大谷翔平の二刀流、青学陸上部の駅伝はバブル世代が育てた!? いまでも貯蓄より消費が正義…日本が世界一金持ちだった時代を生きてきたバブル世代のトリセツ
集英社オンライン / 2024年8月29日 8時0分
〈ザ・ビートルズ、マクドナルドに合同ハイキング…戦後の第一走者として時代を駆け抜けた団塊の世代の取扱説明書〉から続く
日本に推計2222万人以上いるとされる、「健康」で、「お金に余裕」があり、「人間関係も良好」な高齢者たち。パソコンやスマートフォンも使いこなす彼らに愛された企業が、この先大成功を収めることは間違いない。
あと10年以内に退職し、退職金もバッチリもらえるであろうバブル世代のトリセツを、『「シニア」でくくるな! “壁”は年齢ではなくデジタル』より一部抜粋・再構成して解説する。
バブル世代54歳~58歳(2024年時点)誕生年1966~1970(昭和41年~昭和45年)
【時代背景・特徴】
10代から20代にかけてバブル時代の全盛期を生き、同時期に就職したのがこの世代だ。格差が少なく、国民全員が「自分は中流」という意識が強かったため、〝一億総中流〞と言われた。就職活動は超売り手市場で、苦労せずとも正社員になれた。
貯蓄より消費を重視する世代で、今も年代別貯蓄額を見るとバブル世代は低い傾向で、いまだに消費意欲旺盛な世代であることがうかがえる。
最も注目すべきなのが、バブル世代が持つ〝万能感〞だ。「自分は何でもできる」と思い、風呂敷を広げて手を出す傾向がある。何でも手に入る良い時代を生きたからこそ、あれもやろう、これもやろうと挑む意欲が強い。
その感覚は今でもバブル世代の多くが共通して持っている。青山学院大学陸上競技部監督の原晋は、1967年生まれのバブル世代であり、その典型だ。本人は高校や実業団で駅伝を経験していたが、箱根駅伝に出走したことはない。
OBでもなかったのにもかかわらず、2004年に青山学院大学陸上競技部監督に就任。当時、青学陸上部は箱根駅伝に出場していない弱小だった。それでも「箱根駅伝で優勝を目指す」と宣言した。
その根拠を聞くと、「他の大学は俺たちが若い頃と同じ練習をしている。青学で現代の最新トレーニングを取り入れたら絶対勝てる」と思ったという。これこそまさに万能感だろう。就任から約10年後、本当に青学を総合優勝に導いた。
バブル世代の万能感とは
バブル世代と一つ上の新人類世代は、明確に切り離せない部分もある。その意味で、一つ上の新人類世代ではあるものの、バブル世代特有の万能感を持っているのが、北海道日本ハムファイターズ元監督で、大リーグ、ロサンゼルス・ドジャースの大谷翔平を育てた1961年生まれの栗山英樹だ。
大谷に二刀流をやらせたのは、実は万能感がベースにある。
上の世代の名監督である野村克也氏(35年生まれ)や星野仙一氏(47年生まれ)は、「お前はピッチャー、お前はバッター」と、はっきりと役割を分けていた。ところが、栗山元監督は「翔平、2つやっちゃおうよ、何なら外野もやっちゃおうよ」と言い出し、本当にやらせてしまった。
後々話を聞いてみると、「本当に外野をやらせようと思ったけど、翔平がけがしちゃってさ。それがなければ三刀流までやらせることを考えていた」というから驚きだ。
筆者は原監督と交流があり、栗山元監督とは対談の仕事でご一緒したことがあるが、2人とも考え方や話す雰囲気が似ていて、「同じ人と話している」と錯覚するほどだ。
だが、一方で問題行動を起こすバブル世代もいる。「夜の校舎窓ガラス壊してまわった」と先生や大人への反発を歌った尾崎豊の歌『卒業』を、若い頃聴いて育った世代だ。
親になってもその癖が抜けず、教育に納得がいかないと学校に乗り込んでくる、いわゆる「モンスターペアレント」(モンペ)になるケースが非常に目立った。この世代の後、モンペ問題は沈静化する傾向があったため、世代であるが故の現象である可能性が高い。
アラフォーに美魔女ブーム
【消費・文化】
バブル世代は、消費も文化も女性がけん引した。大型ディスコのジュリアナ東京の「お立ち台」はその最たるものだ。
「ワンレン(ワンレングス、すべての髪の長さを同じに見えるようにした髪形)」「ボディコン(ボディーコンシャス、体のラインを強調する服装)」のファッションで、羽根つきのセンス(通称ジュリ扇)を振り回しながら、台の上で踊る女性たちは、バブル期最後の名物となった。
バブル世代の女性は結婚相手を選ぶ際、「3高(高身長、高学歴、高収入)」を条件とし、若い男性は女性の〝足〞のように車で送り迎えをする「アッシー」、ご飯(メシ)をおごる「メッシー」、ブランド品をプレゼントする「みつぐくん」などに分類され、ひたすら女性の気を引こうと尽くした。
また、テレビドラマでは、フジテレビの月曜午後9時から放送される「月9」が看板番組となり、出演した「W(ダブル)浅野」(浅野温子と浅野ゆう子)が人気を博した。
金余り日本の中で、日産が全グレード3ナンバー仕様の高級セダン「シーマ」を1988年に発売すると、富裕層以外にも飛ぶように売れたのもちょうどこの頃だ。
チーズケーキやティラミスなど海外のスイーツも流行した。金持ち日本人の消費を目当てに、世界が日本に注目し、グルメが続々と上陸していた時代だった。
この世代の強い女性たちは、その後も世の中のトレンドセッターとなり続けた。普通は40代になるとメークが薄くなり、専業主婦として静かに生活を送る人が多かったが、バブル世代は違う。
この世代から「アラフォー(アラウンド・フォーティー、40歳前後)」とう言葉が飛び出し、活発に消費をして世間をにぎわせた。そして、「美魔女ブーム」を巻き起こし、存在感を見せつけている。バブル世代で元フジテレビアナウンサーの近藤サトも白髪を染めずグレーヘアを貫いてテレビに出演し、話題をさらっている。
バブル世代の女性は、高齢者になったとしても、そのパワーを失うことなく、シニアの新しいトレンドを次々と発信しそうだ。ずっと若々しく〝女子〞でいたい気持ちが強く、アンチエイジング関連の消費や、仲間意識が強いため、「女子会」の需要も期待できる。
バブル世代のキーワード
一億総中流、超売り手市場、貯蓄より消費、万能感、モンスターペアレント、ジュリアナ東京、3高、アッシー・メッシー・みつぐくん、月9、W浅野、シーマ、アラフォー、美魔女
写真/shutterstock
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