナジーを生み出すことで、「沖縄の楽しかった思い出」や「沖縄へ行きたいと高揚する気持ち」が想起され、それがオリオンビールの成長にもつながるし、ひいては沖縄の成長にも貢献する。

そのようなメカニズムを作っていきたいと村野氏は言う。目指すのは、沖縄の製造業では初の上場だ。

「オリオンビールだけが抜け駆けして成功しても意味はありません。沖縄全体としての成長に貢献していきたいですし、しっかり上場を果たすことで、弊社の取引先である沖縄の地元企業の信用にもつながればと思っています。オリオンビールが県内外や海外のお客さまから好かれ、沖縄も好きになってもらうことで、それが巡りめぐって沖縄の企業も潤うわけです。

南天に輝く星の『オリオン』を輝かせるように、沖縄の発展や知名度の向上を目標に掲げる『Make Okinawa Famous』を体現するために、これからも尽力していきたい」

取材・文・撮影/古田島大介

この記事に関連するニュース

トピックスRSS

ランキング

記事ミッション中・・・

10秒滞在

記事にリアクションする

記事ミッション中・・・

10秒滞在

記事にリアクションする

デイリー: 参加する
ウィークリー: 参加する
マンスリー: 参加する
10秒滞在

記事にリアクションする

次の記事を探す

エラーが発生しました

ページを再読み込みして
ください