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他者からの承認を求めることは人生にとって薬にも毒にもなる…脳科学者が「マウンティングばかりのグループからは抜けなさい」と勧める理由

集英社オンライン / 2024年8月21日 8時0分

SNSでつながっている仲間から「いいね」をもらうことは嬉しいもの。それをうまく励みにすることはやる気につながるが、一方でリスクや注意点もある。

【写真】脳神経外科医の菅原道仁氏

脳神経外科医の菅原道仁さんが、人をやる気にさせる「ドーパミン」の力を活用して脳をその気にさせる方法を綴った『すぐやる脳』(サンマーク出版)から一部抜粋、再構成してお届けする。

アドラーが「不自由」と説く「承認欲求」とは?

他人に褒められたり感謝されたり、「誰かの役に立った」と実感できたとき。そんな瞬間も、ドーパミンは分泌されます。

心理学的に言うと、「承認欲求が満たされた」と表現します。「承認欲求」(esteem needs)とは、「他人から認められたい、尊敬されたい」と願う気持ちのことです。

アメリカの心理学者、アブラハム・マズロー氏が提唱した「マズローの欲求5段階説」(Maslow's hierarchy of needs)では、5つの欲求(生理的欲求、安全欲求、社会的欲求、承認欲求、自己実現欲求)のうち「4番目の欲求」に位置付けられています。

衣食足りて、高度に文明化された現代では、物質的な欲望よりもむしろ「社会的に評価されたい、人に認められたい」という承認欲求のほうが強い、と言えるかもしれません。

この承認欲求が「満たされた」と感じた瞬間も、もちろんドーパミンは出ます。人に認められるというのは、脳にとっては大きな報酬なのです。

「他者の人生を生きることになる」

しかし、そこにはある種のリスクもひそんでいます。

「承認してくれる」のが他人であるということは、常に他人の視線や評価を気にかけることになります。

身近な例で言うと「『いいね』の数を、常に確認せずにはいられない」「『いいね』の数に一喜一憂する」ということになりかねません。それはけっして「心が自由な状態」とは言えないでしょう。

そのあたりの問題については、300万部を突破したベストセラー『嫌われる勇気──自己啓発の源流「アドラー」の教え』(岸見一郎・古賀史健著/ダイヤモンド社)でくわしく説かれています。

本書は有名なアドラー心理学をわかりやすく解説したものですが、承認欲求については「不自由」というとらえ方をしています。他者からの承認を求めてばかりいると、最終的には「他者の人生を生きることになる」というのがその理由です。

同書には、次のような記述もあります。

「自らの生について、あなたにできるのは『自分の信じる最善の道を選ぶこと』、それだけです。一方で、その選択について他者がどのような評価を下すのか。これは他者の課題であって、あなたにはどうにもできない話です」

ただし、科学的に見ても「他者に承認を求める気持ち」は健全なものです。それを完全に抑え込んだり無視したりする必要はありません。

「褒められること」は脳の栄養、などと形容する専門家もいるくらいです。

適度な〝賞賛〟を報酬とするのは正解

褒められた人は、脳内のA10神経が刺激されてドーパミンが放出され、強い幸福感に包まれるからです。

アメリカの教育心理学者、ロバート・ローゼンソール氏が行った実験では、「教師に褒められて期待された生徒」と、「そうでない生徒」では成績の伸びに明らかな違いが見られるという結果が出ています。

この実験は1960年代に行われたものですが、その後「再現性がない」などと反論する学者が現れるようになりました。

しかし、このローゼンソール氏の発見した「褒めの効用」については、「ピグマリオン効果」(pygmalion effect)という名称がつけられ、現在では非常にポピュラーな心理学用語のひとつとなっています。

ピグマリオン効果とは、ひとことで言うと、「他人から期待されることによって学習・作業などの成果が上がる現象」のことです。

褒められるとやる気になって、アウトプットの結果がよくなるというサイクルは実証されているのです。現代では、ヴァーチャルなSNSの世界においての「いいね」の数や、肯定的なコメントも「褒める行為」にほぼ相当すると言えるでしょう。ですから、適度な〝賞賛〟を報酬としながら、努力を積み重ねるという姿勢は正解です。

マウンティングばかりのグループからは抜けなさい

「承認欲求には、2種類ある」という説もご紹介しておきましょう。

ひとつは「他人から認められたい」という「他者承認」。

そして、もうひとつは自分自身が自分を認める「自己承認」です。

「他者承認」の方向だけに偏らず、「自分が今の自分に満足している」という「自己承認」の評価軸もきっちりともてばよいのです。

もちろん、「自己承認」に踊らされすぎることもありません。

ドーパミンを出すための味方として、他人からも、自分自身からも適度に「承認を得る」という姿勢が重要です。

注意点も申し上げておきましょう。

「承認欲求がうまく得られない集団」に所属すると、ストレスがたまることがあります。多くの人が「望まないのに帰属せざるをえない集団」にいるのも事実です。

互いに承認欲求を満たし合えている関係であれば、問題はありません。

けれども、そこに君臨する〝ボス〟的な存在に、過剰な気遣いが必要だったり、理不尽で不条理なヒエラルキーが存在していたり、ストレスフルなマウンティングや、格付け合戦が日常的に繰り広げられていたり……。

そのような環境下で承認欲求を満たす、というのはどんな人にとっても至難の業です。反対に「他人の承認欲求を満たす役割」まで、強制的に背負わされかねません。

そのような集団には所属しない、もしくは自分から遠ざかることが賢明です。

どうしても脱退できないのであれば、心理的な距離を置くべきでしょう。

そうしないと心が萎縮して、やる気を出すどころの話ではなくなってしまいます。

文/菅原道仁

すぐやる脳

菅原道仁
すぐやる脳
2024/8/8
1,540円(税込)
208ページ
ISBN: 978-4763141675

今日も、はじめられなかった人へ
脳をその気にさせる方法、教えます!

【こんな人にオススメ】
・あれこれ考えてなかなかはじめない
・何をやっても長続きしない
・やってみたい事はいろいろある
・成長意欲はある。でも、まだ本気出してない

やせたい、片付けたい、
英語が話せるようになりたい、
スキルアップしたい。

すぐに行動すれば効果が
ありそうなことはわかってるんだけど、
なかなかはじめられない……。

10人いたら9人くらいは
こうやって「先延ばし」にしちゃうし、
強靭なアスリートのような
不屈の闘志を持った1人だけが
「今日から」はじめる。

じゃあ、これは「意志力」の差か
といえばそうではなくて、
人間の脳ってもともとエネルギーを無駄に
使わないようにプログラミングされてるんです。

亀は海の中で手足を引っ込めてスーッと泳ぎます。
これはエネルギーを使わず、波に乗って進むため。
陸に上がったらめちゃくちゃゆっくり歩く。
これもエネルギーを使わないため。

人間も同じで「怠惰」なのではなくて、
エネルギーを消費しないために
「すぐやらない」「動かない」「考えない」
ことで体力を温存しているんです。

脳は取り込んだ酸素のうち20%を使う、
人間にとって最大のエネルギー消費器官なので
休もうとするのは当然なんですね。

じゃあ、どうすれば「すぐやる」かというと
あるホルモンをドバッと分泌させることです。
それが「ドーパミン」です。

仕事でも、家事でも、勉強でも、
「やりだすまで」がなかなか長くないですか?
で、やりだしたらいつの間にか
エンジンがかかってきて
一気にやっちゃうことがあります。

これこそドーパミンの力です。

ドーパミンは「やりだしてから」出る。
これが出るから、さらにやる気になる。
これを「作業興奮」と言ったりします。

だから、とりあえず、あれこれ考えずやりだすと、
「ドーパミン君の力で勝手に体が動きはじめますよ」

というのがこの本です。

それを現役の脳神経外科医が説明してくれるので
信頼性が高く、かつ、簡単な文章なので
短い時間で読めてしまいます。

やったほうがいいのはわかっちゃいるけど
腰が重くてなかなかはじめられない、
という人はぜひ読んでみてください。

【目次より】
序章 脳がそれを拒否する理由
第1章 ドーパミンこそが行動を決める!
第2章 すぐやる
第3章 こまめにやる、早めにやる
第4章 続ける
第5章 決める、選ぶ
第6章 挑戦する
第7章 怒らない

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